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第280掌 王子への頼み事 その3



「GAAAAAAAAAAAAAA‼」


 複数の火竜は少し離れた鉄柵付きのデカい入り口から今か今かと出番を待っている。ガンガンと鉄柵に頭突きをかましている。


「ハハハッ!これにはいくら強かろうと無意味だ!丸焼きにされて苦しみながら死ぬがいい!」


 そんなことを宣う王子。流石に樹里、ミッキー先生、アメーシャの三人以外の二人もマズいと思っているのか、額に汗を掻いている。そう言えば、火竜と戦ったのはフェルゲンの時だっけ。あの時はリリアス達のみでカリーナさんはまだ仲間になっていなかったからこの状況に焦ってしまうのも仕方ないか。


 火竜を相手にするのは強い人間を相手にするときとは勝手が違う。そもそも竜種は硬い鱗に覆われているので滅多なことでは傷をつけられないからだ。だから、少なくとも竜種と少数で戦う場合はS級冒険者の実力が必要になってくる。


 俺がフェルゲンの依頼で受けたのは一応Aランクの依頼。まあ、これは依頼主が報酬とかをケチったのとかが原因だけどな。


「これは仕方ない・・・か。流石に今のカリーナさんには荷が重い。ここは俺がやるよ」


「タカキさん⁉流石にあなたでもこの数の竜を一気に相手取るのは危険です!」


 カリーナさんが必死になって訴えかける。


「そうです、ししょー!死んじゃいますよ!」


「やめて!私は生徒に死んでほしくないんです!」


「日本に帰れなくなっちゃうわよ!」


 サーラ姫、ミッキー先生、樹里が口々にカリーナさんに続いて訴えかけてくる。


「・・・ここは私が何とかするわ」


「ん?アメーシャ?どうしたんだ?」


「私が名乗り出ればここは何とかなるわ。だから一旦下がりなさい」


 俺にそう迫力ある表情で命令してくるアメーシャ。


「何か俺達にまだ話していないことがあるのか?」


「・・・ええ。でも、あなたも道連れになっちゃうかもね。あなたが身に着けているアレ(・・)のことがあるから」


「おいおい。それはちょっと勘弁してもらいたいな」


「覚悟を決めなさい。それで命が助かるのだから」


 すでにアメーシャの覚悟は決まっているようだ。俺のいる場所よりも先に一歩踏み出す。しかし、それは少し待ってもらいたい。


「ちょっと待てって。まだ俺は無理だなんて言っていないぞ?」


 歩いて進もうとするアメーシャの手を取って止める。


「そんなこと言ったって、この状況は流石に無理でしょ!さっきの戦いで凄い強いってことは分かったけど、それとは別次元の相手なのよ⁉」


「ああ。それは分かる。でも、だからって俺もあれで全力だっていうわけじゃないぞ?」


「「「「「え?」」」」」


 あーあ。ここにリリアス達の誰かひとりでもいてくれたら説明とか全部任せるのに。あの三人だけしかまだ俺の全力、知らないんだよな。やれやれ。仕方ない。


「とにかく。ここは俺を信じて全員下がってくれ。もしも危ないと感じたらアメーシャがストップを掛ければいいから」


「・・・・・・。・・・分かったわ。そこまで自信満々に言うなら任せる。でも、少しでも危ないと思ったら止めるわよ」


「ああ」


 そしてカリーナさん達は戦闘の影響が出ない後方まで下がった。


 さて。お墨付きは貰った。始めるとしようか。


「律儀に待ってくれてありがとう」


 俺は俺達が話している間、待ってくれた王子にお礼を言う。


「ふん。どんな命乞いをするのか楽しみに待っていただけだ。それで?どうする?」


「勿論、戦うさ。どうぞ、あそこで窮屈そうにしている火竜達を解き放ってあげてください」


「強気なことで。それではその判断が間違っていたと悔やみながら死ぬがいい!」


 王子は右手を挙げ、そして下げる。それだけで鉄柵は外された。


 そして火竜は俺に向かって一斉に襲い掛かってくる。


 俺は時空魔法による防御壁を俺の周囲に展開する。文字通り、空間を捻じ曲げて展開しているので凄まじい強度を誇っている。


 俺のこの結界を精一杯の抵抗と思っているのか、未だに余裕そうな王子。


「しかし、これって御し切れているのか?統率も何もあったもんじゃないけど」


 連携のれの字すらないくらいぐちゃぐちゃに襲い掛かってくる火竜達。


「取れているわけがなかろう。そもそも竜種をコントロールできるわけがない」


「なら、どうしてお前の方には襲い掛かっていかないんだ?」


「それはこれを持っているからだ」


 そう言って見せられたのは王子が付けているネックレス。


「これは火竜の子どもを素材にして作ったネックレスでな。これを付けていると火竜に襲われなくなるんだ」


「・・・その素材になった火竜の子どもっていうのは」


「勿論、殺してある。素材だけ剝いだら憎まれていつか復讐でもされそうだからな」


 ふむ。中々のゲス野郎だ。これなら遠慮することもないな。


「『我が敵よ、ひれ伏せ。我の前には何人も立つこと、許されん―――風王の圧制(エア・グラビティ)』」


 俺は風雷魔法を発動。その魔法の効果により、俺の周りにいる火竜とその後方で余裕ぶっていた王子はその場にひれ伏した。


 ちなみに、この魔法の下位互換は風魔法の風の重圧(エア・プレッシャー)。効果の違いは拘束で掛かる相手への負荷の量だ。他にも雷が微妙に混じっているとかがあるけど、そこは微々たる違いだから置いておく。


「さて。ゲスな奴には遠慮しないぞ。覚悟しろよ?」


 四つん這いになりながら俺の魔法を受けて苦しんでいる王子に向けてそう言い放った。




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