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第278掌 王子への頼み事 その1



 日付は変わり、次の日。


「さて。いつでも来ていいと言っていたことだし、早速お邪魔するとしますか」


「特に準備とかしなくてもいいんですか?」


 ミッキー先生が普段のままの姿の俺を見て心配そうにそう聞いてくる。


「ああ、大丈夫。収納袋に全部入れているから。今回も変装しないで訪ねるつもりだから、流石に武器を持ったまま移動するのは目立つし。何より警戒されるからね」


「宿屋はどうするの?エルフの姿で泊まったけど」


「そこは普通に宿屋を出るまではエルフのままで行くよ。後で物陰に隠れて変装を解く」


 ミッキー先生に続いて質問してきた樹里に答える。


「他に宿屋を出る前に質問しておきたいことはある?」


 俺は全員に目を配って聞く。


「あの、ししょー」


 手を挙げて俺に呼び掛けてくるサーラ姫。


「ん?なんだ?」


「変装を解くって言ってましたけど、私もですか?」


「ああ。サーラ姫の話をするなら本人がいてくれた方がいいだろう?」


「それは確かに」


「大丈夫だって。基本的には俺が話すし、何かしようとしたらちゃんと守るから」


「ししょーがそこまで言ってくれるなら、弟子としては信じるしかありませんね!」


 どうでもいいけど、弟子はきちんと発音するんだね・・・。


「他には?」


 俺の問いかけに誰も応えない。


「なし・・・と。それじゃ出発するぞ」


 そして俺達は宿屋を出て、物陰で変装を解き、本来の姿で城へと向かった。




              ・・・




 城へと着いた俺達は現在、だだっ広い訓練場の隅で待たされていた。


「到着して真っ先にこんな場所に連れて来られるとは・・・。想像以上に駆け引きとか出来ないタイプだな」


 最初っからこんな所に連れて来られたら、「これから戦いますよ」って言っているようなものだ。最初は応接室とかに通しておくものだろ。あの王子に会った時の印象としては普通って感じだったけど、これはお馬鹿だわ。脳筋ならまだ強いっていう長所があっただろうけど、あの王子からは強さとかも感じなかった。どう考えてもお馬鹿である。


「待たせたようだな」


 そんなことを考えていると、ゾロゾロと大勢を引き連れて王子がやって来た。後ろにはパッと見強そうな人達がたくさんいる。これだけで何がしたいのか大体分かるよね。


「早速で悪いが、要件を聞こうか。これでも忙しいのでね。お前達に時間を取られるわけにはいかないんだ」


 最初にサーラ姫を見て驚くかと思っていたのだが、どうやら死角なのか、見えていないようだ。っていうか、門番の人も王子に伝えていなかったんだ・・・。ちょどいい。サーラ姫は俺のスキルで隠蔽しておこう。それでどうしても言うことを聞かないって時に思いっきり拒絶してもらおう。自分でも中々あくどいことを考えるとは思うけど、その段階まで行ったらすでにこちらでは力で脅す以外、完全拒否しか方法がないのもどうしようもないよね。


「こちらの要件は・・・うーん。二つかな」


 一瞬迷ったけど、霊薬のことも勘定に入れておくか。


「一つはヤームロ帝国の姫君であるサーラ姫とカレン姫にちょっかいを掛けるのを止めること」


「・・・何のことだ?」


「刺客の方々から聞いているのでそういうお惚けは必要ありません。それともう一つは霊薬があるならそれを貰いたい。ないなら作り方、もしくは持っている者を紹介してもらいたい」


「霊薬・・・。中々に凄いことを言う。霊薬はこの王城にも数本しかないものだ。そんな大切なものを譲れと言うのか?」


「いや無理なら他に持っている人か、作っている人を紹介してくれって言ったじゃん」


「どちらにしろ、無理だ。霊薬は我が国では準国宝クラスのもの。のこのことやって来た冒険者風情に渡すわけにはいかない」


「あれ?俺達が冒険者だって言ったっけ?」


「昨日の内に調べさせた。貴様は「黒の英雄」という二つ名を持つ者らしいな」


 おおう。なんだが凄い懐かしい気分。「狂った死神」の方はアリエス教国で散々耳にしてきたけど、こっちは最近全然呼ばれないから今まですっかり忘れていたよ。まあ、冒険者としての活動も最近おざなりだからな。今回のことが全部終わったら久しぶりに依頼をこなすのもありかもしれない。


「昨日一日でよく調べたな」


「我が国の諜報部隊を舐めるな」


「まあいいや。俺は確かに「黒の英雄」とか呼ばれているけど?それがどうしたんだ?」


「いや、こういう自分に自信を持っている者にはどんな者にも限界と言うものがあるということを教えてやらねばならんと思ってな」


 王子が言うや否や、後ろにいた屈強そうな男達が前に出て来た。


「こいつらはこの国でも名を馳せている者ばかりだ。冒険者、騎士など職種は問わなかった。強ければそれでいい。これからお前をボコボコにすることさえできればな。それに気をつけた方がいいぞ。この中には二つ名持ちも何人かいるからな」


 などと宣う王子。


 ふむ。これは俺の頼み事二つともダメってことか。それにこのまま帰す気もないらしい。殺気がビシビシ俺に飛んで来ている。


「仕方ない。想定通り、こうなった以上は俺もこちらの考えた通りに行動させてもらうぞ」


「やれ!」


 俺がそう言うや否や、王子はそう指示を出したのだった。




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