第29掌 突入前
最初はデリルさん、ここまで面倒な人にするつもりなかったのに・・・。
いい感じに話が出来るからついついデリルさんに悪者やってもらってしまった。
ありがとう。デリルさん。
そんなわけで今回の話です。どうぞ!
リリアスに選択を突き付けられたシャーリ。
「わ、私は・・・」
リリアスにあれだけ言われても未だに悩んでいるシャーリ。
「そこまで悩むならもっと簡単に言うわ」
「・・・」
「あなたはギルドの受付嬢なの?それとも私やタカキさんを嵌めようとする犯罪者の一味なの?」
そのリリアスのはっきりとした言葉に何かに気づいた様子のシャーリ。
「わ、私はギルドの受付嬢です!犯罪者なんかじゃありません!」
決意した表情のシャーリ。そしてそのままリリアスの縛られている縄を解こうと結び目を探す。
「あ、あれ?・・・ない」
しかし、結び目がなくて焦るシャーリ。
「これは魔法で縛られているの。そんなのはないわ。掛けた魔法使いに解いてもらうか、掛けられた魔法よりも強い力で強引に解くしかないわ」
「そんな・・・。それじゃあ私にはどうしようもないですよ」
「縛られている私にも当然無理よ。でも、タカキさんならどうにか出来るはず」
「そ、そんなにすごいんですか?」
「ええ。なんせこの町を一人で救ったくらいなんだから」
まるで自分のことのように嬉しそうに話すリリアス。シャーリは「ふぇ~」と言葉を漏らしている。見ていたわけではないのだからこの反応が当たり前なのかもしれない。
「でも、今の私たちにはこの縄はどうにも出来ないからどうにか脱出しないと」
「そうですね。ここから脱出するのくらいなら私たちだけでも出来ますから」
現在、リリアスは椅子に縄で縛られている。だが、椅子さえどうにか出来れば戦えはしないが、移動自体は簡単なのだ。
「それじゃあ、早速いきますよ!」
シャーリは部屋に転がっていた小型ハンマーで椅子をガンガン叩き出した。
「ちょ、ちょっと!外に聞こえてしまうわ!もうちょっと静かに出来ない⁉」
「す、すみません!でも、壊すとなったらこのくらいはしないと無理ですよ」
「でも、このままじゃあまた様子を見にここに誰かが来るわ」
「大丈夫です。ここはギルドでも一番奥にある物置き部屋ですから。滅多にここに人は来ません」
「えっ?そうなの?じゃ、じゃあ、ギルド職員が全員デリルさんの味方ってわけではないのね」
「そうです!でも、今日ギルドにいる職員の人はもしかしたらデリルさんの味方かもしれないです」
「そう」
シャーリのその情報にギルド全体が敵ではないことに安心するリリアス。しかし、今ギルド内にいる職員が敵であるかもしれないことに再び気を引き締める。
「そう言えば、私を捕まえた人は冒険者っぽかったんだけど、誰か分かる?」
ドンドンというハンマーを叩く音をBGMにリリアスがシャーリに聞く。
「それはおそらくデリルさんの子飼いの冒険者だと思います。階級もC級ですし」
「その高さの階級の冒険者がどうして緊急依頼を受注していなかったの?」
「どうやらデリルさんが別の依頼を出していたらしく、留守だったそうです」
おそらく自分の駒が減るかもしれないとあって虚偽の依頼でも出したのだろう。そう考えたリリアスはより一層デリルを軽蔑した。
「まったく、悪い意味で二面性のある人って嫌ね」
うんざり顔のリリアス。その横で必死に椅子を壊すシャーリ。
バキッ!
「出来ました!」
椅子がついに壊れる。リリアスは衝撃で椅子から落ちて転んでしまう。
「イタッ」
「わわわっ!ごめんなさい!」
「い、いえ、大丈夫」
リリアスは自分のためにしてくれたことに怒るのも筋違いであると一瞬イラッとした気持ちを静める。未だにリリアスはタカキと自分、そしてシャーリに対して行き場のない気持ちを持っているのだ。いつもより沸点が低くなってしまっていて気持ちをコントロールできない。
「行きましょう」
リリアスは起き上がってシャーリに言う。
「はい!」
二人は部屋から脱出した。
・・・
俺達はギルドに向かって走っていた。
「しかし、ダンガ。お前って戦えるのか?」
今、俺はダンガのスピードに合わせて走っているのだが、なかなかのスピードだ。
「ああ。これでも元C級冒険者だ。それなりに戦えるぞ」
「マジか!優秀な奴を仲間にしたな、俺」
ナイススカウトだったな。
「それで、どういう結末にするんだ?デリルをボコって終わりか?」
「いや、ここまでのこと。デリルほどの立場がある奴がそう出来ることではない。おそらく周りも囲い込まれているだろう。そいつらの始末もつけなくちゃな」
少なくともリリアスを誘拐した今日この日にギルドにいる奴らはおそらくデリルの仲間だからな。
「そうか・・・」
デリルと昔からの知り合いのダンガだ。多分、ギルドには知り合いも多くいたのだろう。その知り合いがおそらく犯罪に加担しているのだ。気持ちが落ち込むのも仕方のないことだろう。
「それはそうと!」
俺は雰囲気を変えようと声を明るめにして聞く。
「ダンガのステータスを見てもいいか?」
「お、おう。構わないぞ」
それじゃあ、早速っと。
ダンガ・ソーム 男
種族 ドワーフ(ヒューマン混血)
レベル 62
HP:453/453
MP:545/545
STR:621(+50)
DEF:667(+50)
INT:548
AGI:411
MND:459
固有:金属自在
スキル:鍛冶 レベル7
槌術 レベル7
戦闘術 レベル4
採掘 レベル5
魔法:火魔法 レベル6
土魔法 レベル6
加護:火精霊の加護
土精霊の加護
ステータス高っ⁉
「これ、すごいな」
「ああ。若いころはとにかく強くなろうと無茶したからな」
なかなかのガチ勢ってやつだな。
「さて、そろそろ到着だ」
「ああ。中にいる奴らは全て把握している。もう、逃げられないぜ」
「お前の味方になれて本当によかったぜ」
「そりゃどうも」
「さて、それじゃさっそく、突入するか」
「おう!」
読んでくれて感謝です。




