第274掌 明らかにマネしてない?
今日はマジでギリギリでした。
まさか仕事からの帰宅が日が変わるギリギリになるとは・・・。
俺は落下してから地面まで十メートルぐらいの位置で停止する。
「っと」
意外にも重たかった五人の女の子達。落下からのGに相当のものが来たのだろう。まあ、絶対に本人達には言わないけど。
「見た感じ、確かにエルフ以外の種族が多いな」
俺達の下には忙しなく動く人達が。奴隷ほどボロボロではないけど、普通に働いている人達よりかは汚れている。風呂も数日は入っていないっぽい。髪とかテカテカだし。
「そんなことより!何か私達に言うことはないの⁉」
アメーシャはかなりご立腹のご様子。
「あー。ごめんごめん」
どうにもいつもの仲間達じゃないからか、歯止めが利かないんだよな。そりゃ、チートな固有スキル持ってることとか、俺の今の種族がバレないようには気をつけているけど。
なんだかんだで、リリアス達は俺がしている無意識下の手加減レベルには着いてきてくれたんだなってしみじみと思う。
そう考えるとやっぱり違うな。さっきの歯止めが利かないんだっての、撤回するわ。俺のいつも通りに今、一緒にいる奴らが対応出来ていないんだ。
「凄い棒読み・・・。反省する気ゼロって感じですね・・・」
ミッキー先生が責めるような視線を俺に送ってくる。樹里とアメーシャも同じような視線を向けてくる。
「悪いけど、周りの事を一々気にして、周りに合わせていたらいつか死んじゃうから。むしろ、まだそんな甘い考えでこの世界で生きて来れたねって言いたい」
リリアスに説教されて、自分達で生きるために戦っていてまだ日本の事なかれ主義である、協調性を守ろうとしていることに驚きである。日本に帰ることが出来たのなら、俺だって周りに合わせようとはするよ?でも、流石に命が掛かっているこの未知の旅で、自分の実力も出さずにいたら死んでしまう。
余裕のある場所ならいざという時にどうにか出来るように心構えだけはして、協調性を出してもいいけど、それは今じゃない。今現在いるここは誰にとっても未知の世界なのだ。
「「「・・・」」」
説教したつもりはないけど、それっぽい感じの空気になってしまった・・・。まあ、気にしないでおこう。俺のやること為すことに全部本気で突っかかってきたら面倒で仕方ない。リリアス達は本気で突っかかってくることはしないし。・・・リリアス達が俺のやることを許容出来てしまうくらいに強くなってしまっているのも原因の一つかもしれないけどね。
「さて。それじゃ見学、開始するぞ」
「見学って。どうするつもりなんですか?」
カリーナさんが場の空気を何とかしようと普段よりも少しばかり明るめの声色で聞いてくる。
「そりゃ、このまま空を飛んであちこち見て回るのさ」
「・・・私達を浮かせたまま?」
樹里がカリーナさんの気遣いに乗っかる形で聞いてくる。
「俺も浮いたままだし。それに下を歩いていたら何かの拍子に隠れていることがバレる可能性が高まるし。このままがちょうどいいと思うんだ」
「確かに!ししょーの言う通りですね!」
サーラ姫がまあまあな大きな声で俺を称賛してくる。俺はサーラ姫の「たし――」くらいで防音魔法を発動。急いで展開した。
「あぶねぇー。サーラ姫。俺を褒めてくれるのはいいんだけど、大声は控えような?怪しまれるから」
「・・・すみません、ししょー」
俺の言葉にショボンとするサーラ姫。そんなサーラ姫の頭に手を置く。
「まあ、褒めてくれたのは嬉しかったから。そんなに落ち込むな。次から気をつけてくれたらそれでいいから」
「はい!」
「見えないけど、イチャイチャしていることだけは分かる・・・。それより、早く行動しましょうよ!」
アメーシャが俺に訴えかけてくる。
「はいはい。それじゃ皆、移動を開始するから何か不審な所とか、怪しい場所、他にも怪しい人物とか俺の目的である王子っぽい人物とかいたらすぐに俺に言ってくれ」
「「「「「はーい」」」」」
「なんか、急にテンションが軽くなったな・・・」
まあ、どんよりとした雰囲気のままでいるよりかはマシだけど。
そんなわけで移動開始。
質は悪いけど、ある程度の水準の生活はさせてもらえているようだ。体調が悪そうな人はあまり見かけない。でも、こんな暑くて辛そうな仕事場で働くのに年齢は関係ないみたいだ。さっきから小さな子供をちらほら見かける。
建物も、ビルと言っても過言ではないくらいの建物。他にも物を売る場所はコンビニっぽい四角い建物の中にあるし。しかし、どう考えても地球の街をマネてる気がしてならない・・・。
「あっ!」
そんな感じであちこち上空から見ていると、急にサーラ姫がそんな声を上げた。
「どうした?」
俺はサーラ姫に問いかける。
「・・・いました」
「いたって・・・まさか」
「はい。王子です」
この場所の秘密はともかく、先に俺の用事が済みそうだ。
「どこだ?」
「あそこです」
サーラ姫が指差した場所は、ひと際大きい鉄のビル。その最上階の窓に映り込んだ人影。
「あれか?」
「はい。間違いありません」
ここからは数百メートルは離れているんだが、流石にこの世界の人間の視力は凄まじい。まあ、今では俺も同じようなもんだけど。
「そうか。それじゃあ、早速アポイントを取るとしますか」
「「「???」」」
アポイントの意味が分からないカリーナさん、サーラ姫、アメーシャが首を傾げた。それとは反対に、樹里とミッキー先生は嫌な予感がするって感じの表情になるのだった。
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