第28掌 選択
もう少しでベルルク編終わりかな?
まさかここまで長くなるなんて思いもしませんでした。
それでは今回の話をどうぞ!
デリルが部屋から出て行って一時間ほどが経った。リリアスは今の自分に何が出来るのかを必死に考えていた。
「この状況で私に出来ること・・・」
必死に現状を打開出来る策が何かないか考える。しかし、魔法で体を拘束されているリリアスにはなす術がない。リリアスの召喚魔法もレベルが1なのでかなり近くに契約した生き物がいなければ喚ぶことが出来ない。まあ、リリアスはまだ自分の召喚魔法を使いこなすことが出来ていないので現状の打破には使えないが。
延々と思考を巡らせていると扉が勢いよく開かれた。
「わわっ」
マヌケな声と共に部屋に入って来たのは・・・・・・シャーリだった。
「なっ」
リリアスも唐突なシャーリの登場にビックリしている。
「イタタ・・・。あれ?」
シャーリは少しの間、痛みを我慢するように蹲っていたが、痛みが治まったのが顔を上げた。するとそこにはリリアスが縄で縛られて捕まっていたのだ。シャーリはその場でフリーズしてしまった。
「あ、あの」
リリアスは何とも言えないこの空気に気まずくなったのか、シャーリについつい声をかけてしまった。
「えっ?リリアスさん?どうしてこんなところに?」
「どうしてって・・・。そんなのはあなたのところの支部長補佐さんに聞いてよ」
リリアスはまだシャーリと仲直り出来ていないので、ついつい強めの口調で言ってしまう。
「デリルさんに?」
「そうよ。こんなことをしたのはそのデリルさんよ」
「そ、そんなっ!こんなひどいことをデリルさんがするはずがないですよ!」
信じられないといった感じのシャーリは大きな声で叫んでしまう。
「ちょっと!そんな大きな声を出したら確認しに戻ってくるわよ!」
リリアスがそう言っているそばから部屋に近づいてくる足音が。
「シャーリ!ちょっとそこの陰に隠れて!」
「えっ⁉」
「私が嘘を言っているかどうか確認できるでしょ。そこで見てなさい」
そのリリアスの言葉に渋々ながらも従うことにしたのか、物陰に隠れるシャーリ。
「大きな声を出さないでくれないか?」
シャーリが隠れてすぐにデリルが部屋に入ってきた。
「こんなことをされてるんですもの。何とかしようとするのは当たり前でしょ?」
リリアスはデリルを挑発するように言う。デリルはそれに一瞬ムッとするも、すぐに余裕のあるしたり顔に戻った。
「まあ、そんなことをしても無駄だがね」
「それはどういうこと?」
「簡単なことだよ。ここはギルド内だからね」
リリアスはその言葉に茫然としてしまう。それは何故か。デリルが言った言葉には二つの意味があったからだ。
一つは言葉通り、ここがギルド内部であること。現在、冒険者がほとんどいなくなってしまったこの町のギルドにはギルド職員以外はいないのだ。冒険者がいない以上、不審に思ってくれる者が極端に減ってしまう。
二つ目は騒いだところで無駄であるとデリルが言ったことにも起因している。ここが今、ギルド職員しかいないのは一つ目で分かるが、リリアスが騒いだところで職員たちは助けになど来ないと言っているのだ、デリルは。つまり、ギルド職員も彼の仲間であるということの証明なのだ。
「フン。状況が分かったようだな。ならば、おとなしくしていろ」
デリルはそれだけ言うと部屋から再び出て行った。
デリルが出て行ったことを確認した後、物陰からシャーリが出てきた。
「そ、そんな・・・。デリルさんが・・・」
リリアスはシャーリの様子で彼女はデリルの仲間ではないと判断する。ここで本当はデリルの仲間で、リリアスを騙しているだけの可能性もあったが、ここでリリアスを騙しても何にも得ることがないことに考えが至り、その可能性は捨てた。
「お願い。助けて!」
リリアスは前にあったシャーリとのやり取りのことに関する気まずさをかなぐり捨てて懇願する。
「うっ・・・」
シャーリは判断できないようで、あたふたとしたままだ。リリアスはそんなシャーリを見て叱責する。
「あなたはそんなあたふたしているだけの今の自分でもいいの⁉変わりたいとは思わないの⁉」
リリアスは出来るだけデリルに聞かれないように声を抑えて言う。それでも多少は大きくなってしまう。
「私もあなたの現状と似たような状況になったことはあったわ。それであなたのようにあたふたしていたこともあったし、必死にやっても私は夢を叶えられなかったわ。夢を叶えている分あなたの方がすごいわ。でも、私は決めたの!最後には選んだの!あなたはいつまでそこで立ち止まっているの⁉いつまで自分の世界にだけいるつもりなの⁉」
リリアスの言葉にハッとなるシャーリ。
「スタートラインよ。ここで選びなさい。私を助けるか、助けないかを」
リリアスに選択を突き付けられたシャーリ。シャーリはその選択肢を前に――――――――――
・・・
俺は今、ダンガと合流して情報交換をしていた。
「そうか。そっちにもいなかったか」
「ああ。それで、そっちにはいたか?」
俺はダンガに聞いた。
「いや、いなかった。リリアスを見かけたかどうかも聞いたんだが見ていないそうだ」
「そうか」
本当にどこに行ったんだ、リリアスは。
「リリアスがこんなに俺達が心配するほどのことはするはずがない」
それは少しの間しか一緒にいなくても分かる。真面目な娘だからな。
「リリアス、もしくは俺に恨みやちょっかいを掛けそうな奴が怪しい」
「それなら一人しかいないじゃないか」
そう。
「「デリルだ」」
俺とダンガの意見が一致した。まあ、当然の答えだけどな。
「奴が怪しいな」
「ああ。お前の戦いぶりを見て興奮していたからな。大方お前と一緒にいるリリアスを捕まえて言うことを聞かせようとしているんだろう」
「アイツは俺を本気で怒らせたいのか?」
今のステータスと能力なら簡単にこの町を消すくらいは出来るぞ。よくそんな相手にこんなことが出来るな。怒りを通り越して呆れる。
「だが、これで場所ははっきりしたな」
「ああ。ギルドだ。今、把握したらリリアスの反応があった。当たりみたいだ」
「しかし、このまま行っても良いようにあしらわれるか、奴の術中に嵌まるだけだぞ。どうするんだ?」
「構わない。このまま行く」
「おいおい。大丈夫なのか?」
「それこそ、おいおいだ。相手は俺の正確なステータスと本当の能力を知らないんだぞ?時間を与えずに突っ込むのが最適解だろ」
そもそも場所が分かった時点で俺の<全掌握>使ったら即解決するんだが。向こうはそのことを知らないからな。ご愁傷さまとしか言えないな。
「お、おう。そうだったな。それじゃあ行くか」
「ああ。俺を敵に回したことを後悔させてやる。隅々まで掌握だ」
俺とダンガはギルドへと向かった。
読んでくれて感謝です。




