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第265掌 時空魔法って便利な潜入魔法でもあるよね



 それぞれ自分の目的のために解散したのを見送った俺とカリーナさん。


「しかし、あんなに入念に注意しなくても分かってるってのに・・・」


「あはは・・・。アメーシャさんも心配なんですよ」


 アメーシャは樹里とミッキー先生が別行動を取るために離れたのを見計らってから急に近づいて来たのだ。


 俺の顔にギリギリまで自分の顔を近づけてから「ぜっっったいに❘アレ(・・)、見られるんじゃないわよ!私の上げたもう一つのブレスレットも一緒にきちんと付けているでしょうね?」と言われたのだ。


 ちなみに、アレとは例のブレスレットを感知されないようにアメーシャが作った封印タイプのブレスレットである。これで直接見られない限りは安心という訳だ。


 そして俺は静かに、そして若干呆れながら頷くと、アメーシャは満足して一人でどこかに歩いて行ったというわけだ。


「あそこまで気を遣うくらいなら欲を出して俺にブレスレットを付けさせないで、しっかり保管しておけば良かったのに」


「あはは・・・私からは何も言えないです」


 カリーナさんですらフォロー不可能か。まあ、今回は完全に俺、巻き込まれただけだしな。そういう意味でも何も言えないか。


「よし。それじゃ俺達も行動を開始するか」


 王子に会いに行かないと。


「でもタカキさん。相手は王族ですが、どうやって会うつもりなんですか?」


「え?」


 そういえば・・・。今までは依頼が向こうからやってきたり、アルナスさんに頼んだり、大会に出たり、またまたアルナスさんが手を回してくれたり。あれ?今回、普通の方法じゃ無理じゃね?


「どうしよう・・・」


「今まで酷いことばかりしてきた私には何の伝手もありませんよ?」


 こんなどうしようか考えている時にネガティブさんになるのは止めてください。


「う~ん。流石に今回はアルナスさんやハフナーさんに頼むのも気が引けるし」


 そもそも今回は俺の目的とは全く関係ないことをしているのだ。勿論、最終的には協力者を得るという目的のために王子でも脅そうとは思っているけど。今回の主目的はあくまでもエルフの王子にサーラ姫とカレン姫を諦めてもらうこと。これの副産物で協力者にしようと考えているのだ。


「強行突破とかは・・・」


 なかなか過激な意見ですね。


「それは本当に何も策がなくて、どうしようもなくなった時だけだね。強行突破しなくても忍び込むことも可能だし」


 俺の前では王城の守りなどあってないようなもの。俺も暗殺とか隠密系のスキルを多く持ち合わせているからな。


「そうですか。でも、最終的には何とか出来るって分かっているだけでもやる気は違いますね」


「ああ。とりあえず、一つ思いついたことがある」


「え⁉本当ですか?」


「ああ」


 とはいえ、これも強行突破と似たようなものになってしまうけどな。けど、今までみたいな手段ではダメだろう。相手は下品な馬鹿野郎と認識出来るんだから。


「とりあえず、ここじゃこんな話をしていたら目立つだろうし、宿に入ろうか。部屋の中なら気にしなくてもいいだろうし」


「はい」


 そして俺達はまず、宿へと向かった。ちょうどいいし、今晩の宿泊予約もしておこう。


 そのまま予約をした俺達は自分達に割り振られた部屋へと入っていった。


「さて、説明をしないとな」


 まずは変装を解く。カリーナさんの分もね。


「あれ?さっき変装したばかりなのに・・・。いいんですか?」


「ああ。これからのには必要ないからな。っていうか、エルフのままだと色々と説明とか面倒だし」


「説明?」


「これから王族の力を借りようと思ってな」


「オークスのですか?」


「いやいや。流石にアルナスさんやハフナーさんの力は借りないよ。ほぼほぼ関係ないからね。っていうか、こんなしょうもないことに巻き込んだら迷惑だよ。向こうにも公務があるんだから」


「じゃあ一体誰を?」


 それじゃネタバラシといきますか。


「それじゃ行くよ」


 そう言って俺は時空魔法の一つである『ゲート』を発動させる。簡単に言えばどこでも行ける扉みたいなものだ。おおっと。これ以上は簡単に言ってはいけない。ピー音のお世話にならなくちゃいけなくなる。正確には伏字だけど。


「さて。これで繋がった」


 そして俺はカリーナさんの手を取って『ゲート』の中へと入る。


「ここは・・・」


 カリーナさんは不思議な体験をしている。普段使っている転移魔法と違って、今回の『ゲート』は自分の足で移動してきたようなものだ。それなのに今までいた場所と違う場所にいる。こんな不思議なことはそうそうないだろう。・・・・・・いや、時空魔法を使えば大体は不思議体験できるけどね。


「そう。この前までいたヤームロ帝国。その城の中。一応は誰もいない庭園にしたけどね」


「ふ、ふふふ不法侵入じゃないですかっ⁉」


 おおぅ。いきなり大きな声を出さないでくれよ。ビックリするだろ?


「さて。それじゃ会いに行きますか」


「もう、ここまで来たら誰に会いに来たのかも分かっちゃいましたよ・・・」


「察しがいいね。まあ、予想通りだとは思うけど、一応聞いておこうかな」


「タカキさんがここに会いに来たのは・・・サーラ姫とカレン姫ですね」


「せーかい」


 呑気な声で俺はにこやかにカリーナさんにそう言うのであった。




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