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第261掌 優先順位は大切だよね



「あのー?」


 屋敷に戻った俺達は、再び元のゲストルームに入り、さっきと同じ配置に座った。


「紅茶、入れ直しておいたわ」


 リリアスとアメリアはこちらの屋敷に残っていたのだが、細かな気配りをしてくれる。流石はうちのメイドさん。


「タカキさん。私は今回はちょうどいいので彼らの様子を見ておきます」


「ああ。そうしてくれ。何かあったら連絡してくれよ」


「はい」


「あのー?私達、流石に仲間が掛けられた魔法のこと、知りたいんですけど・・・」


「それにしても、一体どんなことになったらあんな複雑な毒をその身に受けるの?」


「確かに」


 一応はアメーシャの言葉に同意するも、それをやらかした黒幕とかなら大体検討がつく。大方、眷属共の仕業なんだろう。奴らの目的と毒の効果が一致してるしな。


「あのー!スルーするのだけは止めてくれませんか!」


「おおぅ!悪い悪い。思考に耽っていた。それで?何だって?」


「私達の仲間が掛けられた魔法のこと、知りたいんですけど」


「内緒って言ったじゃん」


「じゃあ、孝希君はリリアスさんやアメリアさんが怪しい治療魔法掛けられても気にしないの?」


「・・・するけど」


 俺なら速攻で疑似神眼使うだろうな。


「でしょ?だから掛けた本人である孝希君にはしっかりと説明して欲しいの」


 正論である。ミッキー先生も俺より伊達に長く生きていない。大人にはまだ正論で勝てないのかもしれない。今までは大人だろうとおかしなことをしているような奴らばかり相手にしてきたからな。まともな大人は初の相手かもしれない。話し合いにしろ、戦うって意味では。


「うーむ・・・」


 しかし、俺の時空魔法は神龍であるクロノから掌握したかなりレアな魔法。恐らくは人間という括りだと俺くらいしか使えないだろう。それくらいレアなものだ。


 それをいくら同郷の相手でしかもクラスメイトや担任の先生だからと教えてもいいものか?・・・いや、ダメだろ。それにここにはアメーシャもいることだしな。


「悪いけど、さっきのは俺達の仲間にならない限りは教えられないものだ。俺の目的のためにはなくてはならないものと言っても過言ではないからな」


 俺は敢えて先生に向かって敬語ではなく、タメ口で、しかも毅然と返す。


 それに嘘は言ってないしな。移動手段としても、便利な様々な日常生活の手段としても、戦闘の手段としても。どれをとっても結構重要な位置を占めている。何気に大活躍だな。最初は移動手段が欲しいから空間魔法を手に入れようと思っていただけなのに。気が付いたらその一段階上の魔法を手に入れてしまった上に、それを一分の隙も無く使い込んでいる。すでに時空魔法は俺達の生活になくてはならないものだ。・・・なんだかスマフォみたいだな。


「そう・・・ですか」


 俺の態度に聞き出すのは無理だと判断したミッキー先生。まあ、正論を言われた時点でそれを覆すことはかなり難しい。だからこそ、俺はそれをまるっきり無視した拒絶で対処した。これで相手が上位の立場でもない限りはそこで話が終わってしまうからな。


「悪いですね。でも、毒の進行を遅らせるように作用させる魔法を使った。これで時間がより多く出来る。だけど、それでも毒の進行を止めたわけでもないし、時間もない。明日にはオークスを出発しておこうと思う。各自、準備は怠らないようにしてくれ」


「ねえ。それはいいんだけど、順序は?」


「順序?」


 アメーシャは俺にそんなことを聞いてくる。


「優先順位よ。流石に同時進行は出来ないでしょ?」


 確かに。これからやることは下手したら王族に喧嘩を売るようなことだ。ジョールズ共和国に指名手配とか、討伐依頼を出されてもおかしくない。それはそれで面倒でもあるんだが・・・。まあ、そこら辺は少なくともオークス王国、クロノス共和国、アリエス教国、ヤームロ帝国の四つの国は味方してくれそうだから怖気づいてしまうってことはない。ヤームロ帝国なんて自国の姫を救うために行動している俺達を咎めようなんてしたら国民から大反発を喰らうだろうし、他国からも白い目で見られるだろう。


「最初は樹里とミッキー先生には悪いけど、こっちの事情を優先させてもらうよ。こっちの方も結構時間もないし、人の命も掛かっている」


「一応、先にした理由を聞いてもいい?」


 樹里の言葉に俺は一度頷いてから話す。


「まあ、そもそもこちらの目的が先だって言うのもあるけど、一番の理由はそれじゃない」


「じゃあ、一番の目的って?」


「速さ」


「は、はやさ?」


「そう。速さ。だって、考えてもみてよ。どこにあるか分からないものを探すのよりも、人を脅してこれ以上手を出してこないようにさせる。どっちが速い?」


「ものすごく物騒な事柄が聞こえてきたんですけど・・・」


「まあ、孝希君ですから・・・」


 ミッキー先生の言葉に樹里とアメーシャ以外の全員が何度も頷いている。


「と、とにかく!どこにあるか分からないものを探すよりもすでにどこにいるか分かる者に会いに行く方が速さ的にもいいでしょ。俺が用があるのは王族だし、もしかしたら霊薬に関することも吐いてくれるかもよ?」


「今、さらっとさらに凄いこと言いませんでした?主に身分的なもので・・・」


 ミッキー先生は頬を引きつらせながらジト目で見てくる・・・がそれは華麗にスルー。


「さあ。準備準備。やることも増えたし、もうちょっと買い物しないとな~」


 そう言って俺はその場から華麗に離脱するのだった。




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