第244掌 お姫様の冒険者デビュー その1
ヤームロ帝国編もそろそろ後半戦。
いやまあ、話数的に言えばもう入っているんですけどね。
ここで話が伸びればどうなるかは分かりませんが、ここから話は進んで行きますよ~!
変なブレスレットを強制的に付ける羽目になったその次の日。俺達は全員で観光を楽しんだ。
露店。観光スポット。有名なレストラン。有名な劇団の観賞。夜になるまで色んな所に行って楽しんだ。ここまで純粋に一日を楽しめたのなんて初めてじゃないかと言えるくらいに楽しんでいた。
異世界だけでなく、日本でもなんだかんだで色んなことに巻き込まれていた気がするし・・・。
まあ、今はそんなことを気にしなくてもいい。それより、今は今の状況を詳しく説明しなくてはならない。
「私をあなたの冒険のお供にしなさい」
場所は城の中にある植物園。そこでこのセリフを俺は言い放たれている。
そう言われているのはこの国のお姫様。名前はサーラ姫。御年19歳になる今回、ヤームロ帝国の協力者になるはずの方である。
「お姉様!何をおっしゃっているのか理解しての発言ですか⁉」
その後ろにいるのはサーラ姫の妹であるカレン姫。この方も協力者になってくれるそうだ。
そもそもこうなっている説明をしなくてはならないな。
・・・
簡単に説明しよう!
まず、一日を純粋に楽しんだ俺は気持ちのいい睡眠を堪能していた。しかし、それはアルナスさんのお呼びにより終わりを告げる。
「タカキ。最初に言っていたように、今日来てもらう。君達もちょうど旅行終盤だし、いいだろう?」
「ま、まあいいですけど。でも、どうしたんですか?ちょっと困った感じの表情ですけど・・・?」
「うん。まあ、ちょっと本当に困ったことになっていてね。でも、原因は君にもあるし、まあ頑張ってくれ」
そう言って俺の肩をポンポンと叩くアルナスさん。一体何なんだ?
よく分からないままに俺はアルナスさんに連れられて城へと行く。今回は顔合わせだけとあって俺だけで行く。皆にはそのまま旅行を楽しむように指示を出しておいた。
「それで?協力者というのはどんな方なんです?」
「うん。条件に合う貴族の人とかが中々いなくてね。そこで立候補してきた方がいたんだ」
城へと向かう道中、アルナスさんに説明をしてもらう俺。ちなみに二人で歩いている。護衛無しだ。まあ、俺がいるから大丈夫だと判断したのだろう。アルナスさんは俺以外に護衛がいないのが嬉しいみたいだ。ちょっと話すトーンも嬉し気だし。
「その場ではこちらとしてもありがたかったし、そのまま了承したんだけど、後で面倒・・・ってほどじゃないけど、厄介な条件を出されてね」
「厄介な条件?」
「まあ、そこは後で本人に聞くといい。それでその協力者なんだけど」
「はい」
「この国のお姫様だ」
「え?」
ちょっと待って。俺の記憶が正しければ確かあの王様の娘さんってことになるんだよな?前にも予想したけど、あの歳の王族の娘ってことはまあまあなお歳の方だよね?しかも、プリマ姫の親戚・・・。
早くも厄介事な気がしてきた。
「それじゃこちらはこちらで皇帝と話があるし、後は頑張ってくれ」
「え?急にそんなこと言われても困るんですけど⁉」
場所はすでに城の中。俺達も一回来ているその一般開放されている場所でアルナスさんは唐突にそんなことを言い出した。
「すまない。でも、協力者がこの国の姫になるんだ。それ相応の準備というか、話し合いがあるんだ。そこら辺の面倒なことはこっちでやっておく。だから君は君で頑張ってくれ」
「いや!ここで放置されても困るんですけど!」
どこに行けばいいかも分からないんですから!
「場所は植物園だ。一般開放はされているはずだから行けると思う。今日は閉鎖されているけど、私の名前を出せば通してくれるはずだ。それでもダメなら君の名前も伝えて。そうしたら流石に通してくれるはず。それでもダメなら中にいるサーラ姫に伝えるように言ったら大丈夫なはず」
王族の護衛だからそのくらいの警護は当たり前だし、いいんだけど。また面倒だな。最初のアルナスさんの名前だけでどうにかなってくれるといいだけど。
そんなわけで俺は一人寂しく植物園へと向かった。
そして案の定、アルナスさんの言っていたことを全部やってようやく中に入れた俺にお姫様は言ったわけだ。
「私をあなたの冒険のお供にしなさい」
と。
しかし、簡単に説明しようって言ったのに普通に回想しちゃったな。まあ、いいか。今はそんなことを追求しなくてもいいだろう。
そして話は冒頭に戻るわけだ。
「あ、あのー。さっきの発言ってもしかして・・・」
「ええ。あなたの協力者になる条件です」
「あちゃー」
「あなた、王族の前でよくそんなに余裕な状態を保っていられますね?」
「まあ、他国にはあなた方の身分よりも高い方々と知り合いですから」
「やっぱり冒険者というのは凄いんですのね!」
テンション高めで俺にそう言ってくるサーラ姫。
「いや。普通の冒険者にはそんなことは不可能ですわよ、お姉様・・・」
なんだかこの妹のカレン姫、結構苦労していそうだな。
「まだ詳しい協力内容は聞いていませんが、異変があれば知らせて欲しいということですのよね?」
興奮したサーラ姫の代わりにカレン姫が聞いてくる。
「はい。と言っても危険なことをして欲しいというわけではありません。何かがおかしい。そう判断したら私に知らせて欲しいのです。勿論、アルナスさん伝手にで構いません」
「それは簡単でいいですわね。それで国同士の仲がより良いものになるのであるなら私はその申し出、受けましょう」
カレン姫はなかなかの人格者みたいだな。
「カレン。話を勝手に進めないでください。私はまだ了承したわけではありません」
「はぁ~。請け負う代わりに自分もパーティーに入れて欲しいと言いたいのですのよね?」
「ええ。こんなことチャンス、なかなかあるわけではありませんから」
「あ、あの~。それで、結局私はどうしたらいいのでしょうか?」
サーラ姫はその俺の言葉に笑顔で言い放った。
「まずは冒険者登録です!」
その言葉が面倒事に巻き込まれたと俺が確信した瞬間であった。
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