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第239掌 胆試しはマジモンがいるところでしない方がいい



 皆さんは旅行先の定番と言えば、何を思い浮かべるだろうか?特に若者達が男女で行うこと。


 温泉?観光?それとも寝る前にする恋バナ?はたまた告白?


「否!断じて否!旅行しに来て、すべきこと!それはアレしかないだろう!」


 夜。誰もいない露店通りにやって来た俺は声高らかに言い放つ。っていうか、大体やったし・・・。


「おい。ここの住民の安眠妨害だ。迷惑だから止めなさい」


 ダンガに窘められてしまった。だが、それでも俺はテンションを下げはしない!ちなみに、声は防音済みなのでご安心を!


「それで?アレって何なの?」


 アメリアがジト目をしながら聞いてくる。


「そんなの、決まってんだろ?」


 俺は目一杯溜めてから言い放つ。


「肝試しさ!」


 ・・・。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・。


 ん?んん?


「あれ?」


 皆、何の反応もないな?どうしたんだろうか?それどころか、キョトンとしている。


「どうしたんだ?肝試しだよ?肝試し!ここはその名前を聞いて、『肝試し!ついにこの時が来たな!』的な感じでノリに乗ってこいよ!」


「いや、まず、どうしたのよ?あなた、いつもはそんな感じじゃないでしょ?」


 アメリアが皆を代表して聞いてくる。


「え?」


「タカキさん。いつもは達観してる感じなのに、今は凄い熱い感じがします」


 うーむ。リリアスの言う通りかもしれない。向こうの世界では胆試しって言ってもここまでテンションが上がらなかったし、旅行もここまで嬉しがりはしなかったかもしれない。


 想像以上にワールドシックになってるな。でも、いつもより感情的ならいいことじゃない?そりゃこの世界だといつもの俺の方が生き残れるとは思うけどさ?


「でも、明るいのはいいことだろ?」


「それはそうですけど・・・」


 リリアスが何か言いた気だ。


「いつものタカキさんの方がいいです・・・」


「私も。タカキ様が明るいのはいいことですけど・・・。でも、いつもそんな感じだと嫌です!」


 カリーナさんとミールが正直に言ってきた。


「ダ、ダンガとメルエさんは・・・?」


 二人は言葉すら発さず、首を左右に振る。


「こ、言葉すらない・・・だとっ?」


 大人組は暖かい目で俺を見てくる。まるで、青春真っ盛りの高校生時代を見ている大人のような表情だ。いや、実際に俺は高校生だし、ダンガもメルエさんも大人なんだけどな。


「トールとメルサは?」


「いつものおにいちゃんじゃないー!いやー!」


「元に戻ってー!」


 メルサは本気で嫌そうだし、トールも怯えている。おいおい。俺は普通に明るいだけだぞ?なんでそれだけでこんなにも仲間達から滅多打ちにされなきゃならんのだ?理不尽だ!


「まあ、いい。それより、話を戻そう!」


「うわぁーん!」


 メルサが元に戻らない俺に我慢できず、泣き出してしまった。


「あわわっ!メ、メルサ~?俺は俺だからね~?今はこんな感じだけど、明日には元に戻ってるから!ねっ!」


「ホ、ホント?」


「ホント、ホント!」


「ならいい。いまのおにいちゃんでもがまんする・・・」


 あれれ?泣き止ませることは出来たけど、結局俺が傷ついてない?俺にはテンションを上げることすら許されないのかよ!


「ご、ごほんっ!それでは胆試しを始めよう」


「待て待て。そもそも胆試しって何だ?」


 ダンガがそんなことを聞いてくる。


「はい?」


「いや、そもそもその『胆試し』ってやつが分からないから反応できなかったわけで」


 マジか!昔の勇者め!ここまで日本仕様にしているなら胆試しとかも広めておけよな。旅行には胆試しだろ!(※これはタカキ個人の見解です)


「だが、そんなこと程度で諦めるものか!簡単に、ざっくりと説明しよう!胆試しとは、お化け、幽霊が出るかもしれない場所にわざわざ行き、そこで歩き回って度胸を魅せる場である!それぞれペアを組み、二人で行ってもらう」


「ぼ、僕達も?」


 トールは本気で怖そうにしている。


「ああ。まあ、トールとメルサにはリアを付けるから、安心してくれ」


「ほ、ホント?」


「小さい子供だけで無茶なこと、させるわけないだろ?」


「いや、タカキなら必要ならやりそう・・・」


 おい!失礼なことを言うな、ダンガ!結果的に子供のためになるならともかく、自分の目的のためだけにそんなことしねぇーよ!


「ごほんっ!それで、他は・・・」


「俺は遠慮しておくよ。昨日のこともあって落ち着きたいからな。部屋に戻ってのんびりさせてもらうそれにそっちの女性陣を敵に回したくないからな」


「っていうか、そもそもお化けってここにいる奴らには怖くも何ともなくないか?」


「・・・」


 ダンガの一言で俺は無言になる。



「確かに。アンデッド系統のモンスターのことをタカキさんは言っているんですよね?好きとは言いませんけど、そこまで戦うのに困らないですよ。ここにいるグラスプなら一人でも勝てますし」


 リリアスさん!それは言ったらおしまいでしょ!っていうか、あなた、分かってるんですか⁉これ、カップルのイチャイチャイベントでもあるんですよ⁉


「何の意味もなくないですか?」


 カリーナさんにすらそんなことを言われてしまう。リリアスだけでなく、女性陣全員そう思っているようだ。何とか打開策がないかを考える。


「・・・・・・ぐぅ」


 しかし、俺はリリアス、カリーナさんの言葉による攻撃のコンボに心が折れてしまった。そして俺は息を吸い込み言い放つ。


「解散!」


 テンションを上げに上げた胆試し大会はこうして幕を閉じた。もうこの世界で胆試しはしない。そう誓った俺であった。




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