第226掌 泊まる場所は・・・
ヤームロ帝国。外観はレンガ造りの街並みで、なんだか暖かそうな国だ。これには理由があって、この国に転移したときから分かっていたことなのだが、寒いのだ。
この物語が始まって以降、初の情報なのだが、この世界は季節が時間で来るのではなく、場所によって季節が違うのだ。ちなみにオークス王国は春のような気候で、クロノス共和国は夏と秋の間といった感じ。アリエス教国は冬と春の間って感じだ。
しかし、今回のヤームロ帝国は真冬と言っても過言ではない程の寒さなのだ。俺達冒険者パーティーは普段は防服を着ているし、今回もそのままでこちらに来ているので寒さはあんまり気にならない。防服がそこら辺も防いでくれるからな。でも、使用人達は寒いだろうということで、冬服を着てもらっている。
っていうか、なんで季節の話を俺は今更してるんだ?(※作者がそこら辺を曖昧なままでここまで来ちゃったから)ここぞとばかりに説明してる気がする・・・。
「さて、検閲も越えたし、まずは宿に行くか」
門の検閲から解放された俺達は馬車で街の中をゆっくりと移動していく。
「どんな宿なんですか?私達、何も知らされていないんですけど・・・」
リリアスが馬車の窓から出て、少しだけ不満そうな声で聞いてくる。
「ああ。悪い悪い。当日のお楽しみの方がいいかと思ってな。宿は街から少し離れた場所にあってな」
「そうなんですか」
「せっかく旅行で泊まりに来ているのに泊まっている場所がうるさかったら嫌だしな」
「そうですね」
本来の活動中に泊まるならそこら辺は選り好みしないし、むしろ、騒がしい方が何かあった時にすぐに対処出来るんだが、今回は巻き込まれたくないし。それに神の使徒としての仕事があるなら疑似神眼スキルとか全掌握が反応してくれるからな。今回はアクティブじゃなくてノンアクティブにいくぜ。
「それにしても、ここはオークスの王都よりも賑やかだな。何かあるのか?」
もう一つの窓からダンガが顔を出して聞いてくる。
「いや。ここではこれが普通だ。オークスと違って観光地としても有名だからな、ヤームロ帝国は。だからお祭りじゃなくてもここまでの活気に溢れているんだ。お祭りになったらもっと凄いぞ。埋め尽くさんばかりの人ばかりらしいからな」
ちなみに俺がここまで詳しいのは本とかヤームロ帝国に行ったことのある冒険者、そしてアルナスさんに事前に聞いておいたからだ。こういう旅先の情報を覚えるのって旅行の基本の一つだよね。あれ?俺だけ?・・・じゃないよね?
それからちょいちょい馬車が通る道を人が横切ってきたりして少し危なかったりしたが、それ以外は特に何も起こることなく宿に到着したのだった。
「こ、ここですか?」
メルエさんが唖然としているが、それも無理はない。現在、俺達がいるのは貴族や王族が泊っても遜色ないレベルの旅館なのだ。勿論、その外観もかなりデカく、下手したらそこらの貴族では財力で負けてしまうのではないかというレベルだ。
「ああ。ここが今回、俺達が宿泊することになる旅館。『ヤームルルの宿り木』だ」
「ここって、どう見ても高級旅館ですよね?私なんかが泊っても大丈夫なんですか?」
ああ。カリーナさんのネガティブにスイッチが入っちゃった。まあ、庶民からしたらそう思うのも仕方ないけどな。こう見えても俺達は稼いでいるし、王族からの支援もある。ここぐらい、何日でも泊まれるぞ。
なんて偉そうにしてるけど、俺も日本では普通の庶民。こんな凄い旅館に泊まったことなどな・・・い・・・はず。あれ?そういえば、前に知り合いを助けたお礼にC組の奴らと二泊ぐらいしたような・・・。いや、気にしない方がいいか。
「とにかくいつまでもここにいると迷惑だし、中に入ろう」
茫然としているか、カリーナさんのようにネガティブになっているメンバーを連れて俺達は旅館の中へと入る。馬車は入り口に待機していたホテルマンに預ける。恐らく宿泊中は使わないからな。屋敷に戻してもいいんだけど、世話をする人が今回はいないし、それにせっかくだから馬にも旅館を味わってもらおう。散々俺達に付き合ってくれているからな。ここの旅館は乗って来た馬にも中々いいサービスをしてくれるって予約の時に従業員が教えてくれたからな。
「「「「「「「いらっしゃいませ」」」」」」」
中に入ると女将と何人もの仲居さんが出迎えてくれた。
「予約していたタカキです」
「承っております。先日は受付の者が失礼を致しました」
ああ。あの前日に予約するのかって感じの変人を見る目で見てきた従業員ね。
「いえ、気にしていませんよ」
「ありがとうございます。ですが、やってしまったことはやってしまったこと。失礼を働いた代わりと言っては何ですが、何かサービスをさせてください」
「うーん。それじゃあ、風呂の貸し切りをお願いしてもいいですか?」
「すみません。流石にご滞在の内全てを貸し切りにすることは出来ないのです」
あれ?なんか勘違いしてない?俺、宿泊中は毎日とか言ってないよ?
「いえ。そこまでは言いません。可能な限りでいいんですけど」
「そうですか。それでしたら三日ほど、お取りすることが出来ます」
「それじゃあ、それでお願いします」
「承りました」
これでもう大丈夫かな。
「それでは皆さんをお部屋にご案内させていただきます。今回、この六人が皆さんの担当になる仲居です」
多くない?
「それぞれ担当する分野が違いますので御用の時には是非、お声掛けください」
「分かりました」
これで話は終わった。俺達は女将の案内に従って旅館の奥へと進む。
「こちらが皆様のお部屋になります」
そう言って案内されたのは日本の旅館を思い出す、和のテイストの15畳ほどの個室だった。
「こちらの部屋と同等のものを後、二部屋ご用意しております。部屋の場所はそれぞれこの部屋の両隣になります」
合計三部屋か。
「皆様、お荷物はお持ちになられていないようなのでご案内はここまでとさせていただきます。後はこの部屋の向かいにある部屋に待機させている仲居をお使いください。それでは失礼いたします」
そうして女将と仲居さんはその場から離れていった。
「さて。それじゃ、一回自分の部屋を確認した後に入り口に集合な。最初の観光を始める」
「「「「「「「「「は~い」」」」」」」」」「にゃーい」
あれ?なんか、リアの鳴き声変じゃなかったか?いや、気のせいかな。
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何とか書けました・・・。
今回、忙しくてストック溜めれなかったんですよね・・・。
今週の休みにつらくならないように頑張って溜めてみます。




