第22掌 放置?
俺の言葉がギルド内にいた人たちに聞こえていたのか、こちらを驚いた表情で見つめていた。
「な、なぜっ⁉」
俺が断るとは思っていなかったのか、デリルさんは食い下がる。
「なぜって・・・。命を預かる仕事をしているなら分かるはずでしょ」
俺はデリルさんの言葉に呆れ返る。
「俺達は命を懸けて依頼をこなしているし、これからもこなしていく気です。でも、それは命を懸けるに値するものが報酬か、それとも命を懸けるほど大事なものかあるか。この二つが前提に来ます」
「後者が今回の緊急依頼で当てはまっているではないか」
「ハァ」
呆れてため息が出る。ヤレヤレだぜ。┐(´д`)┌
「俺は守りたいものがこの町にあるわけでもないし、この町を命を懸けてまで守りたいと思っていない。ましてや、命を懸けるほどの報酬があるわけでもない」
もしも、そこまでも報酬があるならば、緊急依頼を宣言したときに言っているはずだ。報酬がいいだけ冒険者たちもやる気を出すだろうし。
「さっきの招集でも話術でみんなの心を掴んだだけでしょうし」
なんせ支部長補佐殿だからな。そのくらいの話術はスキルなしだとしても出来るだろう。
「ぐうっ」
「俺はそんな態度のギルドのある町なんか守りたくもないし、そもそもリリアスを危険に晒したくもない。俺達はこのまま宿を引き払って次の町に行きます。そもそもあんまり長居はするつもりはなかったですし」
おっと。報酬を貰っていなかったな。
「シャーリ。さっさとそのアイテムの報酬をくれ」
「・・・えっ⁉」
「何を呆けているんだ。俺はそれを買い取ってもらいたいだけだぞ」
「えっ!あっ、はい」
パタパタとお金を取りに奥まで行って、戻ってくるシャーリ。
「こ、これが換金分の報酬です」
そう言って俺に渡そうとするとデリルさんが止めた。
「待て。町を守る気がない者にやるものなどない」
「それならそれで構いません。アイテムを返してください」
「いや、あのアイテムはこちらで研究する。悪いが没収させてもらう」
シャーリからお金を取り上げるデリルさん。なかなか面倒な奴になり出したな。
「それは困りますね。それは俺とリリアスが命がけで手に入れたものですから」
「嫌なら今回の緊急依頼を受けたまえ」
そう言ってニヤリとするデリルさん。・・・いや、もうさん付けするほどの人物でもないか。猫を被るならもうちょっと頑張ったら良かったのに。そしたら一応まだ、さん付けで呼んだのに。
「それはさっき断ったはず。そっちがその気なら俺はもう構わない。アイテムを受け取ってさっさとおさらばだ」
俺は全掌握を使う。ギルドの奥にしまわれたアイテムをデリル自身に取りに行かせる。そしてそのまま俺に手渡す。
「な、なんだ⁉何故身体が言うことを聞かない⁉なんで勝手に体が動くんだっ⁉」
あ~あ。取り乱しちゃって。みっともない。いい歳したおっさんがあんなにアタフタしたら憐れに思っちゃうよ。
俺はデリルからアイテムを取り返し、そのままリリアスの手を取ってギルドの外に出る。
「ごめんな。嫌な感じになっちゃって」
「い、いえ。それはいいんです。私の命を優先してもらって嬉しいですから」
そんなに感動した感じで言わないでくれ。照れる。
「でも、本当に助けないのですか?」
「ああ。そもそも情報が少なすぎる。リリアスには言っていなかったが、今回のこの異変は探しモノが関連している」
「ええっ⁉でも、タカキさんは今回は違うって・・・」
「リリアスと別れている時に神から連絡が来てな。どうやら探しモノの部下が独断で何かをやっているっぽいんだ。つまり、今回の異変はランクA以上の可能性が高い。今の俺では無理かもしれない」
「そ、そんな」
「この世界では出来るだけ死なないようにするのが大事なことだ。命が軽いこの世界ではな?」
「はい。その通りです」
「とにかく、一回宿に戻って、少し休憩したら出発しよう」
「はい」
リリアスも納得してくれたのか、俺に同意してくれた。
「ありがと」
・・・
宿に戻り、休憩に入る。俺はベッドに寝ころび、ステータス確認に入っていた。
タカキ・ヤガミ 男
種族 ヒューマン?
レベル 44
HP:218/733(+100)
MP:645/645(+100)
STR:767(+100)
DEF:711(+100)
INT:600(+100)
AGI:789(+100)
MND:3300(+100)
固有:全掌握(下位の把握を偽装として表示できます)
スキル:オール・ブースト
疑似神眼
疾駆
瞬動
棍術
投擲
短剣術
魔法:水魔法
植物魔法
加護:地球神の祝福
スキルは掌握できなかったようだ。まあ、デリルのスキルとか特に欲しいとか思わなかったからちょうどいいか。
俺はステータスを閉じる。
さて、あとは、リリアスの準備が終わるのを待つだけだ。しかし、リリアスとシャーリには少し悪いことをした。そこまで仲がいい訳ではないだろうが、仲直りくらいはさせてやりたかった。まあ、今更言ったところで遅いか。
俺は残った時間で旅に必要なものを考えることに費やした。旅立つ前に買いに行かないとな。本当は予定通りに二十日ぐらい滞在としてたのに、まさか一日で次の町に行くことになろうとは思わなかった。
「タカキさん。準備が終わりました」
「おう。分かった」
ドアの向こうからリリアスが声をかけたので俺はベッドから起き、そのままドアを開けた。
「行こうか」
「はい」
リリアスが持っていた荷物を俺が持つ。女の子に荷物を持たせて俺は手ぶらなんて罪悪感ハンパないじゃん?たとえこの荷物が全部リリアスの物だとしても。
「前回みたいなことは避けるためにちゃんと買い物はして行こう」
「そうですね。流石に次もあんな強行軍をするのはやめた方がいいですね」
まあ、前回よりもステータスは上がっているから多分より楽になっているだろうけどね。
「ああ。それで、次はどこに行く?」
「次はこの町から西に二日ほど歩いた先にあるフェルゲンという町に行きましょう。ここよりもさらに大きい町ですよ」
「へぇ~」
今回はベルルクに一日しか滞在出来なかったからな。今度はゆっくりとしたいものだ。
「それじゃ、必要物資を調達したら出発するか」
「はい!」
俺達はそのまま宿を出た。
読んでくれて感謝です。
タカキ達は本当にそのままベルルクを放置して去ってしまうのか?
続きは次の投稿で!




