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第209掌 決勝戦 気が付いたら終盤戦

すみません。

余りに長引くし、タカキやリリアス達グラスプのメンツが戦うわけでも、かなり重要な部分というわけでもないので端折ってしまいました。

もしかしたらいずれ、補足として書き足すかもしれないですが、今のところはご勘弁を。<(_ _)>



「――カ―さん!――――カキさん!起きてください!タカキさん!」


 ん?誰かが俺を起こそうと必死に声を出しているな。何かあったのだろうか?


「―――ふぁあ。なんかあったのか?」


 俺を起こしたのはミサだった。


「大変なんです!リヒトが!」


「え?」


 ミサが必死になりながら指をコロシアムの方向に指す。視線をミサが指差した方向にはリヒトが切り傷だらけでボロボロになっている姿があった。辛うじて立っているその姿は痛々しくて見ていられないほどだ。


「何があった?」


 リヒトの惨状を見て、俺も真剣な声色になる。


「タカキさんが寝た後、接戦を演じながらも四人を倒し切ることが出来ました。リヒトは相手の代表だと思われるハッシャーマンという男相手にギリギリで勝利を収めたんです。でも、リヒトもその時点でボロボロだったんです。だから私達は後はタカキさんに任せて棄権しようって思って審判に声を掛けようとしたんですけど・・・リヒトが「タカキのためにギリギリまで相手を削る」と言って。でも、その後、あのフードの選手がボロボロのリヒト相手に猛攻撃を仕掛けてきて・・・」


 確かに。すでにリヒトは気を失っている。なのにお構いなしで攻撃をし続けている。殺さないようにはしているようだが、再起不能に持ち込もうと考えているのだろう。それに、審判も何も言ってこない。グルっぽいな。


「分かった。もう棄権してもいいだろう。―――審判!リヒトは棄権だ!この試合、こっちの負けでいい!」


 大声で審判に叫ぶ。観客もやり過ぎだと思っていたのか、静かになっていたからな。声もよく通った。これで審判は試合を終了するしかなくなる。しないとアシュラ教とグルだと思われる―――っていうかグルだってバレるからな。


「・・・分かりました。その試合、そこまで!勝者、ミスト!」


 そう審判が宣言した瞬間、リヒトの体が地面に崩れ落ちる。


 俺はリヒトの所に駆け寄り、担いでコロシアムの入り口まで戻る。


「タカキさん!早く医務室に!」


「落ち着け、ミサ。医務室には行かない」


「どうして⁉」


「信用出来ないからだ。下手したら医務室もグルの可能性がある」


「そんな―――っ。じゃあ、どうすればいいんですか⁉」


「俺が治す」


 そう言って俺は回復魔法を使ってリヒトの治療を開始する。危険な状態だからな、本気でやる。


「―――ぅ?」


 少し回復魔法を充てていると意識が戻ったのか、リヒトが目を覚ました。


「ここは・・・?」


「大丈夫そうだな」


 俺は回復魔法を止める。すでにほぼ全快しているからな。


「リヒト、あなたはあのフードの一人に滅多打ちにされたのよ」


「―――そうか。負けたか。少しくらいは体力を削れてたらいいんだけど」


「それであなたが再起不能にでもなったらどうするのよ!」


「すまない。無茶をした」


「本当よ!あなたが死んじゃうかもしれないって思ったら私―――っ」


 おや?これはもしかして・・・。


「関係ないこと聞くようだけど、もしかしてお二人は付き合っているんですか?」


「急に敬語になってどうしたんだよ?ああ、付き合っているっていうか、婚約しているけど」


「ふぁ⁉」


 婚約!そんな幸せ絶頂な人に遭遇していたとは・・・。侮れない、異世界。


「ゴホンっ。すまない。それより、本当に危なかったんだぞ?治療していなかったら最後には死んでいたかもしれない程の傷だった」


 もしかしたら怪しい動きをしているリヒトを消そうとしていたのかもしれないけど。


「ああ。今回の一件が全部終わったら危険なことは出来るだけ避けることにするよ」


「ああ。そうするんだな。―――さて。それじゃ、リヒトがやられたお礼をしに行かなくちゃな」


 流石にやり過ぎだ。勿論、命が軽いこの世界ではこのくらいのことは些末なことかもしれない。俺も人を殺しているしな。でも、ルールを破り、しかも俺と少しとはいえチームになっているリヒトをこんなにまでしたんだ。多少、痛い目に合うくらいは覚悟してもらわないとな。


「タカキ!」


 俺がコロシアムの中央に歩いて向かおうとしていたら後ろからリヒトが声を掛けてきた。


「なんだ?」


「気をつけろよ」


「ああ。大丈夫だ。だから安心して見てろ」


 そう言って俺は中央へと歩いて行く。


「さて。それじゃ、仇を討ちますか」


 いや、リヒト死んでないけどね?こういうのは雰囲気だと思うんですよ。


「それでは第七試合を開始します。アシュラ教、ミスト。前へ!」


 ミストと呼ばれたフードの選手が中央へとやって来る。


「光天教は最後の選手!全てが謎に包まれた男!名前すらも分からない!彼は一体誰なのか!今、それが明かされる!光天教、最強の男!」


 おい。謎だらけ過ぎるわ。そして最後の最強の男って部分。やめて!


「それでは決勝戦第七試合を開始します!両者、準備はいいですね?」


「ああ」

「はい」


「それでは・・・始め!」


 その開始の合図と共に俺は相手の選手が反応出来ないほどの速度で急接近し、殺さない程度に手加減した拳で殴った。


「あぐ―――っ⁉」


 訳も分からず吹っ飛んでいくミスト。


「悪いけど、見せ場とかないよ?さっきの再現ってやつを体験させてやるから」


 例え、知り合い(・・・・)だとしても容赦はしない。どんな理由だろうと、やったことには変わりないんだから。少しばかり、痛い目に遭ってもらおう。




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