第199掌 四回戦 交渉開始
そして迎えた四回戦。
「今回の戦闘形式は五対五の集団戦です。しかし、場所はこの通り、この建物内になります」
今、俺達がいるのは他の建物よりは大きいってだけのコンクリートで出来たビルだ。その最上階で説明を受けている。向かいには対戦相手の光天教。
「このビルから外に出ると失格になるので注意してください」
その後、細々としたルールが説明される。建物は借り物なので、中の物を壊したら弁償。建物自体を壊しても同じ。そんなことをかなり厳重に言われた。細々した部分はそこら辺の注意ばかりだ。
「以上になります。質問などはありますか?」
その質問に両者とも答えない。
「それでは四回戦を開始したいと思います。光天教はこちらの最上階からのスタート。アースラ教のスタート地点は一階の入り口になります。両者共にスタート地点に着いた時点でこちらからスタートの合図をしますので移動を開始してください」
その言葉に従い、俺達は一階へと移動を開始する。
「それで?今回はどうするんだ?」
一階に降りるために階段を下っているとダンガが聞いてきた。
「今回も好きに動いていいぞ。今回は方針とかもない」
「そうか。分かった」
事前にリリアスとダンガ、アメリアには今回の四回戦ですることは伝えてあるのでこれだけ言えば大丈夫だろう。
「それで?私はどうすればいいの?」
「ミスティさんは一階にいてください。俺が魔法を掛けて結界を張っておくので」
「そう」
前回の三回戦で空中にぶん投げたのに何も言ってこなかったのは正直意外だったけど、それだけ大切な用事があの後あったのか、それとも、普通に文句を言うこと自体を忘れているのか。まあ、何も言ってこないならこっちとしてはありがたい。
「それじゃ始まり次第、好きに動いてくれ」
そして俺達は一階の入り口に到着する。すると、すぐにでもアナウンスがかかった。
『両宗教共に所定の位置に着きました。これより四回戦を開始します』
『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』』』
その合図と共に俺達はそれぞれ好き勝手に動き出す。
っと、その前に。
「―――はい。これで結界は張りましたので」
「分かったわ。ありがとう」
「それじゃミスティさん。俺も行きますね」
「ええ。お願いね」
「はい」
ミスティさんに結界を張り、少し挨拶をしてから俺も上の階へと移動を開始した。
「さて。これで交渉を始められる」
結界には音を遮断する効果も追加しておいたからな。俺の交渉が万が一にも聞こえることはないだろう。
「さて。リーダーはどこにいるのかなっと」
いきなり風魔法が飛んできた。それを軽く避けて物陰に隠れる。
「お前がアースラ教のリーダーか?」
「いや?俺はアースラ教に雇われているだけだぞ」
いきなり相手側から接触してくるとはな。好都合だけど。それに、確かに俺は大会内容を考えるにリーダーの立ち位置にいるだろうけど、実際にはミスティさんがリーダーだからな。例え、指揮は俺が執っていて、戦いも俺達が請け負っているとしても。
「だが、お前が一番強いことには変わりない」
「それくらいは分かるようだな」
「分かるさ。同じ何かしらのパーティーを率いるものとしてはな」
「っていうことは?」
「ああ。俺がこの宗教のリーダーだ」
ラッキー。まさか向こうから俺に接触してきてくれるなんて思いもしなかった。
「俺に何か用なのか?わざわざ、すぐに戦いを始めずに話しかけてくるなんて」
「ああ。正直、普通に戦っても、策を弄しても俺達ではお前の宗教には勝てない。だから負けるにしてもお前達が敵かどうかの確認だけでもしておきたいと思ってな」
「敵?」
「そうさ。っと。その前に」
そう言って光天教のリーダーは風魔法で防音の魔法を張った。
「これで話してもよし」
「誰かに聞かれたくない話ってことか」
「その通りだ」
「それで?敵ってどういうことだ?」
「お前はこの大会の裏に潜む闇について知っているか?」
「・・・ああ」
「お前はその闇の仲間ではないよな?」
「そうだな。だが、こんな言葉だけでは信用出来ないんじゃないのか?」
「そんなことはないさ。俺は生まれつき、嘘をついているかどうかが分かるんだ」
「何かの固有スキルか?」
「ああ。戦闘には基本的に役に立たないけどな。嘘を見破ることが出来るスキルだ」
「なるほどな。それで?俺は嘘をついていたか?」
「いいや。そんなことは一切なかった」
「それは良かった」
この防音の魔法、完全ではないな。相手が魔法とかスキルで防音を掻いくぐれば普通に聞かれる。なので俺が追加で防音魔法を重ね掛けしておく。
「時間がないからすぐにでも本題に移るぞ。もし、俺達の頼みを聞いてくれるっていうならこの試合、降参してもいい」
「何?」
「勿論、これから話す内容を聞いて、俺が出した条件を呑めるならだがな」
おいおい。俺が持ちかけようとした話を向こう振ってきやがった。どうなってんだ?
「分かった。話を聞こう。だが、流石に話しているだけだと不自然だからな。軽く戦うふりだけでもしておこう」
「ああ。分かった」
そして俺達は疑われずに話すために戦いを開始するのだった。
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