第193掌 三回戦 移動中
ティータイムをした日から一日挟んでその次の日。
「さて。今回はどんな対戦形式になるんだろうな」
俺は気楽にそんなことを呟く。
「これから行く場所からして大体予想出来るけどね」
アメリアが俺の呟きに返してくれる。
「確かにそうね。はぁ」
ミスティさんが憂鬱そうに同意する。
今向かっているのは街の外。広い荒野のど真ん中に向かっていた。すでに街から出ていて、硬い地面を歩いている真っ最中だ。
「お前ら、憂鬱になるのはいいけど、さっさと行かないと遅刻するぞ」
俺達よりも前にいるダンガが振り返ってそう注意してきた。
「ダンガだって分かるだろ?今回の戦闘形式」
「まあな。荒野のど真ん中で戦闘ってことは総力戦だろ?」
そう。今回予想される戦闘形式は何も障害物のない総力戦だろう。前回の障害物のある街中での戦いとは別。戦争の縮小版みたいなものだ。
「あっちは揃えてくるんでしょうね」
ミスティさんはため息を吐きながらそんな言葉をこぼす。
「まあ、コツコツ地道にやって来た宗教ですからね。繋がりとかはかなりのものになるでしょう」
俺がそう返す。これは俺も参戦かな。流石に今回は前回みたいな二十人だけじゃすまない可能性が高い。もっと数を揃えてくるだろうな。二回戦は宗教の人間が確認しているから情報もあっちにいっているだろうし。
ちなみに、俺達は全員が大会に参加しているので相手の情報とかそこら辺は調べられていない。なんて行き当たりばったりなチームなんだろうか、俺達。
「少なくとも二十人の倍の四十人は用意してくるだろうな。しかも、繋がりが強いってことはそれだけ連携とかもしっかりいているってことだ。前回みたいな奇襲して相手のトップを潰すのはあまり通用しないと考えていい」
「だがよ、タカキ。それだと俺達だけだとキツイと思うんだが・・・」
「だから今回から俺も戦闘に参加するつもりだ」
「本当に?」
ミスティさんが疑いの目で俺を見てくる。
「本当ですよ。みんなも流石に大人数を相手に殺さないように気をつけながら戦うのはまだキツいもんな」
「いや、俺はそこら辺の加減はまだ大丈夫なんだが、リリアスとアメリアは流石にまだ難しいだろ」
確かに。ダンガは長年冒険者をやっていたから大丈夫だろう。精神的にストレスが掛かるかどうかは別にして。
でも、リリアスとアメリアはあまり戦い慣れていない。いや、魔物とかならうっかり殺しても大丈夫だけど、人間相手はなぁ。フォーマス相手にリリアスが訓練したことがあったけど、あの頃はまだステータスもメチャクチャ高いってほどでもなかったからな。
「というわけで俺も参戦な。フォローもするから安心して戦ってくれ」
「はい」
「おうよ」
「分かったわ」
「あの・・・。私はどうすればいいの?」
「ああ。それは大丈夫です」
「え?」
「まあ、始まれば分かりますから。心の準備だけしてもらえればそれでいいです」
「???・・・まあいいわ。それじゃ頼むわね」
「はい。任せてください」
「それはいいが、そろそろ本当に遅刻してしまうぞ?」
ダンガの言葉にふと時間がギリギリになっていることに気が付いた。
「それじゃ、急ぎますか」
「ま、まさか・・・」
「飛びます」
「いやぁぁぁぁぁっ!!?!?」
アメリアが叫んだが、お構いなし。そのまま全員を宙に浮かせて駆け出した。
・・・
「はい。到着」
「うぅ。なんだか恒例になりつつある気がする・・・」
「気のせいだって」
まあ、見ていて面白いから無茶しない程度にたまにやるとは思うけど。
「お待ちしていました。すでに幸聖教の方々は到着されていますよ」
「待たせてしまってすみません」
俺は素直に謝る。例えそれが時間内には集合場所に到着していたとしてもだ。
相手宗教はここに三人しか来ていない。どうやら代表で三人がここに来ているだけで残りの参加者はここから後方に待機しているみたいだ。
「なんか今回の審判は態度悪いわね」
「しー!」
ミスティさんがそんなことをポロッと呟くので慌てて口を塞ぐ。
「まあ、いいでしょう。それでは三回戦を始めます。今回の対戦形式は総力戦です。この何もない荒野で互いの持てる戦力を真正面からぶつけ合ってもらいます」
「はい、質問です」
「はい。何でしょうか?」
相手の選手の一人が質問をする。
「策などは使ってもいいんでしょうか?」
「ええ。構いません」
「分かりました。ありがとうございます」
まあ、ただぶつかり合うだけだとお互いにどうなるか分からないからな。
「それでは開始の合図をするまで所定の位置で待機していてください」
それに俺達も相手宗教も頷き、その所定の位置を聞いてからその場を離れる。
「それで?今回は何か方針はあるの?」
ミスティさんが所定の位置についてから俺に聞いてきた。
「いえ。今回は作戦とか方針とか考えないでいいです」
「え?」
「今回は付け入る隙が少ないので強引にいきます」
「つまり?」
「力で正面突破です。それで蹂躙します」
「だから言い方!」
だから俺の言い方の何が不満なのだろうか。
「ほら、言い争うのはいいから。それより、そろそろなんじゃねぇか?」
「ああ。そうだな」
俺達は開始の合図を待つのであった。
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