第192掌 今更なこと
「そもそも、根本的なことなんだけどさ」
「ん?なんだ?」
それはアメリアの作ったお菓子をみんなでモグモグ食べている時、アメリアが呟いた。
「この大会って何回戦まであるの?」
「え?お前、自分で調べていなかったのか?」
「っていうか、みんな知ってるの?」
ダンガがお前知らないのかっていう表情でアメリアを見る。
まあ、確かに。はっきりと明言してなかったから知らない方もいるだろうな。っていうか、書いてなかったから当たり前だけど。マジすんませんでした<(_ _)>
「おい。今、メタなこと言わなかったか?こういう場で誤魔化そうとしてないか?」
「え?いや?」
ダンガさん鋭いな。っていうか、ダンガのその発言こそメタ発言だと思うんだけど・・・。
まあいいや。それじゃ説明しますかね。
「今回の大会は約二十組の宗教が参戦しているのは前に言ったよな?」
「ええ。実際に開会式で見たもの。ざっと何組いるのかぐらいは確認しているわ」
「正確には二十四組だな」
「それでトーナメント?数が余らない?」
「そこはシードだよ。外シードと内シードを取っているからな」
ちなみに俺達はシードではないが、抽選のクジ運が良かったのか、いきなりシードと当たるなどのことはなかった。まあ、二回戦は普通にシードが相手だったけど。数で押すタイプだったことからも分かるんだが、運でシードになった宗教だ。
「じゃあ、後三回戦わないといけないのね」
「ああ。と言ってもここからはここまでの二回の戦いとは違って戦いは手強いものになってくるぞ」
「私達のところ以外は順当に勝ち進んでいますからね。ここからはその優勝候補相手に戦わなくちゃいけなくなります」
「リリアスの言う通りだ。まあ、やること自体は変わらない。というか、相手が強くなるってことはこっちとしても手加減しなくてもよくなってくるってことだ。そこら辺に気を使わなくてもよくなるぞ。アメリアの固有スキルもあることだしな」
「それなら少し気が楽になるな」
「相手が優勝候補の方が気が楽になるって・・・。私達って相当おかしいところまで来ているわよね」
アメリアが何か疲れた様子で呟く。
「何を今更。それを言ったら俺なんてどうなるんだよ」
「あなたはすでにおかしいっていう次元を通り越して笑えるところまで来ているわよ」
「何それ」
「あなたは笑わないとやってられないくらいの次元の強さってことよ」
「・・・」
納得出来ないけど、納得するしかない。そんな矛盾にも似た感覚が俺を襲う。
「その話は置いておこうぜ。それより、次の相手はどこになったんだ?」
ナイス話題変換だ、ダンガ。この話は分が悪かったからな。
「今回のトーナメントは上手くバラけていて、優勝候補としてミスティさんから挙がった宗教とは戦うとしても四回戦以降になるな」
「そうなんですか・・・。それじゃ次の私達の相手は優勝候補じゃないんですか?」
「ああ。でも、中々期待されているみたいだ。宗教の名前は幸聖教。昔からあった宗教で、地道にコツコツ強くなってきたって感じの宗教だな。最初の出場では一回戦負けの宗教だったらしいんだが、じわじわと強くなってきて、今では三回戦出場常連らしい」
これはミスティさん情報。屋敷に戻ってくる前に聞いておいたのだ。次の対戦宗教のことについて。まあ、それぐらいしか分からなかったんだけどね。他の宗教もハバラス教の妨害工作のことを警戒しているのか、情報統制もしっかりしていた。
「すげぇな。その根性」
ダンガは感心している。
「そうだな。今回、俺達が出なければ次の四回戦に簡単に出場出来たかもしれない」
俺達が戦った一回戦と二回戦。一回戦はまあまあだったけど、そこまで強いと断言出来ないくらいのレベルだったし、二回戦の相手は数が頼りな連中だったからな。地道にコツコツ強くなった幸聖教なら倒せたレベルだろう。まだどんな奴らか分からないけど、話だけならそのくらいの強さはありそうだ。
「なんか、罪悪感がありますね」
「俺もだ。申し訳ない気持ちになって来た」
「そこは割り切るしかないわね」
リリアスとダンガはしんみりした感じだな。逆にアメリアはこういうことに関しては気持ちの整理が得意だ。
「そこまで割り切れるなら俺の名前も早く言えるようになれよ」
「そ、それとこれとは話が違うわよ!」
俺のいない所では普通に呼べてるのに。
「まあ、もう少しっぽいし、軽い気持ちで待っとくわ」
「そうしてもらえるとこっちも気が楽だわ」
話の脱線が自分でしかも、未だに呼べない名前のことに関してだったことに焦ったアメリアは、俺が話しを切り上げたことにあからさまに安堵している。
「まあ、中休みみたいなものが挟まって次の三回戦は一日置いた明後日だ。だからそれまでにその罪悪感をどうにかしてくれたらそれでいい」
「・・・はい」
「・・・ああ、すまんな」
「気にすんな。もしもの時のフォローは俺がするから」
「そうはならないように頑張りますから!だから安心してください!」
「お、おう」
急に力強くなったリリアスにちょっとビビる。
「まあ、タカキが自分のフォローするって言われたら、リリアスならこういう反応になるだろうな」
「ええ。普通に予想出来たことね」
二人が何やら呆れた様子で話していたが、何故かやる気を出したリリアスを相手にしていたのでそっちに意識を持って行くことが出来なかった。
そんなわけで俺達のティータイムは過ぎていくのだった。
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