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第191掌 大会で有利なスキル 審判



 二回戦も終わり、教会に戻った俺達は各々の自由時間に入った。俺が「思ったよりも早く二回戦が終わったことだし、早めに休もう」と進言したことにより、みんなはそれぞれ、今日を好きにしている。


 そんなわけで俺はオークスの屋敷の自室に戻ってゴロゴロしていたのだが、部屋のドアがノックされた。


「はーい」


「タカキ。ダンガだ」

「リリアスです」

「私もいるわよ」


 どうやら三人共いるようだ。


「どうしたんだ?」


「今日のことでちょっとな」


「ああ。アメリアの審判についてか」


 俺の言葉に三人が頷く。


「事前にああいうことが出来るっていうことは教えてもらったけど、私としてはよく分からないままなんだけど」


 おいおい。使用者がそんなんでよく審判スキルを使用したな。


「だから、今後も安心して使用出来るようにちゃんとした理由を教えて」


「ああ。分かった。それじゃみんな座ってくれ。説明を開始するぞー」


 俺は三人を部屋の中に入れて座らせる。そして早速説明を開始する。


「まずは注意を」


「注意、ですか?」


 リリアスが不思議そうに首を傾げている。


「ああ。アリエス教国に来た時に言ったけど、この大会は審判スキルの劣化版とも言える合同魔法を使用している」


「はい。そんなこと話しましたね」


「ああ。だから今後も使用するなら細心の注意をする必要がある。審判スキルを使っているとバレれば厄介だからな」


 アメリアだけでなく、リリアスとダンガまでもが深刻そうに頷く。


「よし。それじゃ、説明を始めるぞ。いいか?そもそも、以前、説明した審判の特性を覚えているか?」


「より悪いことをしようとした相手に厳しい罰が与えられるってやつだろう?」


 ダンガがギリギリ覚えているって感じで聞いてくる。


「ああ。ちゃんと説明すると、相手の善悪に関してある強制力が働くってやつだな」


 フェルゲンで説明して以降、あんまり話していなかったからな。覚えているかどうか怪しいのは仕方ないことだろう。


「今回、この大会ではあまり善悪というものが存在しない。というか、関与しない」


「じゃあ、なんで使えるんだ?」


「それはこの大会の裏での事情が関係しているんだけど・・・」


「裏の事情?」


 リリアスが不思議そうに再び首を傾げる。


「まあ、それはもうちょっとしてから話すよ。まだ確証があるわけじゃないからな」


「はぁ。分かりました。ちゃんと話してくれるならそれでいいですけど」


「それじゃ、話を戻すぞ。そんなわけで裏の事情があるのでその事情に関係している奴以外は善と言えるわけだ。勿論、俺は予想しているだけで、発動条件は曖昧なままだからはっきりとは言えないけどな」


 なんだよ、神様基準って。疑似神眼スキルもまあまあのいい加減具合だよな。


「つまり、この大会の出場者は、裏事情に関係ない奴以外は審判スキルの善の対象者になるわけだ」


「はい。それは理解出来ます」


 リリアスは相槌を打ってくれているが、当人であるアメリアがあまり話に入って来ない。多分、俺の話を真剣に聞いて覚えようとしているからなのだろう。自分の固有スキルだからな。理解はきちんとしておきたいわけだ。


「つまり今回、審判スキルを使うとどうなると思う?」


「「「???」」」


「答えは二重の意味で審判スキルが発動するってことだ」


「二重の意味?」


 今度はダンガが意味不明って感じで首を傾げる。リリアスとアメリアも同じ様子だ。


「俺達は相手にもしものことがあって殺したりしたくはない。勿論、大会で負ける的な意味で」


「はい。そうですね」


「だが、手加減する側である俺達としてはストレスでしかない。それに通常以下の実力しか発揮出来ないわけだ。ここまではいいな?」


 俺の確認に頷く三人。


「そして、審判スキルは相手にも発動する。そして、相手側も善として発動するわけだ。そうなると、どうなるか。答えは戦闘にはスキルは発動しない、だ」


「発動しない?」


「戦闘には、だけどな。お互いに同じような効果で発動しているから打ち消し合うんだよ」


「なるほどぉ」


 ダンガがアホな感じで納得している。


 何だろうか、この意味もなくこみ上げてくる地味なムカつきは。いや、これは以前、日本にいた頃、友達とのメールのやり取りで似たようなことがあった。その時のことを思い出したせいだな。あの時は物凄い自慢を受けたんだよな。高校生でテレビに出たとか何とか。それでムカついたからそのまま同じようにクラスの連中と一緒にテレビ出演してやったんだった。懐かしい。


「それで、発動しなかった審判スキルの効果はどこに行くか」


 打ち消し合うってのは言葉の綾だ。


「それは戦闘以外のことに反映されるんだ。厳密にいうと身を守ることに、だな」


「身ってことは自分の身ってことですか?」


「いい質問だね、リリアス君」


「急にテンション変えるなよ・・・」


 ダンガ君。そういうツッコミはナンセンスだよ。シリアスな空気が続いたから空気の入れ替えしただけなのに。


「ゴホンッ。この場合の身ってのは相手側だけだな」


「相手だけですか・・・。私達には?」


「発動していない。っていうか、俺達の分も相手に発動しているんだよ」


 利害の一致ってことだな。スキルが利害の一致をするのはよく分からない感じがするけど、神様判断の弊害とでも思っておけばいいか。


「俺達は相手を殺したくない。相手は殺されたくない。勿論、相手側はそんなことは考えていないけど、ちょっとでも死の気配を感じ取れば無意識に思うはずだ。死にたくないってね。だからそっちにスキルの効果が発動するのさ」


「なるほどぁ。だから二重の意味ってことか」


 だからヤメロと言うに。


「納得したか?」


「ええ。ありがとう。これでまた一つスキルの使い方が分かったわ」


「それなら良かった」


「それじゃ、残りは自由時間を満喫しましょうかね」


 俺は再びゴロンとベッドに転がった。


「ちょっと待って。お菓子作ってるからリビングに来て」


「はい」


 アメリアさん。間髪をいれずっすね。行きますけど。




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