第188掌 二回戦 奇襲
奇襲から逃れて移動中の俺はとりあえず、飛行して全体を見通せる空中に留まった。
「ちょっと!危ないわよ!落ちたらどうするつもりよ!私は飛べないのよ!っていうか、なんでこんな高い所まで飛んでるのー⁉」
テンパって何が何だか分からない感じになっているミスティさん。
「ちょっと!本当に危ないですから暴れないでください!落ちちゃいますよ!」
ジタバタと暴れるもんだから本当に担いでいる俺からミスティさんが落ちてしまいそうになる。それを何とか落とさないようにしっかりと捕まえることで防ぐ。
「ヒャッ⁉わ、分かった!分かったから変なところ触らないで!」
「え⁉」
「お、おしり!おしり触ってる!」
「おわっ!ご、ごめんなさい!」
余りにジタバタと暴れるからどこがどうとかのことを深く考えずに捕まえていた。こんなハプニングは俺に求められているものじゃないと思うんだが・・・。
「まったく、もう!それで?これからどうするつもりなの?」
冷静さを何とか取り戻したミスティさんは俺にそんなことを聞いてくる。
「とりあえずはここでダンガとリリアスが敵の数を減らしてくれるのを待ちます」
「あれ?アメリアは?」
「気付きませんでした?アメリアはスタート地点に着いた時からいませんでしたよ?」
「えっ⁉うそ⁉」
「いや、隠してもいませんでしたけど・・・」
っていうか、五人いる中で一人いなくなっていることに気が付かないってどうよ?
「それじゃ、アメリアはどこに行ったの?っていうか、始める前から動き出していてもいいの⁉」
「ルール説明でそんなこと言われていませんでしたよ。っていうか、ダメならそう言うでしょ。現に相手もそれで奇襲を仕掛けてきたんですから」
まあ、流石に誰かがスタート地点にいないといけないが、誰か数人が抜けても文句は言われないだろう。
「それと、アメリアがどこに行ったかですが、アメリアには偵察に出てもらっています」
「偵察?」
「はい。これは闇雲に戦っていても消耗戦になるだけですから。一気に叩いた方が得策です。となるとまず狙うのは―――」
「相手側のリーダーってこと?」
「そういうことです。これなら命令系統はぐちゃぐちゃになりますし、こっちは大分やりやすくなります」
「なるほどねぇ」
うんうんと何度も頷きながら納得するミスティさん。
「それはいいけど、私達はこれからどうするの?」
「え?何もしませんけど?」
「え?」
「戦う前から言っているじゃないですか。俺達っていうか、俺は隠し玉、切り札としておく。そのために戦わないって」
「でも、相手は二十人よ⁉いくら戦わない、切り札だとしても、これは三人でどうにか出来るレベルじゃないわよ⁉」
「それも言ったでしょ?誰にもバレない程度に支援はするって」
「え?」
「現にホラ。助けているでしょ?」
そう言って視線を戦いが起こっているだろう場所に向ける。
「いや!遠過ぎて私には何が起こっているか分からないんですけど!」
「仕方ないですね。っと!これでどうです?」
そう言って俺は空間魔法と闇魔法でテレビ中継のような感じでダンガとリリアスが戦っている場所を映し出す。
「何これ⁉」
「魔法の応用みたいなもんです。気にしないでください」
「気にするわよ!」
「いいですから。ホラ、見てください。ダンガとリリアスの一回の攻撃で何人も攻撃が当たっているでしょう?あれは俺が魔法で支援しているんです」
「どんだけハイスペックなのよ、あなた・・・。こんなことやってのけた人なんて見たことないんですけど・・・」
「気にしないでください。そういうこともこの大会で優勝したら教えますから」
さて。ダンガとリリアスの方はこれで大丈夫っと。アメリアの方は上手くいっているかな?ちょっと覗いてみるか。
俺は空間魔法を目に合わせるようにして使う。メガネみたいな感じで展開しているから夢中でダンガとリリアスの方を見ているミスティさんは気が付かない。
っと。ちょうど、アメリアが敵に出くわしているみたいだな。相手は―――あの二十人近い集団みたいな冒険者って感じの服装じゃないし、信徒か。
「見つけたわよ。早速、片付けさせてもらうわ」
物陰に隠れて様子を窺っていたアメリアがニヤリと笑う。
「しかし、タカキも無茶言うんだから。あんなに移動中、急に別行動しろとか言われたらこっちは困るのよね。そういうことは事前に言っておいてもらわないと」
それはすみませんでした。あと、俺とかがいないと普通に俺の名前、呼べるのね。もう、いい加減普通に呼べばいいのに。いい加減、しつこいと思われるよ。誰とは言わないけど・・・。あ、俺じゃないよ?
「数は二人の信徒に護衛が三人の合計五人ね。まずは信徒から狙わないとね」
うんうん。その選択は正しいぞ。護衛から倒していたら逃げられるかもしれないしな。
「―――ッシ!」
そしてアメリアは短剣を投擲。
「うっ!」
「あが!」
「よし。信徒二人は仕留めたわ。後は―――」
「な⁉奇襲だ!雇い主二人がやられた!」
「くそっ!とりあえず、奇襲した奴を倒すぞ!」
そう言って護衛三人はアメリアを探すために辺りを探り出す。
「甘いわね」
三人はそれぞれそんなに離れてはいないが、別行動を取ってしまった。それではこちらの思う壺だ。
アメリアはスピード任せに駆け抜け様に三人を短剣で斬りつけ、それぞれ各個撃破していく。
「これでタカキからの頼み事は完了ね。後は二人に合流しなちゃ」
そしてアメリアはリリアスとダンガに合流すべく、その場から離れるのだった。
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