第183掌 一回戦 第三試合
次はアメリアの番だ。
今回の第一回戦のルールは五対五の通常のバトルだ。つまりは先に三回勝つことが出来た方の勝ちになる。
ということは・・・だ。ダンガ、リリアス、アメリア。この先鋒、次鋒、中堅が勝てば、後の副将と大将は戦わなくてもいいということになる。なんで剣道とかの呼び方になっているかというと、分かりやすいからだと思う。
ミスティさんを戦わせることは正直したくない。実力が俺達よりも下ということは今までのやり取りで分かっている。ならばより確実に勝てる俺達で出来るだけ稼いでおくべきだろう。
しかし、自分で言うのもアレだが、俺はこのチームの中で一番強い。なら何かしらのイベントというか、アクシデントが起こるだろうことは今までの異世界生活で分かっているので俺を隠し球にする。これで危険な場面や負けそうな場面になった時点で俺は相手に大きな影響を与えることが出来る。
「お疲れ」
「はい」
リリアスが俺達の所にまで戻ってきたので労う。
「す、すごいわ!ダンガは正直、見た目通りだったからそんなに驚かなかったけど、あんなにあっさり相手を倒しちゃうなんて」
戻ってきたリリアスにミスティさんが駆け寄っていき、リリアスの手を両手で掴んでブンブンと上下に振る。
結構興奮していますな。
「あ、ありがとうございます。でもまだ一回戦に勝てた訳ではないので落ち着いてください」
タジタジになりながらもそう言ってミスティさんを落ち着かせようとするリリアス。
「そ、そうね。ごめんなさい」
そう言って、落ち着いたのか、リリアスの手を離して息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
まあ、次もアメリアの勝ちだろうからもう勝ったも同然だろうけどな。
「ほら、二人とも。そろそろアメリアの試合が始まるぞ」
ダンガがそう言ってリリアスとミスティさんに試合を観るように促す。
「あ、はい」
「そうね。これで勝てるかもしれないんだから観ておかないと」
リリアスは恐縮そうに返事をするのだが、ミスティさんは特に気にせずに開き直るかのようにアメリアの方に目を向けた。
「これより第三試合を始める。アースラ教代表、アメリア」
「はい」
「デボラス教代表、ミダス」
「・・・ああ」
向こうはなんか大人しそうっていうか、テンションが低そうな奴が出て来たな。
身長もアメリアと同じくらいだし、体つきもちょっと筋肉が付いているくらいだ。目もダルそうに半目になってるし。
「両者、準備はいいですか?」
「ええ」
「・・・構わない」
「それでは、始め!」
審判の合図と共に第二試合が開始される。
「いくわよ!」
審判の合図の後にすぐ。アメリアは攻撃を仕掛けた。
アメリアの戦闘スタイルは短剣術をベースにした近距離スピードタイプの格闘スタイルだ。ミダスに接近し、両手に持ったダンガの造った二つの短剣で細かに斬り込んだ。
「・・・ふっ」
それをミダスは避ける。
「なっ⁉」
アメリアは速攻で決めるつもりだったのだろう。避けられたことに動揺している。
「アメリアの攻撃をあんなに躱すなんて・・・。すげぇな。もしかして、アメリアよりも強いのか?」
ダンガが驚いたかのように呟く。
「いや、そういうわけじゃないな。あれは近接格闘にスキルやステータスを極振りしているんだろう。だから接近戦でアメリアの攻撃を躱すことが出来ているんだ」
レベルとかが自分より上なら、アメリアも油断はしなかっただろう。それが出来るだけの戦闘はこなしてきているはずだ。それがないということは、スキルで能力を底上げしているってことなんだろう。
『おおっと!アメリア代表の高速攻撃を易々と躱していくミダス代表!流石はバーサーカー!』
「???」
バーサーカーってなんだよ。あいつの二つ名か?
「タカキさん。バーサーカーっていうのはスキルや魔法が近接戦闘に特化した人の総称みたいなものです」
おお!流石はリリアス先生。俺がよく分からないといった表情をしていたことを即座に気付いて説明をしてくれる。
「なるほどなぁ。ということは、アメリアには相性が悪い相手ってことになるな」
「・・・はい。そうなりますね」
「えっ⁉勝てないの?」
俺とリリアスの会話を聞いて、不安そうになるミスティさん。
「いや、勝てないわけではないですよ」
俺は不安そうにしているミスティさんに答える。
「ただ、アメリアの戦闘スタイルではやりにくいってことです。見てください。今もあのミダスって奴はアメリアの攻撃を避けているでしょ?」
「ええ。私には何をしているか分からないくらいには速い攻撃なのに、それを避けているわね。あれってヤバいんじゃないの?」
「いいえ。確かにアメリアの攻撃を避けられるというのは凄まじいことですが、それでもステータスで勝っているだろうアメリアの勝ちです」
「え?」
「ステータスが違うということはアメリアの方が体力の方も上ということです。それにあのスピードで繰り出されるアメリアの攻撃を避け続けるということは、それだけ体力を消費していくということになります」
「・・・確かに。あのミダスって人は顔から汗が滲んできているわね」
そう。アメリアの攻撃を避け続けているが、それだけなのだ。あのミダスは避けることにリソースを割き過ぎていてアメリアに攻撃出来ていない。
「それに最初の様子から見るに、あのミダスって奴は結構な面倒くさがりです」
「それに何か意味があるの?」
「「もうここまででいいや」という諦めに繋がります。だからそろそろアメリアの攻撃が当たり始めますよ」
俺がそう言った矢先、アメリアの短剣がミダスの顔を掠めた。
「ホントだ!」
「ああなったらそろそろアメリアも決めに掛かると思います」
っと。アメリアが速度を少しだけ上げたな。段々アメリアの攻撃が当たり出した。それにミダスの顔にも諦念が現れ出した。
そこでアメリアが勝負を仕掛けた。
「――シッ!」
一瞬だけさっきまでの速度の倍の速度にギアを挙げてミダスの背後に回る。
「・・・うっ」
アメリアが背後からミダスの背中を蹴り、前方に吹っ飛ぶミダス。
「決めるわよ!」
アメリアはそのまま吹っ飛んでいるミダスを追いかける。
「セヤァ!」
追いついたアメリアがミダスを再び蹴り、上空へと蹴り上げる。
「うぁ――――」
呻き声と共に上空まで蹴り上げられたミダスは重力に従って下へと落下する。
「トドメよ!」
アメリアは落下してくるミダスの腹に目掛けて拳を突き出す。
「ガハッ!」
そしてそれに直撃したミダスはアメリアに攻撃の後に抱えられた。どうやら気絶しているらしい。中々にエグかったな。追撃のオンパレードだったじゃねぇか。まあ、相手もバーサーカーなんて呼ばれているんだから大丈夫だろうけども。
そこに慌てて審判が駆け寄る。
「ミダスの気絶を確認!第一試合、アースラ教代表、アメリアの勝利とする!」
『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
決まったな。結局、あのミダスって奴のキャラは掴み切れなかったけど。まあ、いっか。
「この第三試合の勝敗により、3-0でアースラ教の勝利が確定した!これで一回戦を終了!二回戦出場宗教はアースラ教とする!」
『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
よし。俺とミスティさんは出ないで済んだな。
「次の二回戦は明日ね!今日は勝利祝いで騒ぐわよ!」
俺達はその後の対戦相手への挨拶などを終わらせた後、テンションの高いミスティさんに連れられて教会へと戻るのであった。
テンションが高いのはいいけど、リリアスやアメリアに抱き着いたまま移動したりしないでください。今は街に人が多いし、そうでなくても恥ずかしいんです。一緒にいる俺やダンガの身にもなってくださいな。
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次の更新は1月10日になります。
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