第180掌 一回戦 開始
『さぁ!始まりました!アリエス教国一の大きなお祭り!宗教抗争!各会場では中々の緊張感が漂う中、今いるコロシアムでは観客の皆さんかなりの熱を感じますね!』
司会なんかいたのか・・・。知らなかった。っていうか、お祭りって言っちゃってるし。
『でも、私の話なんか長々としているとブーイングされちゃうだろうから、司会者としてはどうかと思うけど、早速始めちゃうよ!それだけ宗教国家の国民が怖いってことで納得しておいてくださいな!』
いいのかよ、司会がそんなこと言っちゃっても。
『それでは始めたいと思います!皆さん、各々好きな争いを見られるということで各会場に観戦に行っている中、こちらにいらしたということは今回の二チームに注目しているんでしょう!では!早速代表者入場といきましょう!』
なんか運動会とプロレスを混ぜたような司会者だな。まあ、いいや。そんなことより今は大会に集中だ。
『まずは代表者達の紹介だ!右から出て来るは、デボラス教代表者、ミダス、オルフェス、ビビシャス、オーバンズ、ウェルバーの五人だー!』
その紹介と共に五人の男たちがコロシアム中央へと入場していく。
この宗教抗争・・・いや、もう思うのも面倒なんで大会っていうけども。ここまで明確に示していなかったけど、この大会、最低人数が五人なんだよな。だからミスティさんも代表者を探していたんだし。そういうわけで、俺達はギリギリだったわけなんだが。
ここに来る前に運営側から説明してもらって知ったのだが、今回は普通に順番に一対一で戦っていき、先に三回勝った方が勝ちという極々シンプルなルールだ。
まあ、相手の力量はまだ分からないけど、ミスティさん以外のメンツなら普通に勝てるだろう。大ポカさえやらかさなければ。
「さて。一回戦開始だな」
俺は仲間達に呼び掛ける。
「これも今後のいい経験になるだろうし、自分の経験値として存分に吸収していこう!」
「「「おお!」」」「おー」
仲間は気合十分に。ミスティさんだけちょっとテンションに乗り切れずに。
『では、次にこのデボラス教の対戦相手の紹介に移ろう!』
よし!出番だ!
『次に入場するは、今回初出場の宗教!』
ってあれ?そういえば、俺達、ミスティさんの所の、ひいては俺の上司の宗教の名前のこと知らないわ。ヤベッ。自分の属する宗教の名前すら知らないなんてアホ過ぎるにも程がある。ま、まあ大丈夫だろう。ここで呼ばれるんだから。
『その名はアースラ教!』
おお。そんな名前だったのか・・・。まあでも、安直っちゃあ安直な名前だよな。地球神であるあいつの宗教。地球は英語でアースだし。まあ、名前のことに関しては俺にとやかく言う権利はないんだけどな。俺もパーティー名を自分の固有スキルの英語を使っているし。
『この宗教は今まで存在こそしていたものの、最低参加人数を満たしていなかったがために宗教抗争に参加することが叶いませんでした。しかし、今回は違う!ついに、ついについに参加が叶いました!さあ、代表者達の入場です!』
なんか大げさなナレーションだな。聞いてるこっちが恥ずかしいわ。まあ、呼ばれたことだし、恥ずかしがっていないで行くとしますか。
仲間達がナレーションに恥ずかしがっているので俺は先頭に立って歩き出す。
「本当はミスティさんに先頭を歩くのはやって欲しいんですけど・・・」
「あんな恥ずかしい紹介の後に先頭に立って歩けるわけないでしょ!」
「す、すいません」
明らかに逆ギレなんですけど・・・。そんなに怒らなくてもいいじゃん。
「よし。行きますよ」
そして俺達は入場ゲートを潜ってコロシアム中央へと歩いていく。
「お前らが一回戦の相手か・・・」
中央まで行くと対戦相手のデボラス教の代表者の一人が話しかけてきた。
「ええ。そうです。よろしくお願いしますね」
「ハッ。こんな弱そうな奴と女が三人。強そうなのは精々そこのデカいあんちゃんだけだろ。警戒するまでもないな」
そこにもう一人の代表者の一人が入ってくる。
「なによ!むしろ、あんたたちなんてこっちとしては踏み台ぐらいにしか考えていないんだから!」
ミスティさんが挑発してきた相手に向かって噛みつく。
「なんだとッ⁉喧嘩売ってんのか⁉」
いや、そっちが喧嘩売ってたんじゃん。
「そっちが先に喧嘩売ったからこっちが買ってあげたんでしょ!」
「まあまあ。ミスティさん落ち着いて」
「オルフェスも落ち着いてよ。そうやって毎回毎回対戦相手に喧嘩売るの、悪い癖だよ?」
向こうも俺と同じように抑え役がいるみたいだな。あっちにもそういう人がいてよかった。このまま戦いに突入してもミスティさんが独断専行しかねないからね。こっちだけ止めてもずっと喧嘩売られ続けたらこっちも堪ったもんじゃないし。
「両宗教ともお静かに!始めますよ!」
「「は、はい!」」
「「ふぅ。やれやれ」」
ミスティさんとオルフェスは運営側の審判に注意されてビクッとなり、俺とオルフェスを止めた人物はため息を吐きながら呆れるのだった。
「ではいいですね?双方、礼をして」
言われた通りに一礼する。
「それでは最初の代表者だけ残して残りの代表者の皆さんは両入場口までお下がりください」
こっちの最初の代表者はダンガだ。やっぱり最初の戦いはインパクトが必要だからな。見た目強そうなダンガに任せるとしよう。そういうことになったのだ。見た目弱そうな俺とかリリアス、アメリアが最初でも良かったんだが、いきなり俺が出て警戒されても困るし、緊張しているリリアスとアメリアに一番最初の戦いを任せるのは少し酷だ。
「任せたぞ、ダンガ」
入り口で呟いた俺の言葉が届いたのか、ダンガは俺を見て力強く頷いたのだった。
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この回で今年の更新はおしまいになります。
今年スタートしてから「コンプリートグラスパーの異世界冒険 ~探しモノを求めて世界漫遊~」にお付き合いしていただき、ありがとうございました!
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それではまた来年、お会いしましょう!




