第174掌 まさかそんなに多彩だったなんて・・・
オークスに転移した俺達はアネッサさんに会いに再びギルドへと来ていた。
「―――――はい。これで手続きは終了になります。これより、リリアスさん、アメリアさんはD級冒険者、ダンガさんはB級冒険者に昇級しました」
「試験とかは必要ないの?」
俺がちょっと気になったことをハルさんに聞く。現在、俺達は受付でハルさんに昇級手続きを受けている。
「はい。必要ないですよ。だって、リリアスさんもアメリアさんも倒したモンスターの報告をされていないだけでかなりの高ランクモンスターを倒していることが予想出来ます。それにダンガさんも階級は二人よりも上ですが、それは同じことが言えますので。それに今回のトータルドラゴンの討伐依頼はAランクでしたからね。それをパーティーでとはいえ、受けたことも昇級の助けになりました」
「なるほどね。まあ、俺と一緒に色々と高ランクモンスターと戦っているからな」
「そんなに当たり前のように言われても」
ハルさんが残念な人を見るようにして俺を見ている。失礼な視線だな。
「あ、そうそう。アネッサさんに頼み事をしたいんだけど、またいい?」
「え?ええ。いいですけど・・・」
そのハルさんの表情には「またか・・・」という気持ちが伝わってくるような苦い表情だった。
確かに、今回はアネッサさんへの頼み事が多い気がしないでもない。というか、結構頼っていますね。申し訳ないです。
「それじゃ、アネッサさんの所に行きますか」
「そうですね。それじゃまた私もついて行きますね」
そしてアリエス教国に行ってから三度目となるアネッサさんの元に行きますのコーナー。
「ちわーっす」
「ちわーっすじゃないわよ!ついさっき何もないって言ったそばから、なにもう来てんのよ・・・」
呆れたような、疲れたような声色でため息を吐きながらアネッサさんが俺に文句を言う。
「いや、あれは依頼のことであって、今回は違う用だ」
そもそも「依頼はない」って言っただけです。っていうか、俺もこんなに早くアネッサさんに用事が出来るようになるなんて思いもしなかった。まさかないって言ったそばから用事が出来るなんて。
「それで?どんな用なの?」
「あれ?もう文句はいいの?」
アメリアがアネッサさんに聞く。
「ええ。これ以上は時間の無駄だからね」
無駄と思われている俺。ちょっとショボンとしてしまう。
「だから早く話しな」
「はい」
それから参加申請をした時のことを話す。リリアス達がいるので契約用紙のことについては省いて話した。正直、アネッサさんにはこのことを話そうかどうかを悩んだけど、それはやめておく。一応、国が絡んできているからな。こういうのはハフナーさん達に話すならばともかく、一つの組織として独立しているギルドにこういう情報を流すのはやめておいた方がいい。もし話すとしてもこの件が全部終わってからだな。
「なるほど。つまり、国からの本人確認がギルドに来たら上手く誤魔化して欲しいということね」
「ああ。頼めるか?」
「ええ。そのくらいならね。その代わり、アリエス教国でのゴタゴタが全部終わったら正体とかを国とあっちの冒険者ギルドには明かしてよ?いつまでも誤魔化しておけるわけじゃないんだから」
この場合の正体とは「狂った死神」とか「黒の英雄」のことだな。そらそうだ。神の使徒だと明かしたらいくら国とギルド相手でもすぐに情報があちこちに広がってしまう。だからわざわざ個人に絞って協力者とかを得ているんだから。まあ、アルナスさんの件は予定外だったけどね。本来ならオークスでの協力者はベルモンドさんだけのはずだったんだから。
「分かってる。全部勝ったら新教皇の挨拶の時にでも時間貰って正体明かさせてもらうわ」
「狂った死神」だけなら逆に言わない方がいいかもしれないと悩んだかもしれないが、俺には幸か不幸か「黒の英雄」という二つ名もある。それに新教皇の挨拶の頃には「狂った死神」の偽物もどうにかした後だろうからな。
「そう。それならこちらとして何も言うことはないわ。くれぐれもその時まで正体がバレないように気をつけてよ?」
「ああ。了解した」
さてと。これで偽装工作の方は大丈夫だな。後やることとかあったかな?
「そういえばあなた達、宗教抗争の戦いの種類のことは知ってるの?そんなに余裕ならもう対策とか立てているとは思うけど」
「・・・え?」
俺の洩らした声でその場が凍った。
「まさか・・・考えてないの?」
「っていうか、トーナメントとかで戦うだけじゃないの?」
一応は裏の抗争なんだからそんなに多種多彩なものがあるなんて思いもしなかったんだけど・・・。
「団体戦、個人戦、勝ち抜きなどの種類があるわ。ルールも様々なものがあって、フィールドもそれに適したものになるのよ」
何?その大規模な大会。何度も言ってるけど、これって一応は裏の抗争なんだよね?こっそりやるから裏って言われてるんだよね?なんでそんなに派手なの?
「あまりの多彩さに裏の抗争なんて規模ではなくなり、様々な人が知る所となり、そしてどうせこんなに派手なら観戦させてお金を稼ごう、観光の一つにしようってことになったの」
そんな流れだったのか。まあ、目立ち過ぎだったからな。そういう意向なら俺に文句はない。
「でも何も考えてなかったのなら、ここでこんなに話している場合じゃないでしょ。早く戻って作戦とか考えないといけないし」
アメリアさん、言葉に棘がありますよ?考えてなかった俺が悪かったですけど。
「ああ。さっさと戻るか。行くぞ、タカキ」
「そうだな。それじゃアネッサさん。これで失礼するよ」
「ええ。頑張ってちょうだい。私の偽装工作が無駄にならないためにも」
「ああ」
そして俺達は急いでミスティさんのいるアリエス教国へと転移して向かうのだった。
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ちなみに宗教抗争の種類ですが、作者の貧困な想像力ではそんなに色んなルール出てこないかと思われます。
なのでタカキ君達の参加するものだけになる可能性が大いにあります。
その点はご了承ください<(_ _)>




