第165掌 どこも一緒
それから。
東側の教会をある程度見て回った俺とリリアスは休憩として人気のない街の外れに来ていた。
「しかし、予想通りというかなんというか・・・」
「あ、あはは。普通でしたね」
トボトボという言葉が一番合っている歩き方をしながら俺の呆れた様子の呟きにリリアスが苦笑いで返す。
俺達が見て回った教会は全て、誰もが想像するような神に祈りをささげることやその宗教にある聖書の朗読、聖歌の合唱などばかりであった。宗教抗争に参加するための訓練など誰もしていなかったのだ。
つまり、隠れて訓練などをしているのか、もしくは代理を立てているのかといったところだろう。隠しているのなら見学に行ったところで見せてもらえるはずもないし、代理を立てているのなら教会を見学しても意味がない。
恐らくは代理は冒険者なのだろうとは思うのだが、かなりの数がいる冒険者の中の代理人を探すのはほぼほぼ無理な話だ。それにここで初情報だが、宗教抗争には代理人は許されているが、必ず一人は属している宗教の関係者はいることとなっている。だからこの教会巡りが全くの無駄と言えばそうではないのだが・・・。
「それにどこも似たような宗教ばかりだったな」
「確かにそうですね。これならわざわざ争わなくてもいいのに」
「まあ、誰もが自分のところが一番だと言いたいんだろう。それに権力も持ちたいという気持ちも持っているはずだ」
最初に見た創造教と他の宗教はどれを見比べても似たようなものばかりだったのだ。
聖書に記されていることも似てたし、戒めみたいなものもほとんど一緒だったし。違ったのは服装だけだ。
創造教の服装は白色の神父、シスター服。他は灰色だったり、青色だったり、奇抜なところで黄色だったりした。
「しかし、あんな服装だけカラフルにしていて俺的には目がチカチカするんだけど」
「あれは崇めている神が司っているものを色で表しているらしいですよ?」
「他の宗教と自分の宗教とを区別しているだけだろう。自分のところはあそこの宗教とは違うんだと」
「そうですね。崇めている神が違ったら聖書の内容や戒めとかも違うはずですし」
「あーあ。これなら創造教以外のどこが勝っても俺達的にはどこも一緒じゃん」
「第二案でいきます?」
「あとどれくらい行ってない教会、残ってたっけ?」
「あと三つですね」
「第二案でいくかどうかはダンガたちの方がどうだったのか分かってからだな。それじゃ残り三つ、キリキリ消化していきますか」
「はい!」
休憩も終わりとばかりに立ち上がってそう言う俺。リリアスも俺に続いて立ち上がる。
残り三つ。望み薄だけど他とは違う宗教だといいな・・・。
・・・
トボトボと教会から出てきた俺とリリアス。その表情は控えめに言っても暗かった。
「・・・ダメだな」
「・・・ダメでしたね」
三つの内の二つを見学し終えた俺達は見るからにテンションを落としていた。
「パクってんじゃねえかってぐらいに一緒だったな」
「なんでみんな同じなんでしょうね。普通ならこんなに宗教があるなら光の神とか闇の神みたいに崇める神ぐらいは違っていそうなのに」
「そこら辺はうちのバカ神か、敵側の神か神の眷属に聞いた方が早いだろうな。答えてくれるかどうかは分からないけど」
「まあ、タカキさんと神様との会話を聞いているとそうですね」
「それに今は連絡が取れなくなっているからな。まあ、今は気にしなくていいだろう」
「はい」
「それより、最後だ。サクッと終わらせよう」
すでに俺の中では期待も何もない。ただ最後だから早く終わらせてダンガたちと合流したいだけだ。
これで最後の教会が当たりだったら今までの教会巡りは何だったのかとぼやきたくなることだろう。まあ、最初に当たりの教会に巡り会えていたとしても全部の教会を見て回っていただろうから結果は変わらなかっただろうが、こういうのは気持ちの問題なのだ。
俺達はそのまま最後の教会へと向かった。
十分ほど歩いて行くと最後の教会に着いた。
・・・着いたはいいけど、ここって本当にやってるの?ボロッボロなんですけど。
所々白いペンキも剝がれているし、落書きもされている。それを消すために上から白いペンキを塗った跡がある。しかもその白いペンキが剥がれて落書きが見えている。それに敷地内にゴミが投げ入れられているし、草も育ちまくっている。むしろ、ゴミとかを隠すためという意味もあって草刈りしていないのかもしれない。入り口の扉も外れかけている。
「た、確かに凄いですけど、やっているはずです。さぁ、入りましょう」
「お、おう」
俺はリリアスに促されて渋々教会の中に入るのであった。
中に入ると意外にキレイな内装に驚く。中は外と違ってボロボロになっていない。まあ、年季は感じるけど。でも、誰もいないな。
「すみませーん!見学に来たんですけどー!」
俺は大きな声を出して、いるかいないかも分からないこの教会の主に呼びかける。
「いるんでしょうか」
「いなかったら帰ればいいさ」
しかし、俺の声に対する返事やアクションなどはない。
「いないみたいですね」
「とりあえず留守かもしれないし、少しだけ待ってみよう。それでも帰ってこなかったら終了だ」
「はい」
それから待つことニ十分。教会の古びた入り口がギギギッと開く音がしたので俺達は入り口へと目線を向けた。
そこには黒いシスター服を着た俺より少し年上といった感じの女性がいた。
読んでくれて感謝です。
感想・評価・ブックマークをしてくれると嬉しいです。
よろしくお願いします!




