第157掌 原因は服だった
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どこにでもいるような恰好をした俺は早速街に繰り出した。
と言ってもただ服が原因かどうかを調べるためだけに行くわけではない。今回、この格好で怖がられなかったらそのまま情報収集を開始するのだ。
神の眷属とついに直接戦闘した俺達は今まで以上にこういう情報収集活動や協力者、仲間を増やすことに真剣にならないといけない。
「そんなわけで夜の街に繰り出したわけだけど・・・」
宿の外に出て見ると、誰も俺のことを見て怖がったりとかしていない。ジロジロと見られてもいない。と、言うことは・・・。
「やっぱり服が原因だったか」
でも、なんでそんなに怖がられているのか分からない。この格好なら情報収集も出来そうだし、そこら辺のことも聞いてみるとしますか。
とりあえず、夜に情報収集する場所と言ったらあそこでしょう。
というわけでやって来たのは酒場だ。
ここなら冒険者もたくさんいるだろうし、そうでない人たちでも色々な情報を持った人たちがいることだろう。早速、店の中に入る。
店に入ると一瞬、俺の方を全員が視線を送って来る。しかし、俺の姿を見て興味を失くしたのか、すぐさま視線は外されていった。しかし、見る限りおっさんとかばっかりだな。多少は女性もいるけど、冒険者狙いのケバいお姉さんたちだ。どこかの大人の店のお姉さんなのだろう。色気はある。まあ、こういう女性に見蕩れでもしたらリリアスとアメリアになんて言われるか分かったもんじゃないし、スルーだ。
「さてと」
とりあえず、ここは定番のカウンター席に座る。
「注文は?」
ここのマスターかな?バーテンダーみたいな恰好のおっさんが注文を聞いてくる。
「お茶をくれ」
「はぁ?」
「いや、だからお茶」
未成年なんだ。酒なんて飲めないって。
「飲む気のない奴は出てってくれ。ここは酒場だぞ。邪魔だ」
「おいおい。お金を落とすなら誰もがお客様だろ」
「そんなのは一般の店だけだ。ここは冒険者たち御用達だぞ」
「あー」
物を壊されたり、ツケられたり、暴れられたりと色々とありそうだな。
「まあでも、こういう場所ってそれだけじゃないだろ?俺はそっちメインでここに来たんだ」
「・・・ふん」
「酒を飲まなくて悪いね。金はちゃんと払っていくからさ」
「まあいい。だが、ここに茶なんて置いてはいない。ジュースでいいか?」
「ああ」
カクテル用のジュースかな?あんまり知識はないけど。
「ほらよ」
「どうも」
あまり時間もなく、すぐさまジュースが出された。カクテルなら作る時間とかもいるもんな。それもなく、そのままコップに注ぐだけだから時間もあまり掛からないのだろう。
「それで?何を聞きたいんだ?」
「ああ。今日、日が出ている間、みんながビクついていたんだが、何かあったのか?」
「なんだ?お前、アリエスの者じゃないのか?」
「ああ。最近こっちに来たばかりなんだ。それで、教えてくれないか?」
「ああ。じゃあ、教えておかないとな。いいか?今日、「狂った死神」が目撃されたんだ」
「ブフッ‼」
口に含んだばかりだったジュースを吹き出してしまった。
「うおっ!きたねェ!」
「す、すまん。何か拭くもの貸してくれ」
「お、おう」
テーブルをフキフキっと。
「ま、まあ、話を戻すが、奴が白昼堂々と街を歩いていたんだよ」
「なんでそんなに有名なんだ?」
「なんでって、そりゃあこの国でその「狂った死神」が活動しているからだよ」
「はぁっ⁉」
俺、ここに来たのは今日が初めてなんだけど・・・。でも、分かったぞ。俺が怖がられた理由が。
「最近、アリエス教国では暗殺者「狂った死神」が活動しているんだ。その姿は全身黒ずくめ。冷徹にして冷酷。狙われた標的は必ず殺されるとされている」
「ふむふむ」
だからあんなに怖がられていたのか。でも、みんな見てきたかのような怖がり方だな。「狂った死神」判定は多分、服装が原因だな。その暗殺者があまりに強者だからそんな二つ名になったんだろう。服は暗殺者なら全身黒ずくめなんて当たり前じゃないか。なんでそれなのに黒い服着ているだけの俺を怖がったんだよ。不思議で仕方ないわ。
「でも、それだけじゃない」
「他にも何かあるのか?」
「その「狂った死神」が宗教抗争に出場しているんだよ」
「おいおい。暗殺者が宗教抗争に出ていいのかよ・・・」
物凄い抵抗があるんだけど。物凄い宗教の説得感の無さなんだけど。
「そんなわけでこの国の国民はみんな「狂った死神」の戦いぶりを観ているんだ」
「だからより恐怖の対象になっているってわけね」
「ああ」
「でも、いくらその「狂った死神」が怖いからって判断つかないんじゃないのか?全身黒ずくめの奴なんて他にもいるだろ」
「いや、「狂った死神」の噂が出始めてから黒服を着た奴はいない。上下のどちらからならあるかもしれないが、上下共に黒で髪まで黒だったんだぞ。そんなの誰だって話に聞いてた「狂った死神」って思うだろ」
待て。待て待て!話ってなんだ⁉
「話っていうのは?」
出来るだけ冷静に心を落ち着かせながら聞く。
「ん?お前、そんなことも知らないのか。大国であるオークスの姫騎士派閥の貴族たちを惨殺したと言われているんだ。そのあまりの凄惨さに子供に言い聞かせるほどになった。悪い子には『「狂った死神」が来て、みんなを死の国に連れて行かれるぞ』って言われるほどだ」
あー!やめてー!これ以上、俺の黒歴史を作り出さないでー!
「そうか。ありがとう。不思議に思ってたんだ。ようやく心のモヤモヤが晴れたよ」
「おう」
「それじゃこれ。お代ね」
ジュースのお代よりも多めに代金を出す。
「ふん。次は酒を飲みに来いよ」
「ああ」
俺が成人したらね。
俺は酒場を後にした。
そんな俺の後をつけてくる者が何人かいることに気が付き、裏路地へと進むのだった。
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