第145掌 眷属との戦い プリマ編 その3
ここでネタバラし―――というか、さっきの罠の仕組みだけど。仕組みは単純明快。ただ、落とし穴を作っておいて周りにある植物たちを使って魔法を掛けただけ。最近忘れがちになっているけど俺、植物魔法を持っているからね。
「そんなに睨んでないで掛かって来いよ」
俺はさっきから睨んでいるプリマ姫を挑発する。
「言われなくともッ!」
そうしてプリマ姫は俺の認識出来るスピードを超えて一瞬にして俺の懐に入って来る。
「喰らえッ」
手の内にある濃厚な暗黒魔法の弾を俺の腹めがけて放ってくる。
「甘い!」
転移でギリギリ避け、背後に出現した俺は再びプリマ姫を蹴って吹き飛ばす。
「アグっ⁉」
普通なら吹っ飛ぶだけでダメージなんて与えられないんだが、MP操作スキルで魔法の付与効果をより増大させた威力を、浸透スキルで衝撃を肉体に通しているからこそのダメージである。
そして、地面に激突したプリマ姫。かなりの土煙が発生したが、それもすぐに収まる。
「ギャッ⁉」
地面に激突した瞬間、プリマ姫は落とし穴を警戒していたが落ちないことに若干の安堵によって隙が出来る。そこに地面から突如として現れた木のつたがプリマ姫の両手足を拘束。そして腕と足を鋭い切っ先で貫通させる。
「ぐぅッ⁉お、おのれッ」
「まだまだ!」
チャンス到来とばかりにここで畳みかける。
「『聖なる焔を纏いし雷よ 暴風に導かれ、我が敵の存在を破壊せよ―――聖焔の暴雷風』」
一番詠唱が短く、威力が強力な合成魔法を完全詠唱で唱え上げる。
「これはッ」
俺の詠唱でどんなものが発動するのかが大体予想が付いた様子のプリマ姫は焦り出す。逃げ出そうとつたを外しにかかる。その反動で刺さっているつたから結構な量の血が噴き出る。結構な力で拘束を外そうとしているみたいだ。
「喰らえッ!」
俺の目の前に雷が迸る赤い魔方陣が幾重にも広がる。そして、光属性を纏った焔の大津波が視界全てを覆いつくした。
「―――っ!」
それに吞み込まれてしまうプリマ姫。
「あ~やば。さっきので半分ぐらいMPが減った」
それに疲労感もなかなかである。
「しかし初めて使ったけど、ヤバイなこれは」
しかも二重の意味で。
一つはここまでの威力だとは思いもしなかったこと。俺のいる位置よりも前にあったジャングルは焦土と化し、炭の一欠片すら残らず消え去った。地球で放ったら環境破壊で訴えられるだけじゃすまないぐらいの大破壊だ。
もう一つはこの大破壊魔法を喰らったプリマ姫は無事なのかどうかという点だ。見た限りだとその姿は見受けられない。トリスメデスと約束した手前、この場面で殺してしまっては後味が悪い。
っていうか、この次の段階で勝負を決めるつもりだったのに、ここで終わりとかそれこそ肩透かしを喰らった気分になってしまう。別に戦いたいとかではないんだけどね。
「――――ッ」
と、そんな心配をしていると僅かながら息遣いが聞こえた。姿は見えないがどうやら生きているらしい。
「お、おのれ。おのれ。おのれおのれ。おのれおのれおのれおのれおのれッ‼」
おお怖っ。地面から出て来たよ。ゾンビかっての。
体中が火傷だらけになっているようだが、地面の中に逃げ込むことで何とか死だけは免れたようだ。
「せっかく見つけ出した私の体をよくもッ」
なるほどね。ベルルクで死体を集めているのはやっぱりそういう理由か。プリマ姫もすでに死んでいるようだな。それを神の眷属が中に入っていることで今のプリマ姫になっているってことか。
「そうは言いながらも体の方は治っていっているじゃん。そこまでキレないでもいいのに」
「そういう問題ではないのだ!今、この体は私の物なのだ!その大事な体を傷つけたお前を許すわけにはいかない!」
おおう。物凄い闇の魔力が俺に向けて迸っている。ビリビリチクチクと魔力が俺に刺さって来る。今回の戦闘の中で一番魔力が迸っているんだけど・・・。あなたの愛しの主様の敵(俺)との邂逅よりも怒っているよね。いや、俺は気にしないけどさ。
「それでどうするんだ?」
「決まっている!」
地面にヨロヨロと立っているプリマ姫が掻き消える。
「なっ⁉」
「お前も同じような目に遭って苦しめ!」
宙に浮いてる俺の背後に出て来た。俺が急いで振り返るとそこには俺の時と同様か、それ以上の規模の魔方陣が展開している。
「クッ⁉」
急いで距離を取る俺。
詠唱も無しで俺よりも大規模な魔法を使うとかマジかよ!
「喰らえ!」
その瞬間。黒い太陽がその場を支配した。
「クソッ!」
俺は自分の持つあらゆる防御方法を全て使って体を守る。
俺は急いでその黒い太陽よりも上昇しながら防御の体制を整えた瞬間。黒い光がその場を覆った。
「これで終わり。この世界では私しか存在を許されはしない」
半分が焦土と化した森全体が黒に塗りつぶされている。動くものはなく、ただただ静止している。
「『ゼロ・ワールド』これに触れたら最後、無に変えることなく、その場で永遠にそのままであり続ける。これで包まれたものは静止した世界で永遠の時を過ごすのだ。助けることが出来るのは私のみ。終わりだ」
そう呟き、宙に浮くプリマ姫はようやく終わったと小さくため息をついた。
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