第132掌 出会いは短めに
あんな偉そうにしている女性ってことは十中八九、話に聞いていた姫様なんだろう。確かにキレイなんだが、どこか好きになれない感じがするな。
見た目は確かに整っているんだが、それを打ち消すぐらい傲慢が滲み出るような厚化粧をしている。目もツリ目で、その目は誰もを見下しているように見える。その誰もが自分の下にいるとでも言いたげな目は今、俺を映している。
「あなたがオークス王国の使者かしら?」
「ええ。オークス王であるハフナー様から遣わされたタカキと申します」
「そう。オークスの新しい王はなかなかにこちらのことを舐めきっているのね」
そんなことを俺に言われても。っていうか、そんなことを直接、使者である俺に普通言います?
「申し訳ございません。しかし、オークス王からしましても、確実にこちらにお手紙をお届けに上がるのに安全確実な者を寄越したに過ぎないのです。そのため、自分の格などに関しては些末なこととして隅に置いてくださると幸いです」
「そう言われてもね。やはりここはきちんとした者を寄越すのが筋というものではなくて?あなた、見たところ、冒険者でしょ?」
「はい」
「いくら安全にここまで手紙を運べるからって、普通は使者の護衛が精々でしょう。なぜ、護衛をするような者が使者になっているの?」
「オークス王には王になる前から信頼を頂いておりますので」
「あなたのような冒険者が王から信頼っていうのは一体どういう――――――」
「すみません。その前にそちらの自己紹介をしてはいただけないでしょうか。自分としてはオークス王から渡すように仰せつかったものですから。恐らくではありますが、そちらの男性の方が」
「ああ。私がそちらの手紙を受け取ることになったトリスメデスだ。こちらは私の妻のプリマだ」
俺の遮りによって何とかプリマ姫のマシンガントークの回避に成功した俺はついに目的の人物に会うことに成功した。まあ、特に苦労とかしてないけど。
「これはご丁寧に。それでは早速ですが、こちらが手紙になります。お受け取り下さい」
「ああ」
丁寧な所作で手紙を手渡す。
「出来ればここで読んで頂ければ幸いなんですが・・・」
「分かった」
さて。ここで報告。
実は昨日、ハフナーさんの所に行って報告したときにちょっと手紙を書き直してもらっています。王様に何やらせてんだって思わなくもないけど、まあ、今回はこっちの目的のためにもやってもらいました。
「どれ・・・」
手紙に書いた内容自体は前回と何ら変わりない。変わっているのは・・・というか、付け加えているのは最後の部分。俺の正体について書いた後(使徒の方じゃなくて死神の方)、メルエさん達のことについて書いてもらっている。端的に言って、俺のところで保護していることと、トリスメデスがやったことに対して俺が怒っていることを。
「・・・」
「あれ、ビビってない?」
「シッ」
明らかに手紙を読んで表情を青くさせていくトリスメデスに異空間からアメリアがひそっと呟く。
止めなさい。バレたら色々と面倒だから。
「どうかしたの?」
トリスメデスがあまりに様子がおかしいのでプリマ姫が聞いてくる。しかし、トリスメデスは答えない。不思議に思ったプリマ姫は手紙を覗こうとするが、それは防ぐトリスメデス。内容が内容だからな。っていうか、見せたらどうなるのか予想が大体付く。
反応① 怒る
「なっ⁉こんな失礼な手紙を寄越すなんて!戦争も辞さないわ!まずはこの使者を捕らえなさい!」
反応② トリスメデスと一緒にビビる
「な、なんてこと。わ、私のしたことがこんなことになるなんて(;゜Д゜)」
反応③ 無反応
「ふーん。それはそうと、用はこれで終わったわよね。それなら帰りなさい」
こんな感じか。ま、トリスメデスがそうなるのを防いでいるからこの三つの反応はないだろう。それより気になるのは今のトリスメデスの様子だ。なんか俺を見る目が変わっている。手紙を見るさっきまではどこか傲慢そうな感じで俺を見ていたのに、今は完全に化け物でも見るかのような恐怖する目だ。
「それで、お返事の方をお伺いしたいと思うのですが、いいでしょうか?」
俺はにこやかにトリスメデスに問いかける。実は手紙にはさっきの書き加えと追加してさらに、この後、お前に直接話したいことがあるから時間を作れと書いてある。こんなこと書かれていたらそりゃビビるわな。まるっきりヤンキーの呼び出しだし。
「あ、ああ。この手紙に書かれていることについては概ね了承した。それに最後の内容だが、こ、こちらも了承したから後程、う、伺わせていただくと伝えてくれ」
「はい。承りました」
はい。会う約束を取り付けることに成功だ。
「それじゃ、自分はこれで失礼させていただきます。お忙しい中、ありがとうございました」
そう言って部屋から退出する。ついでにさっきまで張っていた風雷魔法の結界を解く。
「さて、どういう話を聞けるかな」
どういう脅しをしようか。少し楽しみだ。
俺はルンルン気分で宿へと帰宅するのであった。そして、その姿を見ていたリリアスたちは若干、ドン引きしていたが、そっとしておこうという満場一致の配慮でタカキが知ることはなかった。
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