第12掌 登録
俺達は大きく店の前に冒険ギルドと書かれた建物の中に入った。
っていうか、なんで文字が分かるの?これも全掌握の力?それとも疑似神眼の力?まあ、読めるのならそれでいいんだけどさ。
「えーっと」
俺は辺りを見渡し、受付を探す。辺りには色々な人たちがいる。まさに冒険者って感じで厳つい人、ヒョロッとした感じの人、イケメンや美女、様々な人たちが建物内で談笑したり、真剣に話し合ったり、依頼を受けたりしている。
「なるほど、ここは想像通りの場所だな」
ゲームや本であった内容通りの場所に若干安心した。
「タカキさん、行きましょう」
リリアスが急かしてくる。どうやらチラチラとここにいる何人かがこちらを窺っているので怖いようだ。
「ああ、そうだな」
そのまま受付に向かう。なんか、大行列を形成している受付が隣にあるんだけど。多分、人気の受付嬢か何かなんだろう。まあ、俺達には関係ないけど。
一番空いている受付に入る。なんか、個室みたいになっていて、外からは中が見えないみたいだ。これなら外からのちょっかいはないだろう。おそらく、密室で二人っきりとかじゃなくて、外からだけ見えなくしているだけなんだろう。じゃないと、受付嬢が大変だし。
「こんにちはー」
俺達は個室の扉を開けて中に入る。
「ようこそ!」
なんか、若干嬉しそうじゃないか?
俺達を出迎えたのはまだリリアスとそう歳も離れていなさそうな感じの女の子だ。ボブカットがよく似合っている。
中は思った通り。受付側は吹抜けだ。
「冒険者登録に来たんですが」
「はい!承りました。それではこちらの必要事項にご記入ください」
サッと一枚の用紙が渡される。
「すみません。もう一枚もらえますか?こっちの娘も登録するんで」
俺だけ冒険者になってリリアスが冒険者にならないのは色々と不都合が出そうだからな。
「も、申し訳ありません!今、準備します!」
なんかあたふたし出した。テンパってるな~。
「ど、どうぞ」
それから数分。ようやく落ち着いた女の子に用紙を貰い、二人一緒に書き始める。
う、うっかり日本語で書いちゃってるけど大丈夫かな?でも、他の文字が日本語に見えるから間違っているかさえも分からない。
(リ、リリアス。俺の字、何か変かな?)
小さな声で確認を取る。
(はい?大丈夫だと思いますけど)
リリアスも小さな声で返してくれる。どうやら文字は大丈夫みたいだ。多分、全掌握が仕事したんだろ。俺の字をこちらの文字に見えるようにしたか、それとも、俺がこちらの文字を書いているのを目が勝手に日本語として認識しているか。まあ、ありがたいことだ。辺境の村出身のリリアスが文字を書いているんだ。おそらくこの世界の識字率は相当高いと推測できる。
「これでいいかな」
俺は用紙に書かれている氏名、種族、レベル、スキルなどの欄を埋める。簡単なステータス表みたいなもんだな。
「こちらも出来ました」
どうやらリリアスも出来たみたいだ。
二人して用紙を受付の女の子に渡す。受付嬢って言った方がいいんだけど、年下の女の子だからか、受付嬢って言いにくい。受付嬢って俺のイメージだとまさにお姉さんって感じだし。おそらく隣の大行列はそのまさにお姉さんって感じの人がいるんだろう。ちょいちょいナンパしてる声が聞こえてくるし。
「はい。確かに」
確認が終え、書類をしまう女の子。
「それではこちらをどうぞ」
そう言って渡されたのは木のプレート。ただGと書かれているだけである。なんだこれ?
「これが冒険初心者に配給されるウッドプレートです。G級冒険者が所持するものです。これは身分証明書にもなるので無くさないようにご注意を」
「「はい」」
「それとランクについてですが、これは簡単です。G級冒険者がこなせるだろう依頼・モンスターのランクがG。F級冒険者がこなせるだろう依頼・モンスターのランクがF。そういった感じでランクは冒険者の目安になっています」
なるほど。これはリリアスが前に説明してくれた内容だな。リリアスの話と掛け合わせるとF級冒険者はG級冒険者が十人いないと勝てないモンスター相手に一人で勝てると。そういった感じか。
「なるほど」
「それと、ランクアップですが、最終的に一人で上位のランクの依頼を完遂した場合、そのランクに格上げされます」
「はあ」
あれ?じゃあ、ハウリングモンキーを倒した俺はすでにランクCじゃね?
いや待て。依頼って言ったな。ということは依頼としてクリアしないとダメってことじゃね?
「それではさっそく何か依頼を受けてみますか?」
「あ、それじゃあ一つ。ハウリングモンキーの討伐依頼なんかは有ったりしますか?」
「申し訳ありません。ハウリングモンキーの討伐は冒険者ランクC以上、もしくはランクC昇級試験でしか受注できません」
「いや、実はすでに討伐完了していまして・・・」
そう言って俺はリリアスに目を向ける。それを受けたリリアスは荷物の中に入れていたハウリングモンキーの討伐証拠の部位を出す。
「ふぁっ⁉」
まあ、そりゃあ驚くわな。
「これでどうでしょうか。実はあまりお金を持っていなくて。それでちょうど移動中に出くわして討伐したハウリングモンキーの部位が売れないかな~って思ったんですけど」
「え、ええっと。・・・・・・・ちょっと待ってください!」
そう言って奥に消えていった。おいおい。ここに俺達置いてけぼり?
う~ん。待つしかないか。
ただ待つのもなんなので、俺はリリアスと談笑を始めた。
読んでくれて感謝です。




