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第113掌 時空龍との手合わせ

実は戦闘に丸々一話使ったのは初めてだったりして・・・。



 最初に攻撃したのは俺だ。手始めにと相手の視界を奪うために闇魔法を使う。しっかりと掛かったことを確認したらいつもお世話になっている火炎魔法で特大の炎弾を放つ。


『フンッ!』


 時空龍・クロノはその火炎魔法を時空から出した自分の尾で叩き、打ち消してしまう。


 自分の尻尾で叩いて無効化してしまうってことはあの程度では効かないってことか。無効化したのだって念のためなのだろう。


「なら!」


 俺は硬化スキルを発動し、拳に火炎魔法を纏わせる。


「いくぞ!」


 高速移動スキルを使いながらワームホールスキルで時空龍・クロノの周りを転移しまくる。ここで転移・短スキルを使わないのは簡単な理由で、移動しながらの転移ならワームホールスキルがいいというだけの話なのだ。転移・短スキルだと、一々その場に止まってしまう。魔法使いとかが回避用に使うなら転移・短スキルの方がいいのだが、俺のスタイルは元々動き回って戦うものだ。そう考えると俺にはあんまり転移・短スキルは使い処がないのかもしれない。


『ぬぅ⁉』


 俺が高速で動きながら時々転移しているので俺の位置がよく分からなくなっているようだ。高速移動で俺のAGIは通常以上になっているし、ワームホールでさらに撹乱させている。念押しで重力操作・自己スキルも使っているのでかなり速くなっているはずだ。


「喰らえ!」


 そしてその速さのまま、勢いで拳を叩き込む。


『グォッ⁉』


 されるがままに俺の攻撃を喰らう。俺はここぞとばかりに連続で拳を叩き込むが、時空龍・クロノの口から火魔法で火炎放射を出す。それを回避しようと俺はその場から離れた。


『なかなかやるではないか。レベル差など関係ないとばかりに攻め込んでくる』


「まあね。こっちにもアドバンテージはあるからな」


 レベルでもステータス自体でも負けているし、恐らく戦闘経験も負けているだろう。だが、こっちにもスキルの多さっていう有利な点があるのだ。まあ、この戦闘では使えないものとかもあるけどね。


 例えばさっきの火魔法による火炎放射だ。俺は火炎無効を持っているので本来なら避ける必要はない。だが、ブレスには炎だけでなく、風などの勢いを防ぐことは出来ないので受ければ吹っ飛ばされてしまう。ステータスにかなりの差がある上に、相手も俺と同じでスキルと魔法にレベルが表示されない真の上限となると俺でも風の勢いだけでやられてしまう。まあ、火自体を防いではいるので死にはしないが、その場で戦闘不能になるだろう。それだけの勢いがあのブレスにはある。


『ならば今度はこちらからいくぞ!』


 そして時空龍・クロノはその場から消える。


「なっ⁉」


 あの巨体が急に消え、俺はかなり動揺してしまう。予備動作すらなかった。・・・いや、俺には分からなかったのか。


『グォォオオオオオッ!』


 俺の背後からそんな声が聞こえた。そしてその瞬間に背中から衝撃が俺を襲う。かなりのダメージを受けるが、何とか耐え切ることが出来た。しかし、勢いは止まらずそのまま壁へと吹き飛ばされてしまう。


 かなりの勢いで飛ばされているので俺はその勢いを何とか風魔法で相殺し、地面に着地する。


「イタタ」


『タカキさん!』


 時空の結界の中からリリアスが俺の名前を心配そうに叫ぶ。


「大丈夫だ」


 そして俺は時空龍・クロノのいる方を向くが、そこに時空龍・クロノはいない。


「⁉」


 次の瞬間、左から衝撃が俺を襲う。再び攻撃を受けたようだ。また俺は吹っ飛ばされる。今度は横にだ。


「ヤベぇな」


 俺は吹っ飛ばされながらワームホールで再び位置の撹乱をしだす。これで多少は現状を把握する時間を設けることが出来るだろう。


『これは厄介だな』


 その場に残り、そう呟く時空龍・クロノ。そして俺は把握スキルを使い、どうやって攻撃されたのかを知る。


 時空龍・クロノは自身を転移させながら尻尾で俺を叩いただけのようだ。なんてシンプルな攻撃。だからこそ、攻略方法も単純で難しい。


 回避することは言うのは簡単だ。尻尾による攻撃が来た瞬間にただその場から飛び退けばいいのだ。だが、空間系の魔法は気配の把握が難しいのだ。一瞬の出来事では把握しきれない。


 掌握を使いたいところだが、今の俺では掌握させてくれないだろう。


「仕方ない。ここは覚悟を決めるか・・・」


 ワームホールで転移しながら深呼吸をして息を整える。ついでに気持ちも落ち着かせる。


 そして俺は風雷魔法と火炎魔法を硬化スキルで固めた拳と足に纏わせる。風で火炎魔法の威力が上がり、雷を纏っている。まさに炎雷。


「いくぜ!」


 そして俺は時空龍・クロノに急接近。


「インファイトだ!」


 超至近距離からの殴り合い。これが俺の転移と尻尾による一方的な攻撃を逃れるための答えだ。これなら俺も攻撃を喰らうが、相手も喰らう。しかも、俺はまさに全力。浸透スキルまで使っている。さらに俺は時空龍・クロノよりもかなり小さいのでここまで近づいたら攻撃がなかなか出来ないのだ。体に近すぎて、俺を攻撃してしまうと自分で自分を攻撃してしまう恐れがある。それは流石に躊躇うようだ。


『グゥッ!』


 結構効いているみたいだな。それじゃ追い打ちだ!


『ぬぅ⁉』


 植物魔法で時空龍・クロノにどこからか生えて来た植物を纏わりつかせる。これで俺の火炎魔法で燃え上がり、追加ダメージだ!


『ここまでとはな。ならば我も少し本気を出すか』


 そう呟いた瞬間、俺の前から時空龍・クロノが消える。


「またか!」


 辺りを探すが見当たらない。


「くそ!どこだ⁉」


 次の瞬間、何も喰らってないはずなのにすごい衝撃が俺を襲う。


「ガハッ⁉」


 俺は対処出来ずにそのまま宇宙空間のような壁に衝突してしまう。


「な、なにが?」


 立ち上がろうとするが、ダメージがさっきの衝撃だけでなく、他にもいつの間にか喰らっており、立てない。


「ぐぅ!」


 その場に崩れ落ちてしまう。


『ここまでだな』


「ああ。悔しいがその通りだ」


 俺はその場に仰向けになりながら寝ころぶ。気にしたことはあんまりなかったが、HPがかなり減っている。このまま戦い続けていたら死んでしまうところだっただろう。


「さっきの攻撃は何なんだ?」


『時空を司る我は時も止めることが出来るのだよ。つまり、止まったお前を攻撃しただけのことだ』


「時って・・・。ハンパないな」


『まあ、時を止めるだけなら何とでもなる。だがまあ、巻き戻したりするのはかなり無理をしなくてはならないからしたくはないのだがな』


「ハハッ。降参だ」


 そして俺と時空龍・クロノの手合わせは幕を閉じた。


 俺の初敗北という結果で。




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