第106掌 タカキ、時空龍と遭遇
俺が上へと天井をぶっ壊しながら進んでいると目の前に急に魔方陣が浮かび上がる。回避しようとどうにか動くがどうにもならない。掌握して魔方陣を壊そうとしたが、それも出来ない。
「な、なんだぁ⁉」
飛んでいるので止まる訳にもいかない。そのまま俺は転移魔方陣に突っ込む。
「クッ⁉」
仕方ない。このまま転移させられるしかない。でも、危険なので身を守れる系のスキルは全て使っておく。
スキル発動と同時に俺はそこから転移した。
・・・
そして目を開けるとそこは結構な広さのある場所だった。相変わらず宇宙空間のような天井と壁だが、地面がさっきまでの場所と違っていた。
「ここは・・・?」
『来たか』
辺りを見渡しているとそんな声が響いて来た。
「誰だ⁉」
『そう焦るでない。別に闇討ちしようと思っているわけでもないのだから』
「じゃあ、姿を現せよ!」
俺の把握からも逃れているこの声の持ち主、明らかに俺よりも上の実力を持っている。このままだと俺でもやられる!
『良かろう』
その言葉が言い終わると同時に俺の前の空間が歪んだ。っていうか、かなり歪み、デカくね?これってもしかして・・・もしかするんじゃないの?
『これで良いか?』
そう言って俺の前に姿を現したのは。
「時空龍・・・」
『そうだ。我は時空龍・クロノ。この世界で時空を統べる頂点である』
その姿はまさに龍。黒い巨体を空間から蛇のように出している。大きさはどういって例えたらいいだろうか。大きさなら道路の横幅目一杯ってところだろうか。長さは今空間から出ているだけで見れば全長50メートルはあるだろう。しかし、空間から全てが出ているわけではないので本当の長さは分からない。顔はかなりシュッとしていてなかなか地球の男の子の感性をくすぐる顔立ちをしている。
そのかなりの巨体が宙に浮いている。
(か、かっけぇ)
そう思ったが、流石に口には出さない。
「それで?そんな時空龍様が何の用だよ」
まあ、俺は時空龍であるこの龍に用があるんだけどな。まさかこんなに早くに会えるとは思えなかった。予定では本当なら後二週間ほどはダンジョンに潜りっぱなしかと思っていたんだが。
でも、そうなるとかなりヤバいことにもなる。予定ではもっとレベルが上がってから相手をするつもりだったのに。まだレベルはそこまで高くない。このままだと普通に負ける。
『なに。久々の侵入者であったからな。我直々に出迎えてやろうと思って出て来たのだ。お前にはその価値がある実力を持ち合わせているからな』
SSSランクモンスターの時空龍からそう言われるとはありがたいことだが、それってつまり自分より弱いって言っているようなものだからな。まあ、その通りなんだけども。でも、そう言われると流石にイラッとも来る。
「ただ会いに来ただけか?」
『いや、せっかくの客だ。お相手をしてもらいたい』
うぅ。やっぱりそうなるのね。まあ、じゃなきゃわざわざ俺をここに魔法まで使って呼び出さないか。
「分かった。だが、俺は仲間と一緒にここに来た。恐らくこのダンジョンに潜っているんだが、その仲間を呼び寄せてくれないか?」
ダメ元で頼んでいる。俺を転移させた力といい、俺を感知した能力といい、この龍はこのダンジョン内なら簡単にどこからでも転移を出来るんじゃないかと予想したんだ。
『そうだな。構わんが、ちょっと時間をくれないか?』
「???」
どうして時間が必要なんだ?すぐにでもやればいいじゃないか。
『どうしてといった表情だな』
「あ、ああ。どうしてなんだ?」
『先程、お前を転移させるとき、何か力を使っただろう?』
ああ。掌握ね。
『あれで少しの間、我の空間魔法が使えなくなってしまってな』
俺の対処がそんな結果を生むなんて・・・。
「わ、分かった。時間ならいくらでも待つ。だから仲間をここに転移するの、頼む」
『ああ。了承した』
「言い遅れたな。俺の名前はタカキだ」
『そうか』
まあ、モンスターって言われているけど会話できるからな。会話できる相手にモンスター扱いは出来ない。
『ならば我も正式に名乗ろう』
ん?正式に?どういうことだ?
『我は神より一つの属性を任されし神龍が一柱、時空龍・クロノだ』
「は、はいぃぃぃぃぃいいいい⁉」
『ん?何故そんなに驚く?』
「いやいや!驚くって!」
それ、本当なのか?
疑似神眼でステータスチェック。今ならゆっくりと見ても大丈夫だしな。
クロノ
種族 神龍
レベル 1034
HP:39789/39789(+100)
MP:42815/42815(+100)
STR:36649(+100)
DEF:40071(+100)
INT:52911(+100)
AGI:30198(+100)
MND:34294(+100)
固有:時空
スキル:神眼
高速移動
硬化
MP操作
威圧
隠蔽
重力操作・自己
高速思考
テレパシー
人化
魔法:時空魔法
四元魔法
加護:地球神の加護
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・はい?
マジですか?何、このステータス。俺とは本当に桁が違うじゃん。俺、最終的にこれを超えなきゃいけないんだろ?
前回の神の眷属との戦いは、レベルが低いフォーマスに憑りついていたから勝てたんであって、このレベル以上の相手では今の俺では太刀打ちできない。
『む?我を視たのか?』
「あ、ああ。神龍って言ってたんでな」
『だが、普通の鑑定スキルでは我を視ることは出来まい』
え?そうだったの?まあ、俺のは疑似とはいえ、神眼だからな。
「まあ、お仲間だからだろう」
『どういうことだ?』
「俺のステータスを視れば分かることだ」
『ふむ。分かった』
タカキ・ヤガミ 男
種族 神の使徒 (ヒューマン)
レベル 182
HP:6891/6891(+500)
MP:7511/7511(+500)
STR:7019(+500)
DEF:7121(+500)
INT:7319(+500)
AGI:7599(+500)
MND:16200(+500)
固有:全掌握(下位の把握を偽装として表示できます)
スキル:オール・ブースト
疑似神眼
高速移動
棍術
投擲
短剣術
硬化
浸透
MP操作
二刀流
剣術
戦闘術
孤軍奮闘
詐術
隠密行動
暗殺術
威圧
隠蔽
火炎無効
重力操作・自己
指揮
視界不良耐性
夜目
手加減
高速思考
削掘
ワームホール
超聴覚
防御部分無効
魔法:水魔法
植物魔法
風雷魔法
火炎魔法
土魔法
加護:地球神の守護
『お前も神が遣わした者か』
「ああ。神の使徒だ。ここにはあんたの空間魔法を掌握させてもらいに来た」
『ふむ。しかし、二つ言っておかなければならないことがある』
「な、なんだよ」
『まずは、お前の言う空間魔法のことだ』
それに何か問題でも?
『我の司っているのは時空であって空間ではない。そこを間違えるな』
「そ、それはすんません!」
譲れない点なのだろう。
『空間魔法とは時空魔法の下位でしかないのだ。それと我の時空魔法を間違えるでない』
「りょ、了解しました!」
ん?待てよ?もう一つ時空間系で言えばあったな。
「なぁ」
『ん?なんだ?』
「次元魔法ってのはないのか?」
『あれは我の使える魔法ではない。それこそ神でなければな』
少し悔しそうに話す時空龍。
「へぇ~」
そこまで強力なのか?ちょっと気になるけど、この感じだと話してくれなさそうだな。
『そんなことはいいのだ。それより二つ目だ』
「はいはい。何でしょうか?」
『神の使徒というのならお前は何故、そんなにスキルを持っているのだ?』
「へ?なんかおかしいのか?」
『神に属する者にはスキルや魔法といったものにレベルがつかないのだ。それは最初からレベルが上限である10を超える神の使う領域に達しているからなのだが』
何それ。めっちゃすごいじゃん!俺、てっきり最初からレベル10かと思ってたのに、それより上と来たか。
『だが勿論のこと、デメリットも存在する』
「デメリット?」
『うむ。レベルが最初から真なる上限に達する代わりにかなり極端にスキルや魔法といったものを覚えるのが遅くなるのだ』
「え?そうだったの?」
なるほど。だから神龍でもある時空龍・クロノはレベルの割にスキルとか魔法が少なかったのか。まあ、四元魔法って火・水・土・風の四つの魔法を使えたら勝手に統合されて出来る名称らしいから実質はもうちょっと多いみたいだけど。
『だから不思議に思ったのだ。どうしてお前はそんなにスキルと魔法を持っているのだ?』
「ああ。それは俺の固有スキルのおかげなんだよ」
『この掌握というスキルか』
「ああ。これは掌握することで対象の全てを掌握することの出来るスキルだ。これで俺は色々と掌握してスキルとか魔法を取得していったんだ」
『そういうことであったか。どうしてそのようなスキルを持っているのか気になるところだが、今は止そう。もうそろそろ我の魔法も使えるようになってくるからな』
「そうか!分かった。それでは後は完全に魔法が使えるようになるまでおとなしく待っておくよ。準備が出来たら言ってくれ」
『ああ。そうするとしよう』
俺はそう言うと広大な広場の隅へと移動し、そこでおとなしく待つことにした。
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先に言っておくと、クロノさんがヒロインになることは今の所はありません。ステータスで性別を書かなかったり、スキル欄に人化を入れたのは後々のことを考えてとかでもありません。普通に、龍って性別あったっけ?ってことで性別欄は書いてないだけです。




