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第9掌 出発

あとすこし・・・



 一応、外にいる村人たちは洗脳などはまだされていなかったっぽいので多分見つかったら普通に捕まるだろうと考えた俺は再び隠れながらリリアスの家へと向かった。まあ、警備も結構ザルだったのでものすごく楽だったのだが。


 遺跡に入る前は見つかりそうにもなっていたんだが、流石に長い時間探すのはきつかったようだ。かなりダラけている。洗脳されてもいないんだ。村長の命令だけじゃこうなるわな。


「結構あっさり家まで帰って来れましたね」


「ああ。まあ、ただの村人ならこんなものだろう」


 俺達は一応誰かが来ないかだけ警戒しながらリリアスの家で休憩していた。俺は椅子に座ってだら~んとしている。リリアスは旅の準備をしているみたいだ。


「リリアス、今何しているんだ?」


「今は本を整理しています。流石に持って行くわけにはいきませんからね」


「本ってどこにあるんだ?」


「この家の下にです」


 え?どういうことなんだろうか?


「下って、地面に埋めているのか?」


「いやいや、違いますよ。私、長い時間を掛けて地下室を作ったんです」


 はぃいいいいいい⁉


「いや、あの。本を置けるように環境づくりをしているだけで、あとはただの穴ですよ?」


 俺の驚いた表情にちょっと慌てるリリアス。


「見つからないように蓋をしようと思うんですけど、どうしようかなと考えていたんです」


「なるほどね」


 まあ、鍵とかないからね。


「それなら簡単な方法があるんだけど」


「え?」


「ちょっとやってみてもいい?」


「構いませんけど」


「ありがと。それじゃさっそく」


 俺はリリアスに場所を教えて貰って、テーブルの下の床を開いた。


「おお!本当にあるな」


 そこには穴と梯子があった。


「梯子は回収しておこう」


 梯子を取り出し、リリアスに渡す。


「そしてっと」


 地面の部分に手を当てる。


「うん。大丈夫っぽいな」


 把握で地面の様子を確認。これなら崩れたりとかは大丈夫そうだな。


「リリアス、蓋にしようとしていた物ってある?」


「あ、はい。これです」


 木の丸い蓋を手渡される。まあまあ薄いし大丈夫だろう。


「それじゃこれをそのまま蓋してっと」


 木の蓋をそのまま穴の上に置く。そして土を被せる。これで完成。


「これだけですか?」


「ああ。簡単だろ?」


「はい。でも、簡単すぎて心配になります」


「大丈夫大丈夫。家を壊すなんてしないだろうしね」


「まあ、有効活用しますけど」


「なら大丈夫。一応このテーブルの床の部分は分かりにくい程度に補強しておこう」


 リリアスに工具を借りて作業開始。トンカチなどはあったので作業はすぐに終わった。良かった。使い方がよく分からないものが工具じゃなくて。


「はい、終わり。リリアス、もう他の準備に移っていいよ」


「あ、ありがとうございます!」


「いいって。気にしないで。俺は準備する物とかないから待たせてもらうよ」


 そして再びダラける俺。そうしていると段々外が騒がしくなってきた。把握して外の様子を窺うと騒がしい理由はすぐに分かった。


「村長(仮)たちが遺跡から戻って来たのか」


 これは急がないといけないな。


「リリアス!準備の方は⁉」


「出来ました!」


 ナイスタイミング!


「出発するぞ!」


「はい!」


「それで、目的地だけど、どこに行けばいいんだ?」


 俺は全く分からないからな!田舎から都会に出てきた若者と同じだ。


「ここから一番近い町、ベルルクに行きましょう!」


「ここからどのくらい掛かるんだ?」


「歩いて三日くらいの距離です」


 徒歩三日か・・・。いや、分かるよ?車も電車もないこの世界では歩くか馬に乗るか、魔法くらいしかないだろうってことは。でもな~。桁が違い過ぎる。歩いて何時間までなら地球でもまだあっただろう。しかし、まさか日数単位での距離か・・・。三日も歩けるかな・・・?


 俺がこの世界の移動に関して慄いていると村の方がより一層騒がしくなってきた。


「た、タカキさん!急ぎましょう!」


 どうやら時間はもうないようだな。こりゃ、もうここにいるのはマズいか。


「ああ!そうだな。急いで出発するとしよう」


 俺達はそのまま村から離れるため、窓からこっそりと外に出て走る。リリアスの家が村の端っこでよかったぜ。そのおかげで出発するときに見つかることもないからな。


 リリアスを抱えて走る。リリアスと走るよりは俺が抱えた方が速いからな。それに、なんだかさっきから走るときに体が軽く感じる。ちょっとステータスの方を見てみるか。



タカキ・ヤガミ 男


種族 ヒューマン?


レベル5


HP:120/120(+100)

MP:120/120(+100)


STR:110(+100)

DEF:109(+100)

INT:114(+100)

AGI:135(+100)

MND:1300(+100)


 固有:全掌握(下位の把握を偽装として表示できます)


 スキル:オール・ブースト

     疑似神眼

     疾駆


 魔法:なし


 加護:地球神の祝福



 おお。なんか地味にステータスが上がってる。それにスキルの欄に疾駆ってのが追加されてるな。でも、レベルも上がってないのにステータスって上がるんだな。これもMNDとオール・ブーストの効果か?それにしても、スキルとかにはレベルがないのか。なんか基準がないからどれくらいが平均なのか分からないな。うーむ。


 そんな思考に耽っていると後ろから誰かが来ることを把握した。便利だな、この能力。自動で近づいてきた存在も把握してくれるとは。


 俺が後ろを振り向くとそこには森で俺に突っかかってきた少年が走って追いかけて来ていた。追いつけはしないのだが、あそこまでの執念、ここで断ち切っておかないと面倒なことになるかもしれないな。


 リリアスも俺が後ろを振り返ったので俺が向けている目線に自分の視線を向ける。


「パッシュ!」


 へえ、あの少年、パッシュって名前なのか。


「リリアスを返せ!」


 あの少年――パッシュ――は学習と言うものを知らないのか?どうやら記憶は残っているらしく、若干足も震えている。


「お前は本当にどうしようもないな」


「何⁉」


 俺の言葉にいきり立つパッシュ。


「俺はリリアスを連れ去ったわけではない」


「けど!現にリリアスはお前に連れて行かれているじゃねえか!」


 自分のことしか見えていないタイプだな。客観的に物事を理解しようとしない。


「よく見ろ。俺がリリアスを強引に連れ去っているように見えるか?力ずくで従わせようとしているように見えるか?」


 あ、よく見ればそう見えるわ。


「そんなの本当はどうなのか分かんないだろ!」


 良かった。パッシュはそこら辺に目がいっていないようだ。まあ、そうだな。見た目だけで判断してはいけない。だが、


「俺はお前たちに追われているのに人質を取るなんてことはしない。あの村にはなんの執着もないんだ。そのまま一人で出て行った方がいい」


「ならなんで!なんでリリアスを連れて行こうとしてるんだよ!」


「それは俺が望んだことではない。リリアスが望んだことだ」


「リリアスがそんなこと言うはずがないだろ!」


「なら、本人に聞け」


 そう言うと俺はリリアスに目線を向ける。


「・・・」


 心配そうに俺を見つめてくるリリアス。どうやら、不安みたいだな。


「大丈夫だ。お前は俺が守る。置いて行ったりもしない。素直な気持ちを言えばいいんだ」


「はい!」


 俺の言葉に笑顔になる。良し。


「パッシュ!」


「リリアス!戻って来い!そんな奴について行くことなんてねぇ!一緒に村に戻ろう!」


「イヤ!私は戻らない!」


 リリアスの目には決意が見えた。


「私はここを出て、タカキさんと生きるわ!」


「なんでそんな奴と」


「あなたたちは私のしてきたことを馬鹿にしかしてこなかったじゃない!私は真剣だったのに!ただ、夢見ていたわけじゃない。本気で目指していたの!それなのに、誰も応援してくれなかった。誰も私が本気って信じてくれなかった。いつもいつも辞めろとしか言われなかった。そんなところになんて居たくないわ!」


 リリアスの言葉に言い返すことが出来ないパッシュ。


「でも!そいつだって分からないじゃないか!村に来たのだって今日だ!会ったばかりの奴にお前の何が分かるっていうんだよ!」


「タカキさんは私の話を聞いても馬鹿になんてしなかった。守るって言ってくれた。役に立つかもわからないのに連れて行ってと頼んだら行こうと言ってくれた。私はこの人について行くわ!」


 なんか、恥ずかしいな。でも、それ以上に嬉しい。


「まあ、そういうことだ。文句があるのもいいし、俺を恨んでもいい。お前の勝手だ。だが、俺はリリアスを連れて行く。これは変わらない」


「くっ」


「だから村の奴らに伝えろ!リリアスは俺が貰っていくと」


「バイバイ、パッシュ」


 俺とリリアスはそれだけ言うとその場を後にした。パッシュは悔しそうに俺達を見ていたが、もう追いかけてくることはなかった。


 村から離れ、パッシュの姿も見えなくなった辺りで俺はリリアスに呼びかけた。


「リリアス」


「はい?」


「もう一度だけ言っておくよ」


 俺はリリアスと向かい合う。


「君は俺が守る。だから一緒に行こう」


「はい!私も強くなります。あなたの役に立てるようになるために。自分の夢を叶えるために!」


「ああ。一緒に頑張ろう」


 俺達は歩いて行った。




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