第97掌 タカキ君の試験
あと三、四話くらいでこの編も終わりかな?
それと、タイトルについて
タイトルの中に世界漫遊とありますが、現在はタカキたちの地力を高める段階です。世界漫遊するためにおかしい部分を無くすための段階でもあるので、もう少しだけ世界漫遊を待っている方はお待ちいただければと思います。
予定では、次の編が終われば旅立ちを、と考えていますので。
次の日。
俺VSクラスメイト達の戦いの日がやって来た。
まあ、やって来たと言うか、一日経っただけで、やって来たも何もないんだけどね。
昨日は何故か不機嫌になって帰ってきたリリアスを宥めたりして大変だった。どうしてあんなに怒って帰って来たんだろうか?そのことをダンガとアメリアに聞いたが、曖昧に答えを濁されるだけで教えてくれない。まあ、そこまで言いたくないなら聞かないけどさ。
リリアスたちはレベル上げに今日も出ていて拠点には俺一人だ。やっぱり寂しい。リアも連れて行っているので動物すらここにはいない。
そんなわけで拠点の庭で待っているんだが、十人は一向にやってこない。まあ、昼にと言っただけで特に詳しい時間設定はしていないんだけどな。
屋敷の周りに把握だけ掛けておいて昼寝でもするか。
そして俺はゴロンとその場に寝ころんだ。芝生だからなかなかの寝心地だ。今日は晴天だし、熟睡したくなるね。
そうして一時間ほど眠っていると把握に反応があった。どうやら来たみたいだ。把握に反応があるのは十人全員。まさかあれだけのことを俺が言ったのに全員来るとは思ってもみなかった。
「待ってましたよ」
俺は起きながら十人に話しかける。
「十人全員が来るとは思ってもみませんでした」
「その前に確認してもいい?」
ミッキー先生が聞いてくる。
「ええ。いいですよ。何ですか?」
「あなた、黒の英雄以外に二つ名があるの?」
「ええ。ありますね」
「それって狂った死神って二つ名?」
「ああ。そうです。なんだ、聞かなくても知っているじゃないですか」
俺の返事に体を震わせるミッキー先生。よく見れば他の九人も苦い表情をしている。
「あなたは人を殺して何も感じないの?」
「はぁ、別に何も?」
俺の答えにどうやらショックを受けたようだ。泣きそうな顔をしている。ミッキー先生だけでなく、樹里も。
「どうしてっ⁉人を殺しているのよ⁉」
「どうしてってそりゃあ、放置していたらこちらに害を及ぼすと判断したからですよ」
「それだけで人を殺せちゃうの⁉」
「別に好き好んで人を殺したりしませんよ。むしろ、あなたたちはなかったんですか?ここに来るまでに人を殺したことが」
俺がそう聞くと言葉を詰まらせる。
「ほら。あなたたちも殺しているじゃないですか」
「それはっ!やらなければ私たちが殺されていたもの・・・」
「だから殺した?それじゃ俺と変わりないじゃないですか。自分たちに害を及ぼそうとしたから殺したのでしょう?それでよく、俺を非難出来ましたね」
「それは・・・」
言葉が出てこないのか、何も言えなくなるミッキー先生。
「そんなことはいいんです。それより、まず答えを聞きましょう。あなたたちはどうするんですか?」
「私たちは・・・。私たちは抑止力としてあなたの仲間になります!」
???
「どういうことですか?」
意味が分からないけど。
「まあ、抑止力ってほど私たちは強くないわ。でも、ストッパーになることぐらいは出来る。あなたの仲間はそれを止めないけど、私たちがそれを止めます!」
いや、止めれないと思うんだけど。
「私たちも止めれるとは思っていないわ。でも、一度考えさせることは出来るでしょ?」
まあ、そうだな。一度ストップが掛かったら多少は冷静になるな。まあ、今まで冷静さを失うほどキレたことはないけど。
「まあ、それは俺に認められればの話ですけどね」
そう。試験はまだ終わっていない。ミッキー先生には悪いが、今回は俺が教師だ。
「さあ、ここでいいです。始めましょうか」
俺の言葉に十人は一斉に構える。ふぅん。前衛は樹里とミッキー先生だけか。前からの知り合いの方が俺にとってやり辛いと判断してのことか。まあ、考えて来ているけど―――――――
「それだけじゃ足りないな」
そう呟きながら威圧を十人にぶつける。
『『⁉』』
十人は俺の威圧に押されて汗をかきながら後退する。これでも抑えている方だけどね。流石に本気を出したらレベル20程度の相手、速攻で気絶コースだ。
「ほら。かかってこないの?こっちから行こうか?」
そして俺は挑発をする。
しかし、それには乗ってこない。ふむ。冷静なままか。それじゃ、言った通りにこっちから行くか。
俺は瞬間移動を使いながらミッキー先生の背後に回る。
「っ!」
いきなり背後に現れた俺にビックリするミッキー先生。樹里も隣に急に俺が現れて驚いている。その驚きによって止まった瞬間にまず、ミッキー先生に軽くパンチ。その後、隣にいる樹里に回し蹴りを放つ。二人は俺の攻撃によってその場から吹っ飛んでしまう。威力としては一割ぐらいかな。それだけでもそこらのモンスターよりも重たい一撃だけどな。
吹っ飛んだしまった二人を見て呆然とする他の八人。傍から見たら全く容赦していないように見えるからな。呆然とするのも分かる。でも、俺が本気で攻撃していたらそれこそ文字通り、体ごと吹っ飛んでしまうだろう。それは流石に防ぎたいからな。
今回の試験は俺にボコボコにされて、どこまで諦めずに挑んでくるかを見ている。諦めが良い奴は仲間にしたくないからな。
「うぅ」
「い、いたぃ」
吹っ飛んだ二人が呻く。
「そら!次だ」
俺は茫然としている残りの八人に攻撃を仕掛ける。今度はもっと威力を調節しなきゃな。さっきのさらに半分に威力を落とそう。
「ほいほいほほい」
瞬間移動で八人に近づいてさっきの二人と同じように攻撃する。まあ、軽くパンチだな。それでも吹っ飛んでいくんだけど。あと、俺の気の抜ける掛け声は気にしないでOKだ。ガチでやってないよ~っていうアピールだからな。
っていうか、これだけで十人は戦闘不能だ。誰も起き上がってこない。まあ、少しの間なら待つけどね。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「ぐぅ!」
おっ。樹里が頑張って立ち上がったな。スキルの浸透をちょこっとだけ内緒で使っていたんだけど、根性あるじゃん。
「う、うぅ!」
と、樹里に視線を向けていたら別方向から同じように起き上がって来た人がいた。ミッキー先生だ。二人とも他の八人よりも重たい一撃を受けたのによく持ちこたえたね。
二人は震える身体で構え直す。
俺は他の八人を確認するべく、視線を向ける。すると。
「あちゃー。やっぱりか」
気絶していた。通りで動かないと思ったよ。樹里とミッキー先生は他の八人よりレベルも高かったけど、それでも微々たる差だ。
「目的自体は達成したし、ここまでかな」
俺の言葉を聞いてその場に倒れ込む樹里とミッキー先生。あらら。気絶してる。
「八人はサポートに回ってもらうかな。樹里とミッキー先生はまあ、パーティーに入れてもいいと判断できるし」
さて、この十人を屋敷に運び込むか。リリアスたちはまだ帰ってきていないしな。
俺は毎度お馴染みになりつつあるMP操作で十人を浮かせて屋敷の中に入った。
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