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第96掌 リリアスの怒り

ああっ!

ドンドンシリアスになっていく。

早く!早く元の雰囲気に戻さないと!



「さて、どうなるかな?」


 屋敷の中に入った俺は一人呟く。


「厳しすぎない?」


 アメリアが俺にそう言ってくる。


「いや、あれくらいで怯むようならこの先やっていけないだろうからな」


 それだけ危険ってことだし。


「でも、私はお父様に言われてあなたたちの仲間になったようなものよ?」


「いや、そうだけどさ」


 だって、改めて聞いたじゃん。継承問題が片付いた後に。あれだけ俺をボコっておいてそれはないんじゃない?


「まあ、流石に今から戦力になるかって言われたらNOって三人とも答えるだろ?」


「私はそもそもタカキさんに頼み込んでついて来させてもらっている身なのでそういう戦力とかの点では口出しはしません。まあ、強いて言えば確かに十人全員を育てるのは厳しいですけど」


 と、リリアスが意見を言う。


「俺もリリアスに賛成だ。しかも、あの十人はどこかで自分を勇者だとまだ思っている。召喚された特別な存在なんだと」


 ダンガも辛らつだねぇ。


「私はさっきも言ったように少し厳しすぎると思うわ。この先、人数のいることもあるかもしれないし」


 アメリアは反対派ってやつだね。まあ、アメリアの言うことにも一理あるけど。


「まあ、最低限の気持ちの問題だよ。だから俺は言っただろ?俺が認めたら仲間にするって」


「あなたの基準が見えないから向こうとしては困っているんじゃないかしら」


 まあ、それは確かに。それにミッキー先生や樹里は今までの俺じゃないって意味でも困惑していただろうな。でも、死ぬかもしれないんだ。それくらいの覚悟は示してもらいたいね。


 お忘れかもしれないが、俺だけなら保険が効いているから一回だけなら死んでも大丈夫なんだけどね。それもあって仲間選びには慎重になっているのだ。俺がいない間、凌ぐことが出来るかどうかも重要になってくるから。


「まあ、いいじゃねぇか。まずは明日来るかどうかなんだし」


 ダンガがその場を纏めてくれる。その通りだ。下手したら誰も来ない可能性だってあるんだしな。


「まあ、とにかく今日は俺は残りの改造を済ませておきたいし、リリアスは召喚魔法のレベル上げもある。まあ、リリアスとダンガとアメリアにはレベル上げもしておいてもらわないといけないんだけどな」


「ディメンショナル・プルートーですか・・・」


 リリアスが緊張した面持ちで聞いてくる。


「ああ。S級ダンジョンだし、リリアスたちもレベルを三桁にしておいてもらわないとな」


 勿論、俺もレベル上げはする。今回は自然の流れに沿ってではなく、ガチのパワーレベリングだ。俺と一緒に強いモンスターを倒しに行ったり、モンスターの大群とかを倒しまくってもらう。俺のステータスのMNDがいよいよ五桁になったので恐らく、今まで以上にステータスの上りが激しくなることだろう。すでにステータスがすごいことになっているのにまだまだ上がる。俺だけでなく、リリアスたちもだ。すでにステータスだけなら俺はSランクモンスターを普通に倒せるし、リリアスたちも三人がかりならSランクモンスターを倒せるだろう。


 でも、今回挑むのはSSSランクモンスターだ。最悪、こそっと掌握だけして戻ってくればいいけど、それまでの道のりでもSランクモンスターと遭遇することだろう。そうなったときに自力で戦えるようになっておかないとな。


「ダンジョンに行った後はリリアスは学園生活スタートだし、ダンガも店をオープンしなきゃだしな」


「空間魔法があれば旅をしていたって戻って来れますもんね」


 リリアスはワクワクしている。やはり健気な少女といっても魔法馬鹿には変わりない。S級ダンジョンに挑むっていうのにワクワクするなんてこの子も大概だな。俺のことを強くは言えないだろう。


「そう言う訳だ。アメリアは今日はリリアスと組んで依頼をこなしながらレベル上げをしてくれ」


「タカキ。俺もリリアスたちの方に参加してもいいか?」


「ああ。いいぞ。こっちは俺一人でも何とかなるしな」


「それじゃ悪いが留守を頼む。さあ、行くぞ。二人とも」


 そう言ってダンガに促され、リリアスたちはギルドへ行ったのだった。




               ・・・




「タカキさん一人に任せて良かったんですか?」


 リリアスはダンガに言う。


「ああ。なんだかんだで自分の故郷の奴らに冷たく当たったんだ。それに十人の内、二人はタカキとも親しい関係みたいだったしな」


「ダンガさんはタカキさんに一人になる時間をあげたのね」


「そういうことさ」


 アメリアはため息をつきながらやれやれと肩を竦める。


「男同士にしか分からないこともあるってことね。羨ましい限りだわ」


「でも、アメリアは男同士は嫌なんだろ?」


「ええ。勿論よ」


「はっきりしているねぇ」


 と会話しながらギルドに向かっているとそのタカキのクラスメイト達がリリアスたちを待つかのようにギルドの入り口に立っていた。


「あの!」


 樹里が三人に声を掛けてくる。


 リリアスたちはどうする?って感じでアイコンタクト。


「何か御用ですか?」


 アメリアがメイドモードで対応する。


「私たち、どうすればいいか分からなくて・・・」


「皆川先生なんて谷上君にあんなに冷たくされたことないって落ち込んじゃってて」


「もう頼れるのは谷上君だけだったんです。なのにあんなひどいこと言われて・・・」


 その言葉を聞いてリリアスがキレた。


「何を自分勝手なことを言っているんですか!あなた方は最初から仲間がいたのでしょう⁉頼れるのがタカキさんだけなんてよく言えますね!」


「り、リリアス?」


 アメリアが急に怒り出したリリアスを止めようと声を掛けるが、それをダンガが首を振って止める。


「ここはリリアスに任せよう。タカキの最初の仲間はリリアスなんだ。そのリリアスがタカキのために怒っているんだから言わせてやれ」


「そうね。分かったわ」


 小声でそう会話をして後ろに下がるダンガとアメリア。


「あなた方と違ってタカキさんは最初、知らない世界に自分一人でどことも知れない森の中に放り出されたんですよ!そのことについてタカキさんは何もあなたたちに言いませんでした。それはあなたたちに申し訳ないと思ったからです。それにタカキさんは冷たくなんてしていません!」


「あ、あなたの言いたいことは分かるけど、実際に冷たくあしらわれたのよ!あなたも見ていたじゃない!」


 三つ編みの女子がそう反論する。


「あなたは何を考えているのですか⁉タカキさんの話をちゃんと聞いていなかったんですか?タカキさんは自分の近くにいる方が危ないとあなた方に忠告したんですよ?自分の敵はSSSランク以上だって。相手は元神の眷属。しかし、この世界では神が変わっていることなんて知らされていません。それはつまり、この世界の神に敵対したとして世界を敵に回すかもしれないと言うことです。世界を相手にしたとき、あなた方はまだタカキさんと一緒にいて、守ってもらうんですか?そんなのは私たちが許しません!」


 リリアスは一歩も引かず、むしろ十人を責め立てた。


「タカキさんはあなた方に安全な場所にいてもらおうと思ってあんな冷たい感じにしたんです。自分の親しい人に向かってでも。いえ、むしろ親しい人がいたからこそ。これを聞いてまだ、そんなことを言うのなら、タカキさんではなく、私があなた方の相手をします。勿論、タカキさんとは違い、本気で相手をします」


 まあ、リリアスの本気とタカキの手加減のどちらがいいのかと聞かれたらリリアスを選ぶだろうが・・・。


「私の言ったことをよく理解した上で明日、拠点の方にいらしてください。勿論、来なくても結構ですが」


 いつにも増して厳しいリリアス。タカキが見たら誰?とでも言いそうなほどである。実際、ダンガとアメリアはリリアスがここまで怒ったことに驚いていた。リリアスを止めることを辞めたはいいが、ここまでだとは二人も思わなかったのだろう。


 しかし、リリアスからしたらこの十人は傲慢もいいところなのだ。リリアスは自身の現状をどうにかしたくてタカキの仲間になった。しかし、それでタカキに頼りっきりになろうとは一切考えなかった。むしろ、強くなって頼ってもらいたいと最初から考えていたのだ。タカキは自分を救ってくれた尊敬する人であり、今はそれに加え、好意も合わさっている。それにタカキの仲間であるというプライドもある。こんな守ってもらうことしか考えていない十人と同列になりたくないのだ。それはダンガとアメリアも同じだ。


 リリアスは十人に向かって言うだけ言うとギルドの中に入って行った。ダンガとアメリアもそれに続く。


『『・・・・・・』』


 それ以降、黙ってしまう十人。そこへ冒険者がやって来て、話しかけて来た。


「あんたら、よくあのグラスプに絡んだな」


「へ?」


 皆川がどういうことか理解できないと言った感じでマヌケな声を出す。


「だって、あの黒の英雄にして、狂った死神がリーダーのパーティーだぞ?よく死なずに済んだな」


「狂った死神?なんですか、それ?」


 皆川たちは黒の英雄しかタカキの情報を持っていない。そんな二つ名は初耳だった。


「あんたら最近王都に来たのか?それじゃあ知らないのも当たり前か。いいか?さっきの三人が所属しているグラスプってパーティーのリーダーは少し前に黒の英雄と呼ばれるようになった」


「それは知っています」


「そうか。それでその黒の英雄なんだがな。この王都に来てからギルド長の願いで王族の継承問題に関わっちまったのよ」


 皆川たちは歴史の授業で習ったことを思い出し、想像した。


「そこで王弟派についた黒の英雄は依頼により、王子派の兵と貴族を皆殺しにし、姫騎士派の貴族を脅したんだ。そして脅しに屈しなかった貴族たちは黒の英雄によって惨殺されたんだとよ」


 その話を聞いて驚愕する皆川たち。自分たちはついこの間、盗賊を数人殺したが、それだけで精神が不安定になったのだ。それなのにタカキはすでに何百という人を殺していると言う。勿論、王子派の貴族と兵を皆殺しと言うのは誇張である。あの時は防衛に回っていた兵士だけを殺したのだし、貴族も王子の拠点に集まっていた貴族たちのみだ。


「それで付いたもう一つの名前が狂った死神ってわけさ。あんたらがどれだけヤバい奴らに絡んだか理解したか?理解したなら今後は気をつけるんだな」


 そう言って冒険者は去っていった。注意をしてくれるだけその冒険者はいい奴である。他の冒険者たちは樹里達がリリアスたちに絡んだ瞬間、そそくさと逃げて行ったのだから。


「そんな。孝希君・・・」


 皆川は茫然と立ち尽くした。


「谷上君は変わってしまったの?」


 樹里は誰にも聞こえないくらい小さな声でそう呟いた。




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