表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/521

第92掌 再会 その3



 中に入ると村長が祈るように黙祷していた。


「すみません」


 そこに俺が声を掛ける。村長はそれでも黙祷を続ける。


「あのー。すみません」


 もう一度話しかける。村長はまだ黙祷を続ける。


「あのー!すみません!」


 村長の近くで大きな声を出して話しかける。


「おわっ⁉一体なんじゃ⁉」


 ようやくか。


「ちょっといいですか?」


「ん?あんた方は?」


「俺達は王都のギルドから依頼を出されて救援にやって来た冒険者です」


「‼」


 村長は俺の言葉を聞くと慌てて俺に詰め寄って来た。


「何をやっておるのだ!」


「いや、挨拶をと思って」


「そんなことはどうでもいいから早くモンスターをどうにかしてくれ!」


「いや、あのー」


「何じゃ⁉」


 俺は村長が必死に詰め寄ってくるからなんだか言いづらい。そこにリリアスがフォローしてくれる。


「終わっています」


「はぁ?」


「いや、だから。モンスターはすでに全て倒し終わっています」


「・・・・・・」


「「「「・・・・・・」」」」


「・・・・・・」


「「「「・・・・・・」」」」


「な、なんじゃと⁉」


 村長はリリアスの言葉が信じられないようで、外へと駆け出していった。


「おいおい。俺達はどうすんだ?」


 ダンガが困ったように呟いた。




             ・・・




 その後、少しの間、その場で待っていると村長が帰ってきた。どうやら村人たちに確認をしに行っていたらしい。


「ほ、本当に倒し終わっとる・・・」


「だから言ったじゃないですか」


 俺はため息を出しながら言う。リリアスが本当のことを言ったのに信じないなんて。それこそ信じられない。


「悪かったな。それで?儂はどうすればいいんじゃ?」


 村長は謝った後に聞いてくる。


「はい。こちらにサインをお願いします。サインをしてもらえば依頼達成になりますので」


「分かった」


 俺が出した依頼書にサインを書き込む村長。


「これでいいか?」


「ええ。確かに。それでは俺達はこれで失礼しますね」


「そんなに急がなくてもいいんじゃぞ?一日ぐらいこの村で休んで行って構わん」


「いえ、まだ俺達には王都でやらなくてはいけないことが残っているので、少ししたら帰ります」


「そうか・・・。こんな何もない村を救ってくれて感謝する。ありがとう」


「いえ。それよりもこちらの村にいた十人の冒険者にその言葉を上げてください。あの十人がいなければ俺達は間に合いませんでしたから」


「そうじゃの。あい分かった」


「それでは」


 俺達は村長の家を出た。


「それで、どうするのよ?」


 村長の家を出るとアメリアが聞いてくる。


「何をだ?」


「とぼけないで。あの十人のことよ」


「んー、そうだなー。一応、王都まで連れて行こうとは思っているけど」


 俺の神の依頼の方にはあんまり関わらせたくないかな。かなり危ないし。


 俺の乗り気ではないその様子にアメリアは察して納得する。


「そう。分かったわ」


「こっちとしてもそれはありがたいね」


 と、そこに知らない女性の声が聞こえて来た。


「誰だっ⁉」


 俺の把握から逃れている。こんなの初めてだ。


「ここよ、ここ」


 声のする方へと目を向けると家の屋根の上に女性が立っていた。


「あんたは?」


 警戒しながら聞く。


「ちょっと!待って待って!私は敵じゃないから!」


「じゃあ、何だ?」


「味方よ!味方。あなたと同じ、神の使徒よ」


「何⁉」


 っていうか、そんなことをこんな場所で言うんじゃない!仲間以外にバレるだろうが!


 そう思って辺りを焦って見渡すと人が誰もいなかった。


「あれ?」


「私の力で人避けしたわ」


「そ、そうか」


 一安心するわ。


「私は地球神からこの世界に遣わされた使徒で、あの十人を守っていたの」


「そんな素振りをあの十人はしていなかったがな」


「そりゃ勿論、こっそりしていたに決まっているでしょ」


「なんでそんなことしてくれていたんだ?」


「他の二十数人は勇者として祀り上げたライドークに残ったからね。でも、あの二人を含むあなたを探していた十人は最終的に私たちの助けになると思ったのよ」


「それは誰が?」


「勿論、地球神」


「俺的にはあの十人には危険なことはやめておいて欲しいんだが」


 ステータスを見るまでもない。言い方は悪いが、俺と同じように召喚されてあの程度のモンスターにやられそうになるのなら神の依頼なんて出来るわけがない。


「まあ、あなたと違って巻き込まれただけだからね」


 地球の異世界ファンタジーの物語なら大抵、俺が巻き込まれた~とかそうなるだろう。だが、今回の場合は違う。俺に巻き込まれてクラスの連中がこの世界にやって来てしまったのだ。依頼が完遂したら神の野郎がそこら辺を何とかするだろうし、それまでは安全に暮らしていてもらいたいね。


「でも、ここで見放したらあなたが怒ると思ったから神も私を遣わしたのよ」


「どういうことだ?」


「あの十人以外の勇者になった他の人たちは国が守ってくれるわ。でも、あの十人は誰も守ってくれない。だからあなたの所にたどり着くまで私がこっそり守っていたのよ。知り合いが自分の所為で死んじゃったら嫌でしょ?」


 なるほどね。俺には後腐れなく依頼をこなして欲しいわけだ。


「まあ、それもここまで。あなたに合流したから私は神界に戻るわ」


「ちょっと待て!」


「なに?」


「あんたの名前は?」


「チェルムよ」


「そうか。チェルム、ありがとう」


「ふふっ。どういたしまして」


 そしてチェルムはその場から消えた。


「な、何だったんだ?」


 その俺とチェルムの様子をただ見ているだけしか出来なかったリリアスたち。ダンガがかろうじて声を出した。


「あ~。多分、種族に神が付いた者以外は固まってしまうのかもな」


 自分たちの上位存在だし。そうなると俺もだけど、種族の神の使徒(ヒューマン)のヒューマンの部分がいい仕事をしてくれているんだろう。


「動けませんでした」


「よくあなただけ動けたわね」


 リリアスとアメリアは額に汗をかいている。ダンガとの違いはレベル差だろう。ダンガはレベルがこの二人より高いため、二人よりも余裕そうだ。


「俺もあいつの仲間みたいなもんだしな」


「タカキさんもあんな感じになるんですか?」


「俺の場合は意識してやらないと出来ないな」


「そうですか」


 ホッとしているリリアス。まあ、あんな感じで四六時中いられたら近くにいる奴は困るからな。


「それじゃ、気を取り直してあの十人に会いに行くか」


 俺達は治療を行っている家へと戻るのであった。




読んでくれて感謝です。

感想・評価・ブックマークをしてくれると嬉しいです。

よろしくお願いします!


それと、「ウェルカム何でも相談所 ~神だろうが何だろうが俺に掛かれば悩みは解決!~」を更新しました。

よろしければ読んでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ