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たとえ、大好きな人が変わってしまっても 解答編

作者: 間口刃

 世界は日々変わっていく。


 それは僕個人ではどう頑張っても抗うことができないことである。


「おはよー、朝だよ!」

「頼む……。後、五分待ってくれ」

「ダメ!! 起きなさいっ」

「僕は、太陽を浴びたら死っ……」


 ーー目の前には、人型のGがいた。


 瞬間ーー人生最大の絶叫を、僕はした。


 そしてーーなんで、という疑問符が頭の中を埋め尽くす。


 最近ハマっていた漫画のせいなんだろう。

 そう思い頬を抓る。


 ーー現実だ……。


 幼馴染の声をしたGが目前にいる。


「そうだ、殺虫剤だ!!」


 だが、殺虫剤はキッチンにある。


「チクショー!! 何でねーんだよ、殺虫剤」


 ゴキ……Gが口を開く。


 形容しがたい気色悪い口元は再び声を発する。


「もうっ! 何寝ぼけてんの? マンガばっかり見てないで、勉強したら?」


 腕を組んで、威張っているG。


「お兄ちゃん!! なんかあった!?」

「頼む。殺虫剤持ってきてくれ!!」

「何言ってるの? ■■■さんしか、いないじゃない」


 この日から、幼馴染がGに見える日々が始まった。




 その後ーー数週間が過ぎ、僕がわかったことは3つある。


 1つ目は、他のみんなには普通に見えていて、学園での人気者である。

 2つ目は、僕にはどう頑張ってもGにしか見えないということ。

 最後に3つ目として、どうやら幼馴染は僕のことが好きらしい。


 高校に入り、様々な友人や先輩後輩との群青劇なような日々を過ごし、気づいたことだ。


 そして今日ーー僕たち二人にとって忘れられない思い出の地に呼ばれている。


 携帯画面からだと、僕のよく知っている幼馴染が伺うことができた。


 その写真だけなら、世界で一番に可愛いって胸を張って言えるけど。


 僕の目に映るのは、人の服を着たGなのである。


「夜遅くに呼び出してごめんね」

「いやいいって、それよりどうしたの?」

「最近、私たち疎遠じゃない? ねぇ、正直に言って。私のこと嫌いなの? 私……なにか悪いことしたかな?」


 Gが訴えかけてくる。胸に刺さる悲痛の叫びを。


 だからこそーー僕は包み隠さず、全てを伝えることにした。


「そんなの、あんまりじゃない……」

「あぁ。僕だって、そう思うよ」


 一定の距離を空けて、同意する。


「そんなに嫌いなら、嫌いって言えばいいじゃない!!」

「嫌だ」

「自分が何言ってるか、わかってるの?」

「わかってる……。わかってるよ」


 ーーあぁ、わかっている。


 いや、本当は理解していないのかもしれない。


 昔から、ずっと好きだった幼馴染。

 それが急にGに見えたからってーー僕にとって■■■は大好きな幼馴染だ。


 今まで好きだった気持ちに嘘偽りはなく、関係を絶とうとはしなかった。


 ならばーーーーたとえ、大好きな人が変わってしまっても。


 僕は、彼女が好きなんだ。


「例え僕にはGに見えても、■■■が好きだから僕と付き合ってほしい」


 そして。幼馴染を抱きしめ、キスをした。


 


 私は歓喜に震えていた。

 彼は私を、受け入れてくれたのだ。


 世界中でただ一人。


 ーー私には人に見える彼が、好きだと言ってくれたのだ。


 嬉しくないわけがない。

 この気持ちをーー彼に伝えなくてはならない。


 私は恐る恐るではあるが瞳を開け、彼に胸の丈を伝えることにした。


 ーー絶望に満ちた悲痛の叫びを。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王道から外してきて、結末が好き。 最初、どういう事?と首をかしげ、3回くらい読み返して自分なりの解釈をしてみました。 合っているのかわかりませんが、僕は好きな結末でした。 [一言] 好きだ…
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