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セットゥ

サボりすぎて…こんなの書いてあったんだという執筆中小説を書き上げました。

間が空きすぎて本当に申し訳ありません。

拗ねたシエラをなだめて、その場で別れ、俺は帰ろうと駅に向かった。

電車にしばらく揺られ、快速電車の停まる駅で乗り換えようとスマホで検索する。

(えーと…これか)

車内アナウンスが聞こえないので注意深く外を見て駅名を確認した。

ちゃんと自分の降りる駅で降りることができた。というのも多くの人がそこで下車したため間違えようがなかったからだ。

線を変えるため階段を上がると、甘く香ばしい匂いが漂ってきた。しかもかなり強い。

匂いにつられて行った先にはパン屋やお菓子屋が並び、パブロフの犬ではないが口の中につばがわく。


ゴクリ


メロンパンやカレーパン、チョコクロワッサンが好物で、見るといつも買いたくなってしまう。

(だけどもうケーキ食べたしな)

あまり贅沢をしては凛や母さんに申し訳ない。

(あ、じゃあ二人の分も買っていけばいいんだ)

これは名案とすぐに実行に移すことにした。

どの店もそれなりに客が並んでおり、その中でわりと空いている店に並んだ。

ケーキ屋と違って、パン屋は男女関係なくどの年代の人も立ち寄る。そのためケーキ屋に並ぶよりずっと緊張せずにいられるのが良い。

俺の番になって、メロンパンを二つ、チョコクロワッサンは小さかったので六つ、カレーパンを一つ頼んだ。

「–––––––は–––––––––––––」

「え?」

店員が何か言ったようだったが騒がしくて聞き取れない。

「–––––がそんなに–––んです。」

後ろに並ぶ客を見て内心焦りが生じる。

あまりもたつくと剣呑なことになりかねない。実際そういうこともあったので、胸ポケットに入れているメモ帳とポールペンを店員に手渡した。

「すみません。聞こえないので書いてもらっていいですか?」

すると店員が慌てだした。

狼狽えようにこちらが戸惑っていると、後ろに並んでいた会社員風の男が腕を掴んできた。

「あのさ、か そうでしょ。困って わか な の?彼女、外国人 だ ?」

見れば、名札の名前は確かに外国人のものだった。

狼狽えたのは恐らく日本語が書けないからだろう。

「すみませんでした」

不快そうに顔をしかめている男性に俺は素直に頭を下げた。

なんで俺が。

今まで何度思ったか知れない。

しかしまあ、今回は俺も注意が足りなかったから仕方ない。そう割り切る他無いのが悔しい。

「あの、やっぱりいいです。買うのやめます。」

再度頭を下げて、役立たずと悪態を吐きながら耳から補聴器をむしり取った。

結局、全然聞こえない方が都合がいい。

本当に、聞こえないのに、どうして分かってくれないんだろう。

「–––––––っ」

かっかしていた俺は男性がしまったと口を抑えたことに気がつかなかった。

パン屋に背を向けて歩いていたら、急に腕を掴まれて、二度目の不躾な行動にうんざりして振り返ると、掴んでいる人も同じでびっくりする。

その人は思いつめた顔で手にはパン屋の箱を二つ持っていた。

〈あの、これ。さっきは、気が付かなくて、失礼なことを〉

そう言って、箱をひとつ差し出してきた。

箱を受け取って中を見ると、頼んだものが全部入っていた。

(すごい。あの一瞬で全部聞き取って覚えてたんだ)

でも、ただで貰えない。

こんなにたくさん、ゆうに千円は超えるはずだ。

俺が財布を取り出すと男性はその手を抑えて首を振った。

〈要らないよ。貰ってほしい〉

この人、本当はとても優しい人なのではないだろうか。現に、店員さんを気遣って怒っていたのだ。

少しでも悪感情を抱いた自分が恥ずかしい。

人のことは、もっと、ちゃんと見ないと見えない。

ありがとうございます、と頭を下げると、男性は照れたように頭をかいて、それじゃと立ち去った。

少し、早とちりだったかもしれないと反省して、ちゃんと補聴器を耳に詰めた。

このパンと一緒に、さっきの人の話も聞いて貰おうと想像しながら一人にやついて、各駅停車に乗った。

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