認識
ヤバいヤバいヤバいヤバい!
狼共も標的をそちらに定めたらしい。
舌舐めずりをして、少女に向かっていく。
冒険者達は何をやってるんだ!
横目で見やると、何人かの冒険者が気付き、駆け始めるのが見てとれた。
しかし、それじゃあ遅い。
一人の弓使いが矢を射るも、目標が遠く威力が減衰してしまっている。
それに狼の一匹が反応し、前足で鏃を横からひっぱたき落としてしまった。
頭も相当回るようだ。
くっそ!もう少女と狼との距離は5メートルもない。
このまま見捨てても目覚めが悪いし…。
鋭い犬歯が少女に迫る、刹那、俺は布を纏ったままの正宗でそれを受け止めていた。
あぶねぇ…。マジで死ぬかと思ったわ。
狼は突然現れた俺に驚いたようで、後ろに跳躍しこちらの様子を伺っているようだ
この生死を別けるかもしれない戦闘の緊張感、敵の殺意…、夢とはもう思えない。
いや、薄々気付いてはいたんだ。ただまさかって思うじゃん。
狼たちは俺と、俺の後ろで怯えている少女のふたりを取り囲むように円陣を組んでいく。
ここは異世界だ。死んだら終わり。でも不思議と恐怖はあまりない。
スキルは使えるんだ。やってやるよ!
俺は、静かに正宗の布を解いた。