襲来
早速ブックマークに感想にと嬉しい限りです!皆さんご拝読ありがとうございます。
早速潜入してみると、そこはまあまあ大きい村のようだった。
俺は鍛冶屋や酒場が展開しているメインストリートと思わしき道を棒を杖がわりにしながら歩いている。
端から見れば満身創痍としかとられないだろう。
日も暮れ始めたため仕事を終え、鍬や鋤を肩に担いだ村民が帰途についていて人通りはそれなりだ。
皆こちらを一瞥はするが、興味はすぐ失せるようで、すぐに視線を前方へと戻す。見慣れた光景のようだ。
さて、これからどうしようか…。
とりあえず炉銀が尽きた旅人を装ってはみているものの、助けはありそうにない。
人の良心に訴えかける作戦は失敗に終わりそうだ。困った…。
次の手をあれこれ考えているうちに、目の前に大きな木造建築が見えてきた。
酒場とはまた違う意味で賑わっているようだ。
先程まで道ですれ違った村民のような格好の者は居らず、如何にも冒険者というような出で立ちの者ばかりだ。
ここは?もしかしてギルドとかいうやつでは?
いかん…以前のトラウマが甦ってきた。
さっさと立ち去ろう。
足早にルートを変更しようとしたその時、村の入り口付近から喧騒が波のように広がってきた。
「キャアアア!!」
「モンスターだぁあ!冒険者さん方っ、助けて下せぇ!」
避難してきた人々がギルドハウスにいる冒険者に向かって脱兎のごとく駆け寄ってくる。
モンスター?やっぱりいるのか。どんなやつなんだろ。
好奇心が勝った俺が村の入り口を見据えると、野犬?いや、おそらく狼だな、が6頭ほど確認できた。
見た感じのフォルムは普通の狼っぽいが、大きさが桁違いだ。体高だけで成人女性くらいある。
夕陽で銀色に輝く体毛が怪しく艶めき、口から30センチほど飛び出した犬歯がモンスターっぽさを際立たせていた。
…これは勝てませんわ…無理無理。逃げよ。
ギルドハウスの裏手の道へ、後退りながら逃げようとしていると、俺は見てしまった。目撃してしまった。
狼から逃げようと、小さい腕を必死に振りながら逃げていた少女が、思いっきり前のめりに転倒してしまった様を。
このままではまずい…!