第十話 関羽、見参
一人、出ていいのかわからない将が出てきますが…ファンの方はニヤニヤと、知らない方は後を楽しみにお読みください
「お待ち頂きたい」
その声がする方に目を向けると、そこには一人の大男が立っていた。見るとその男は髭は長く腹まであり、身長は2メートルを越そうかというほどであった。
「貴方は?」
劉備がきいた。
「某は司州河東郡解良県の関羽、字を雲長と申す」
「あ、お前知ってるぞ。河内で役人斬って追われていた野郎だろ?」
張飛が思い出したように叫ぶ。
「ご存じでしたか。地元の悪徳役人に気持ちが高ぶってつい殺ってしまいました」
関羽は少し反省した顔になった。
「それで、待つというのはどういう…」
劉備は口籠りながらも聞くと
「私も、その討伐に参加させていただきたい」
関羽はとんでもないことを言い出した。
「はあ?あんた、これがどんだけ危険かわかってんのか?」
張飛は怒りながらも心配そうな顔をした。
「ご心配召されるな。某は昔、腕利きの警察五十人に囲まれた時に傷一つ負わずに全てを斬った。ましてや、どこの馬の骨とも知れぬ賊どもなど、死ぬまでに二百は討ち取れましょう」
俺は三百は相手できる、とぶつぶつ張飛はぶつぶつ言っているが、実際これほど頼もしいものはいない。ここに攻めてきた黄巾賊は松明の数からだいたい五百程度と想像できる。自分も並の人なら充分に戦える自信がある。
そんなことを考えていると後ろから張世平が声をかけてきた。
「大変頼もしい限りです。まずは私の友人の蘇双というものを訪ねてくだされ。ここから東へ二里(約7キロ)のところに屋敷を持っています。このものも商人なのですが、馬商売をしております。そのものから馬を借りて下さい」
ありがとうございます、と劉備は頭を下げた。
「では行こう、益徳、雲長」
三人は立ち上がり、酒屋を後にした。
「頼みましたぞ、どうかご無事で」
張世平は静かに三人の無事を祈り、手を合わせた。
「玄徳殿、黄巾賊の兵力はいかほどかご存じか?」
蘇双の屋敷への途中、関羽はそう聞いた。
「よくは知らないが、山につけられた火の数からしてだいたい五百だと考えています」
五百か、と関羽は呟いた。
黄巾賊は兵が大きくなるにつれて制度が出来上がり、今では徹底した上下体制が出来上がっていた。もともと、農民によって構成されたこの軍は十人をごとに部隊を作り、それを十進法のようにしてどんどん集め、十隊集めて百人、それを十隊集めて千人…といった体制をとっていた。
今回相手にするのは十人部隊を十隊集め、それを五部隊相手にすることとなる。
このような単純な軍隊を相手にすることは簡単で、中央から切り崩せば下級兵は困惑していくのは必至である。
「策はできた」
劉備は呟いた。
「本当か(ですか)?」
それに対して関張二人は顔を見合わせる。
「まずは商人殿を訪ねることからだ」
劉備の言葉に二人は頷いた。
二里とは聞くほど長い距離ではない。三人の足でだいたい一時間と半ほどで着いた。
「蘇商人はいらっしゃるか?」
劉備は番をしていた男に聞いた。
男は容姿が整っており、身長は張飛ほどある。何よりも目につくのは脇に抱えた大きな槍である。
「確かに在宅ですが、一体どのようなご用件で?」
男の訪ねに、劉備は張世平からの手紙を渡した。男は手紙を読むと中へ入っていった。やがて蘇双が奥からやってきた。
「私が蘇双です。手紙は読みました。書いてある通り、馬をお貸し致しましょう。それからこの男を連れて行ってみてはどうでしょう」
劉備は蘇双の言葉にいやいや、と手を振った。
「これは大変危険です。それに他人を巻き込みたくはありません」
劉備はこれ以上人に迷惑をかけたくなかった。
「この者、私が常山(ここから西へ行ったところにある、冀州の北西部にある郡)で雇った用心棒なのですがもう契機も切れるところなので最後に一仕事頼みたいのです」
男は一歩進み出た。
「私からもお願いします。戦場を駆け巡るのは私の夢なのです」
劉備は深く頷いた。
「本人もその意思なのだったらお受けしましょう。名はなんと申されるか?」
劉備はそう聞いた。
「姓は趙、名は雲、字は子竜と申します」
この男とは縁がありそうだ。趙雲の声を聞きながら、劉備はそんなことを感じていた。
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