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三国志英雄戦記  作者: 羅本
一章 英雄になりたい
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第一話 授業をサボって

初めて書いた作品です。全部書くと長くなるかもしれませんが、何卒最後までお付き合いのほど宜しくお願いいたします。

 大きく息を吸って吐く。そして背伸びをする。全く、木の上は最高である。この地方特有の澄んだ空気が体中を洗って行く。

 ここは後漢の十四州最北西にある幽州の田舎、涿郡。その中心部にある涿県は都からやってくる商人によって静かながらも栄えたところであった。

 本来ならこの時間は劉備は塾、通称子幹学園に行っている時間である。経営者、盧植の字からこう呼ばれていた。しかし、劉備はさらさら行く気はなく。

いつもこうして木の上でまったりしているのであった。

「おーい、備!何やってんだっ!」

 叔父の劉完の怒鳴り声がした。

「うおっ!やべっ!」

 劉備はスルリと木から降りると駆け出した。

「あっ、待ちやがれっ!」

 劉完も追いかける。

「つっかまっらなっいよー」

 劉備は町の裏路地に入り、劉完からあっという間に逃げ切ってしまった。


 劉備の家は今でこそ貧乏だが、元をただせばそこには前漢の皇族、中山靖王劉勝に行き着く。劉備の中には立派な漢の皇室の血が流れていた。

 劉備は父親に早くに死なれ、母と劉完、従兄弟の劉冀と三人で暮らしていた。父が役人であったため、遺産はそこそこあり、そのお金で劉備たち一家は生活していた。

 劉備が塾へ行くのも遺産の中からである。全く学習しようとしない劉備に呆れて母は学資を止めようとしたが、叔父は「あいつは将来大物になる」と言って、諦めずに劉備を塾に行かせようとしているのである。


 劉備は川の土手へと出てきた。ここは村の中でも最も空気の澄んだ場所で、天気のいい日はここで得意の剣の稽古をするのが日課であった。


「また、授業をサボったのかい?」

 呆れたような声がかかったのはもう昼時を過ぎた頃であった。

「兄貴か」

 劉備は振り向かずにかえす。

「そうだよ。今日は簡雍も一緒だ」

「塾行くよう口説きに来たんだったら追い返すぜ」

 劉備はやっと体をそちらへ向けた。

 兄貴、こと公孫瓚は劉備と同じ子幹学園の生徒で優等生で通っていた。その一方で劉備の気持ちをよく知る人間であった。

 簡雍は劉備と同日に生まれた親友で、特にこれといった欠点も美点もない「普通」の男である。

「そんなんじゃないよ。これから、劉冀くんも誘って一緒に街はずれに行かないかと思ってね」

 簡雍が公孫瓚に変わって答えた。

「そんなことか。それなら乗ったぞ」

 劉備は快く返事するとすぐに荷物をまとめた。


 劉備は家まで劉冀を呼びに行った。

 劉冀はよく言えば慎重、悪く言えば臆病な美男子で劉備の二つ下である。自由人な劉備のストッパーであり、良き理解者でもあった。

「兄さん、また塾サボったんですか…」

 劉冀は劉備に呆れた顔を向けた。

「公孫瓚にも言われた…まあ、そんなことは気にせずいきましょーよ」

 劉備は劉冀の言葉に耳を傾けずそのまま簡雍や公孫瓚のところまで引っ張っていった。


 劉備一行は家を出て三十分ほどを歩いて村のはずれにある小さな山にやってきた。山とは言っても高さも子供が歩いて登れる程度の小さなものである。

「村にこんなところがあったんだ…」

 簡雍が呟いた。

「俺は冀と一緒によく肉を買いに来る」

 劉備はそう言いながらどんどん山の茂みへ入っていく。

「こんなところに肉屋があるのか?」

 驚いた声をあげつつも公孫瓚は平然と劉備について行く。

「公孫瓚さん、この辺りは治安が悪いんですからあまり来ないのが当然です」

「なるほど、劉備が無理やりにでもやってきたということか」

 察したように公孫瓚は言った。

 この頃は山賊などもよく出る時代で、人のにぎわった場所から少し出ればそこは危険にありふれていた。

「いいじゃねえか。そのくらい出てくれた方が面白い」

 劉備の言葉に劉冀は呆れるしかなかった。

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