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BLADE × ARMS  作者: 六花
第1章 『出会い』と『想い』
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第四幕 《忍び寄る影》



悠姫「はぁあああ〜〜・・・」

教室の片隅、机にしなだれかかるようにして座っている(突っ伏している?)悠姫。


朝のホームルームの後、すぐに復活した悠姫であったが会った先生、会った先生が・・・

男性教諭「お、朝霧、えらく綺麗になったじゃないか・・・」

女性教諭「あら、朝霧君、すごく綺麗になったわね・・・ぁぁ、お持ち帰りしたい・・・」


今、何か聞こえましたよ先生!ボソッと・・・!


男性教諭2「おおっ、可憐だ・・・!お前、本当に朝霧か!?」

先生・・・お願いですからそんな哀しそうな目で見ないで下さい、泣かないで下さい。


全てこんな感じだ。

挙げ句の果てにとどめがこれだ・・・

女性教諭2「あら、朝霧さん・・・女の子はちゃんと女の子用の制服を着ないと駄目じゃない・・・え、男の子?そんなことあるはずないでしょ・・・」


俺が疲れているのも分かるだろう?

まったく・・・先生にも呆れたもんだよ。



以上、悠姫の回想終了・・・



悠姫「もう、放課後か・・・時の流れだけが俺を癒してくれる・・・」

何処か愁いを帯びた様子は可憐で儚げな雰囲気を醸し出していて、見る者をはっとさせる。

実際、この場に残っている数人はそんな悠姫の様子に見とれ、動けないでいる。


しかし、この場の空気にさえ動じない人物が一人いた。

明月「ゆ・う・き・く〜ん、一緒に帰ろうよ〜」


悠姫「うげっ、また厄介なのが来たよ・・・」

この、クラスでも一、二を争う美少女が今は悪魔にも思える。


夕月「悠姫君、明月のセリフをとる訳ではありませんが、良ければ一緒に帰りませんか・・・?」

明月の後ろに隠れていて見えなかったのか、いつの間にか明月の隣にいる夕月。

悠姫「ああ・・・いいよ」明月と夕月からのお誘いに渋々ながら頷く悠姫・・・

悠姫からすれば断る理由もないのに断るほど、この二人の事を嫌ってはいない・・・


悠姫「それじゃあ、とっと帰ろぅ・・・」

荷物を片付けて立ち上がろうとした悠姫の動きが不自然なところで止まる。

明月「悠姫君?・・・どうかしたの?」

不自然に動きを止めた悠姫に、明月が訝しげな表情を浮かべる。

悠姫「・・・」

明月「お〜い、悠姫く〜ん!」

聞こえているのか、聞こえていないのか、故意に無視しているのか・・・

悠姫は怖い顔をしたまま周囲の様子を窺っている。


そんな悠姫の様子に、遂に夕月が心配げに声をあげる。

夕月「悠姫君・・・」


悠姫「・・・いや・・・何でもない」

明月「ちょっと待ってよ!何でお姉ちゃんにはちゃんと答えてるの!?」

自分だけ無視されたことに不満な明月・・・


悠姫「うぅ〜ん・・・気分?」

あぁ、また言わなくてもいいことを・・・

明月「むぅ〜〜」

あ〜あ〜、膨れっ面でかわいい顔が台無しだよ・・・

悠姫「さあ、帰るよ・・・」

悠姫は改めて鞄を抱え直すと教室の扉の方へと向かった。

明月「あ、待ってよ、悠姫君・・・!」

夕月「もう、明月ったら・・・」


扉のところで待っていた悠姫に追い付くと、三人仲良く?帰路に着くのであった・・・





家路についている途中、そろそろ高級住宅がちらほら見え始める辺りにさしかかった。


悠姫「・・・おい、どこまでついてくる気だ」

この辺まで来ると住宅の数は一気に減る。

そこそこな大きさの家が等感覚で並んでおり、見た目美しい。

建物の造りもシックなものがほとんどで、そのことがこの辺りの美しさを更に引き立てている。


もちろん、この二人の住んでいるところは知らないが、この辺に水無瀬なんて言う家は無かったはずだ。

すると、明月はにっこりと微笑んだ・・・それはもう天使の微笑みと勘違いしてしまうくらいにっこりと・・・


明月「そんなの悠姫君の家までに決まってるじゃない・・・」

悠姫は心底うんざりした顔で夕月の方を見た・・・

一褸の希望を信じて・・・

夕月「あ、私の都合なら大丈夫ですよ・・・」

何を勘違いしたのか的外れな返答を返す夕月。

一度言い出したらきかない明月に、何故か朝霧家への家庭訪問が楽しみなご様子の夕月。


どうやら、悠姫の退路は断たれたようだ。



仕方なく我が家まで案内することになった悠姫・・・

悠姫「(まあ、このまま何事もないなら、それぐらいかまわないか・・・)」

教室で不穏な空気とでも言うか、誰かに睨まれているような気がして以来、ここに到るまで常に気を巡らしていた悠姫であったが、場所が場所だけにもう襲って来ないだろうと気を抜いてしまったのだが・・・


そうは問屋が卸さないようだ・・・



突然、空気の密度・・・匂いとでも言えば分かりやすいか・・・が、変わったかと思うと、三人を取り囲むようにして現れる男達。

その数は十数人だろうか・・・皆、手に各々の武器を握り油断なく構えている。

見たことのない顔ばかりだが一つ言えることは皆、御劔学園の生徒だということだ。

その証拠に自分達と同じ制服を着用している。


悠姫「まあ、何事もなく済むはず無いよな・・・」


悠姫が嘆息していると急に人波が割れ、リーダーと思われる一人の男が前に出てきた。

達也「俺の名前は日野達也。朝、お前らに伸された日野和也の兄だ・・・」


律儀にも名を名乗る相手・・・

それにしても日野達也に日野和也・・・

日野・・・達也・・・

悠姫「日野・・・そうか、No.5、七帝の日野達也か!・・・でもなんでそんな奴が俺に挑む?それに和也って誰だ?そんな奴倒した覚えないけど・・・」

達也は悠姫に憤りを見せるわけでもなく、静かに悠姫を見据えていた。


達也「今朝、お前らにやられたグループのリーダーだよ・・・まあ、一瞬でやられたみたいだから覚えて無くても仕方ないか・・・」悠姫と達也が静かに会話している様子を見て、はらはらしている明月。

夕月はその隣で静かに様子を窺っていた。

悠姫「ああ、あいつか・・・いや、あまりに似てないから分からなかった・・・」

悠姫の言葉に笑みを浮かべる達也・・・

達也「よく言われる・・・実に似てない兄弟だなってな」

達也が微笑んだことでこの場の空気が柔いだ。


明月がこのまま行けば、争わなくて済むかも、と思ったくらいだ・・・

しかし、世の中そんなに上手くいく筈ないのだ・・・

達也「だが、どんなに似てなくても、不出来でも、あれは俺の弟なんだ。・・・その落とし前だけはつけさせてもらう!」

一瞬にして場の空気が張りつめたものへと変わった。

達也はその手に紅に染まる槍を握る。

達也「紅蓮槍騎の達也いくぞ!」


七帝にはそれぞれ使用している武器に応じた異名が与えられている。

達也は深紅に染まる槍を使うため紅蓮槍騎とよばれている。


槍を片手に突進してくる達也に悠姫は盛大なため息をついて、自身も応戦の体勢をとった。


悠姫「まったく・・・今日は人生で一番ついてないんじゃないか・・・?」


達也は一息に悠姫に肉薄したかと思うと槍を放り下ろした。


悠姫はそれをバックステップすることで回避する。

しかし・・・

達也「あまい・・・!」

達也は降り下ろした槍を、体ごと回転させることにより、遠心力をのせた上で強力ななぎはらいを繰り出してきた。

悠姫「ちっ・・・」

迫り来る刃に姿勢を低くし、抜刀する。


刃と刃が交錯し互いに弾かれる二人・・・


悠姫「流石は七帝・・・今のには、一瞬ヒヤッとしたよ・・・」

言葉とは裏腹に、そんな様子をあくびにも出さない悠姫。

対して達也は何処までも真剣だった。

あの一撃を、ああまで容易く防いだのだ・・・まぐれで通せるものではない。

ましてや、悠姫はNo.121・・・まぐれや偶然で防げる程、このランクの差は甘くはない。


達也「・・・お前、何者だ。まさか、あの一撃を防いでおいて、まだ格下だとかか言うんじゃないだろうな・・・」


悠姫「さぁね、どうでもいいだろ。そんなこと・・・」

悠姫の言葉に何を感じたのか、達也は頷き微かな微笑さへ浮かべた。

達也「そうだったな・・・俺らの闘いにランクなんて関係なかったな・・・いや、私情関係なしにお前と闘いたくなった」

達也の態度、性格を知って嘆息する悠姫・・・

悠姫「何でお前みたいなやつが、あいつと兄弟なんだよ・・・」



いつしか二人は真剣な表情で互いを見つめ、契機を窺っていた・・・






次回予告


静かなにらみ合いがいくら続いただろう・・・

数分、数十分・・・それとも、わずか数秒だったのだろうか・・・


永い沈黙の果てに、悠姫の剣と達也の槍が交わる・・・



次回、《魅せる剣》


達也「何故、俺の攻撃が通らない・・・」


夕月「綺麗・・・まるで舞っているみたい・・・」

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