宇宙SFで地球を占領するには、何人必要なのか (。´・ω・)?
宇宙SFでは、たまに恐ろしく簡単に惑星が陥落する。
「敵の惑星に地上軍一個連隊を降下させた!」
そして次の場面では、
「三日後、惑星は完全に制圧された」
などと書いてある。
いやいや、ちょっと待って欲しい。
その惑星、地球くらいの大きさではなかったのか?
地球の陸地面積は約1億5000万平方キロメートルもある。
しかも現在の地球には80億人以上が暮らし、現役軍人だけでも世界全体なら2000万人前後いる。
さらに予備役、警察、国境警備隊、民兵、退役軍人などまで含めれば、武器を持って抵抗できる人間はさらに増える。
そんな場所へ、
「精鋭の連隊2000名を投入する!」
と言われても困るのである。
2000人で地球を制圧しようとすれば、一人あたり7万5000平方キロメートルほど担当することになる。
兵士一人に北海道一個分くらい任せる勢いである。
「お前は北海道を頼む」
「了解しました!」
無理である。
では、本気で宇宙から地球を攻めるなら何人必要なのだろうか。
もちろん宇宙側が圧倒的な技術を持ち、軌道上から好き放題に攻撃できるなら話は変わる。
空軍基地も海軍基地も宇宙から破壊。
衛星通信も停止。
大規模な軍隊が集結すれば、軌道上から監視される。
それでも地上へ降りて占領する兵士は必要である。
私なら、本格的に地球規模の惑星へ侵攻するなら、最低でも1000万人。
相手が今の地球と同程度の軍事技術を持ち、本気で抵抗するなら、3000万人くらい投入したくなる。
……3000万人。
なんだか凄い人数だが、それでも全員が敵と撃ち合うわけではない。
食料を運ぶ人。
弾薬を運ぶ人。
戦車や宇宙艇を修理する人。
負傷者を治療する人。
通信を維持する人。
捕虜を管理する人。
軍用道路を作る人。
占領した都市や軍事施設を警備する人。
戦争とは、驚くほど大量の人間が後ろで働くことで成立している。
そして一番面倒なのが地下基地である。
未来の地球なら、重要な司令部や兵器工場が地下数百メートルに作られていても不思議ではない。
山の中に巨大な軍事施設。
地下鉄道でつながった補給基地。
何十年間も籠城できる食料備蓄。
そんなものが世界中に存在したら、軌道上から勝っただけでは戦争は終わらない。
一つずつ探し、一つずつ包囲し、一つずつ降伏させる必要がある。
だから3000万人を投入しても、「一か月で制圧!」とはならないと思う。
制宙権と制空権を握るまで数週間から数か月。
正規軍の主力を壊滅させるまで数か月。
主要都市と軍事拠点を押さえるまで半年から一年。
地下基地まで含めて組織的な抵抗をほぼ終わらせるなら、一年から三年くらいは欲しい。
しかも、それで終わりではない。
「地球軍は壊滅しました!」
と宣言した翌日から、
「南米で反乱です!」
「アジアで旧軍兵士が武装蜂起しました!」
「地下基地がまだ一個残っています!」
「占領政府の役人が暗殺されました!」
という楽しい日々が始まるのである。
完全平定には五年、十年、それ以上かかってもおかしくない。
だから宇宙帝国が賢ければ、地球人80億人を直接支配しようとはしないだろう。
政府を降伏させる。
自治権を認め、現地軍を再編する。
警察も行政官もそのまま使う。
宇宙帝国軍は重要な宇宙港や軍事基地だけ押さえる。
たぶん、こちらの方が圧倒的に安い。
なにしろ3000万人もの兵士を一年以上戦わせるのである。
食費だけでも恐ろしい。
砲弾もミサイルも無料ではない。
給料だって払わなければならない。
つまり惑星を一個征服した皇帝が、
「勝ったぞ!」
と喜んでいる横で、財務大臣だけが真っ青になっている可能性がある。
「陛下、今回の惑星攻略費用ですが……」
「いくらだ?」
「国家予算の三年分です」
「…………」
宇宙戦争になっても、結局最後に敵になるのは兵站と予算と時間、その長い時間への情報統制なのである。
だから私は、宇宙SFで惑星が三日で落ちる場面を見るたびに思う。
その兵士たちは鬼神の如く強い。
だが、一番強いのは、「細かいことは気にするな」と言える作者なのかもしれない(笑)
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