第10話:十字架、偽勇者、穢れた聖なる釘
オーレオン中央大通り――真昼の辱めの行進
太陽が焼けつくように毒辣くオーレオン王都の中央大通りを灼いていた。空気には塵埃、汗臭、腐った生ごみの酸っぱい匂い、そして……「狂気」という名の粘りつくような集団的興奮が充満している。通り両脇では人混みが沸き立ち、悪意に満ちた濁流のように渦巻いていた。歓声、罵声、卑猥な野次、子供の無知な真似の金切り声……無数の音が混ざり合い、耳を劈く、吐き気を催す騒音の嵐となっていた。
その嵐の中心で、ゆっくりと移動するのは、死そのものだった。
粗末な丸太で組まれた囚人護送車が、軋みながら舗装された道を進む。その上に、同じく粗末で、深い茶褐色の汚れ(血か何かか)が染み込んだ十字架が立てられていた。
十字架に、釘で打ち付けられていたのは「人間」だった。
より正確に言えば、辛うじて人形を保った、ボロボロの残骸である。
シオン・ブラックソーン。
彼は勇者詐称、王女への不埒な企て及び事後の暗殺未遂、王女付き女僕セリーナ・シャドウウィーヴ殺害の罪で有罪判決を受けた。
かつての身分を象徴する勇者の装束は既に剥ぎ取られ、手の甲の勇者の紋章も消え失せ、血に染まったぼろ布の切れ端が辛うじて下半身を隠すのみ。毒日にさらされ、無数の貪欲な視線に晒された全身には、背筋が凍るほどの傷痕が刻まれている。鞭痕が縦横無尽に走り、皮肉がめくれ、深くは骨まで見える。新しい傷口からは黄色い滲出液と血の筋がにじみ、古く化膿した鞭痕の上に暗赤色の瘡蓋を形成している。凌遅の切り口が無数にあり、まるで無数の毒虫に食い荒らされたように、肩甲骨から大腿部まで広がり、所々には白骨がむき出しになっている箇所さえある。両腕は乱暴に広げられ、手首は錆びた太い鉄釘で貫かれ、十字架の横木にがっちりと打ち付けられている。黒ずんだ血が膿と混じり合い、木目を伝ってゆっくりと流れ落ち、囚人護送車の汚れた床板に滴り、かすかな「タッ…タッ…」という音を立てる。両足も同様に鉄釘で貫かれ、縦木の基部に打ち付けられている。
彼の頭は力なく垂れ、血と汗と塵にまみれた黒髪が額と頬に貼りついている。顔には打撲痕と腫れが広がり、片目はほとんど開けられず、もう片方も細い隙間だけ。瞳孔は拡散し、焦点を失っている。乾いてひび割れた唇が微かに開き、かすかな息のたびに血の泡が湧き出て、身体は制御不能な微細な痙攣を繰り返している。
光が…白く…刺す…太陽…針…目に…脳みそに突き刺さる…
(強光刺激)
ブーン…ブンブン…たくさん…虫…いや…人…声…うるさい…耳が痛い…
(騒音が歪んで変形)
揺れる…地面が…揺れる…車…木…きしむ…骨…も…鳴る…
(囚人護送車の揺れが苦痛を増幅)
痛い…どこもかしこも…焼ける…針で刺される…引き裂かれる…空っぽ…中身…抜かれた…
(全身の激痛と力を奪われた虚無感)
寒い…すごく寒い…太陽…明らかに…熱いのに…血…流れてる…体温を…奪って…
(失血による寒冷感)
視界…ぼやける…揺れる…金色の…塔の頂…高い…昔…見上げて…入って…
(栄光尖塔の影が揺らめく視界で歪む)
人混み…顔…歪む…口を開けて…笑って…罵って…腐った野菜…腐った卵…飛んでくる…顔に当たる…ベトベト…臭い…
(民衆の反応が悪夢のような光景に歪む)
「詐欺師!」「卑しい偽物!」「穢れた蛆虫め!」「王女を冒涜するとは!」「死ね!」
(悪意に満ちた罵倒が実体の刃のよう)
「見よ!これが偽勇者の末路だ!」
「王室の威厳は冒涜を許さぬ!」
「レオナ殿下万歳!」
「ふふっ、ひどいね…」「当然の報いよ!」
「ママ、あの人どうして血が出てるの?」
「見ちゃダメ!穢らわしい!」
(無関心、好奇、無知)
エリー…雨の夜…ネックレス…緑の光…点滅…逃げて…ごめん…できなかった…
(意識の破片が深い傷口を刺す)
鏡心湖…水…真っ黒…冷たい…沈んでいく…エリーの…手…掴めない…
車輪が小石に乗る度、四肢を貫く鉄釘が骨肉の中で軋み、魂を引き裂く新たな激痛が走る。腐った野菜、腐った卵、果ては石塊までが雹のように彼の頭や体に降り注ぎ、粘つく汚物が傷口から流れ出る血と混じり合い、全身を覆った。悪意に満ちた罵倒、下品な哄笑、狂気的な歓声が、無数の焼け灼けた鋼針のように、かろうじて保たれた危うい意識を繰り返し貫いた。
彼の目に映る世界は、もはや明確な景色ではなく、砕け、歪み、強烈な悪意と異様さを帯びた色塊と騒音の渦だった。かつて王宮に足を踏み入れた時、目にしたのは聳え立つ尖塔、磨かれた石畳、身なりを整えた人々。心には異世界への憧憬と英雄になる幻想が宿っていた。今、かすかに開いた眼差しに映るのは、揺らめきぼやけた、嘲笑うかのような栄光尖塔の歪んだ影、足下の汚れた泥濘に満ちた通り、そして狂気、憎悪、無関心、好奇で歪んだ、地獄の悪鬼のような無数の顔だった。
狂熱的な群衆は血管のように張り巡らされた王都の通りを下水道の濁流のように渦巻いていた。
空はなぜこんなに碧いのか。
栄光尖塔はなぜこんなに輝くのか。
巨大な屈辱感は、裸体に晒されたことからではなく、この徹底的な、強要された汚名、力の完全な喪失、エリーへの約束の完全な粉砕から来ていた。彼は「罪人」という名の十字架に打ち付けられた展示用の破損標本のように、かつて夢見た出発点で、「正義」の唾棄を受けていた。精神は連続した拷問と力の剥奪ですでに崩壊寸前であり、今この行進の一秒一秒が、残された意識を絶望の淵へと投げ込み、挽き砕く行為だった。
王宮密室
中央大通りの地獄のような喧騒と悪臭とは絶対的な対照を成す、王宮深奥の豪奢を極めた一室。高価な冷たい香りが漂い、分厚いベルベットのカーテンが光を濾し柔らかな陰影を作り出している。
レオナ王女が、雪豹の毛皮を敷いた長椅子に斜めに寄りかかっていた。細い指で水晶のゴブレットを摘まみ、中には血のように深紅のワインが注がれている。威厳ある祭服は脱ぎ捨て、だらりとしたが莫大な価値を持つ銀糸の寝間着に身を包み、金髪は滝のように流れ、碧眼は柔らかな光の下で猫科動物のような冷たく満ち足りた光沢を宿していた。彼女は入浴したばかりで、肌にはローズ精油の芳香が漂い、密室の外で十字架に打ち付けられ全身血と汚れにまみれた「罪人」とは、まるで別の宇宙にいるかのようだった。
彼女の腹心、翠銀の風鈴(Emerald Zephyr Chime)の所有者である女伯爵リディア・ウィンドウィスパー(Lv92)が、向かいの彫刻を施した肘掛け椅子に優雅に座っていた。彼女は相変わらず上品な深緑のロングドレスを身にまとい、指先で繊細なボーンチャイナのカップの縁をそっと撫でていた。顔には微かに、完璧な棋局を鑑賞するような微笑みが浮かんでいる。
「儀式は成功裏に終わりました、殿下」リディアの声は平然としており、日常の公務を報告するようだった。「『勇者の涙』の力はかつてないほど満ち溢れております。カインと他の勇者たちの潜在能力は、完全に覚醒いたしました。『屑』の最後の価値は、見事に搾り取られました」
レオナは赤ワインを一口含み、深紅の液体が彼女の唇に妖しげな痕を残した。彼女はだらりと杯を揺らしながら、コップの壁に付着する「血の涙」を見つめた。「あの卑しい女、エリーの死体は、片付けたか?」その声には、些細な嫌悪が混じっており、邪魔な蝿を始末したかのようだった。
「無論、殿下」リディアが軽くうなずいた。「恐らく護民官派が死体を引き取ったのでしょう。彼女は最初から存在しなかったかのように。『王女を守って勇敢に死んだ』女僕――なんと感動的な物語でしょう」その口調には起伏がなく、既定の台本を読み上げているようだった。
「ふん」レオナは軽蔑の鼻息を漏らした。「卑しいスパイが『犠牲』などと?護民官派が我が寝床に釘を打ち込んだ借りは、遅かれ早かれ清算する!」碧眼に一瞬鋭い殺意が走った。
「それが肝心でございます、殿下」リディアがカップを置き、眼差しを鋭くした。「老狐フレイヴィアスは、この度は泣き寝入りです。彼の重要な駒を我々が排除し、なおかつ『忠僕救主』の芝居に協力せざるを得ません。しかし今は、彼らと完全に決裂する時ではございません」
レオナが眉を上げ、続けるよう促した。
「アスカロンの脅威が目前に迫り、東部魔潮の異変も警戒を要します。王国は内部の『団結』の仮面を、少なくとも戦争機械が動き出すまでは必要とします」リディアの声は氷のように冷徹だった。「もし今エリーの正体を暴けば、護民官派への宣戦布告に等しく、内輪揉れは避けられません。更に重要なのは――」声を潜め、疑いを許さぬ冷酷さを帯びて、「尊いレオナ王女殿下の身近に、護民官派のスパイが潜入し、しかもこれほど長く潜伏していたことを世間に知らしめること……これは王室が拭い去れぬ奇辱です!風見鶏の貴族どもの我々への信頼を大きく揺るがし、教会に介入の口実さえ与えかねません。王党派の威厳は、一滴の汚れも許されないのです」
レオナは黙り込み、碧眼に利害を量る冷たい光が揺らめいた。しばらくして、残酷で満足げな笑みが口元に浮かんだ。「言う通りだ、リディア。取るに足らぬスパイの死など、大局を揺るがす価値はない。彼女の『勇敢な犠牲』は、我々にとってより価値がある。その『忠僕』の称号を、護民官派の偽りの仮面を打ち砕く一本の釘としておこう」再び赤ワインを啜り、勝利の味を味わうかのようだった。
「そして外の『偽勇者』については……」リディアの視線は分厚い宮殿の壁を貫くかのように、中央大通りに打ち付けられた残骸を見据えているようだった。その声には全てを掌握する冷酷な快感が滲んでいた。「彼の『罪状』――勇者詐称、殿下への不埒な企て、暗殺未遂、『忠僕』エリーの死を招いたこと――いずれも『確たる』証拠が揃っております。更に重要なのは、彼の出自です」
リディアの指先がそっと肘掛けを叩き、澄んだ音を立てた。「汚らわしい孤児院出身の野郎、両親さえ知らぬ賤民め!その存在自体が『勇者』の神聖性への冒涜!彼の『罪』こそ、護民官派が吹聴する『貧民の代弁者』という虚偽を、徹底的に打ち砕く!」その瞳には悪意の光が宿っていた。「見よ、これが彼らが推す『平民代表』の正体だ!卑劣な詐欺師、恥知らずの好色漢、残忍な刺客!フレイヴィアスの人心を惑わす手口など、鉄壁の事実と民衆の怒りの前には無力!この行進、この公開処刑こそが、彼らへの最も響き渡る平手打ち!蠢く賤民どもや彼らに同情する腰抜け貴族を目覚めさせるには十分!」
レオナの微笑みはますます妖艶に、毒花のように咲き誇った。「結構。この穢れた聖なる釘を、もっと深く打ち込め。オーレオンの全住民に、王権への裏切り、身の程知らずの妄想の代償が何かをはっきりと見せつけるのだ。彼の断末魔を、我らがアスカロン進軍の戦鼓の前奏とせよ!」杯の残りを一気に飲み干し、深紅の液体が喉を滑り降りる様は、まるで仇敵の血を啜るかのようだった。
密室では、陰謀の芳香と権力の冷たさが絡み合い、無形の大網となって王国全体を覆っていた。そして密室の外、灼熱の太陽の下、万人の唾棄の奔流の中で、十字架に打ち付けられた無惨な躯の意識は、果てしない激痛と絶望の深淵で浮き沈みを繰り返し、ついに完全に沈んでいった。ただ魂の微かな種子だけが、絶対の静寂と闇の中で、宇宙誕生前の特異点のように、ほとんど存在しないと言っていい、劫火の中での復活の機会を、かすかに待ち続けていた。