第3話
「確かに『見た目は同じ』だったからね。『機能は抜群』と言われても、何がどう変わったのか、咄嗟にわからなくて……。戸惑っている僕にそれを押し付けて、彼女は消えてしまったのさ」
出来吉くんの話が終わると、僕たちは静まり返る。
とても信じられないような話だったからだ。
でも出来吉くんは嘘をつくような人間ではない。彼がそう言うのであれば、本当にあった出来事なのだろう。
「それで……。池で眼鏡が新しくなってから、テストの正解が浮き出て見えるようになったのか?」
「うん、そうなんだ。今のところテストは簡単だからいいけど、将来もっと難しくなった時、僕が解けない問題でも眼鏡のせいで答えがわかってしまうとしたら……」
なるほど、出来吉くんは、そんな遠い未来の心配をしているのか。
微妙に僕が納得していると、志津江ちゃんが僕に話を振ってくる。
「だったら一度、試してみましょうよ。解けない問題でも眼鏡のせいで答えがわかるというのが本当なら、それを使えば誰でも100点とれるんでしょう? こういう時こそ、乗山くんの出番だわ!」
「おお、そうだな。いつも赤点の乗山が、出来吉の眼鏡を使ったらどうなるのか。これは面白そうだぞ!」
江ノ川くんも、志津江ちゃんの提案に賛成していた。
僕だけでなく、誰のテストも赤字で点数が書かれているのに、なぜか彼は僕の点数を「赤点」呼ばわりする。「特別ひどい点数はそう呼ぶ」と中学生のお兄さんから教わったらしく、それ以来すっかりその言い方を気に入っていた。
こうして、当の出来吉くんそっちのけで、彼の眼鏡を僕が使う話が決まり、出来吉くんも渋々うなずいて……。