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第1話

   

「また100点満点か! いつもいつも出来吉(できよし)は凄いなあ!」

「当たり前よ。だって出来吉くん、私たちとは頭の出来が違うんですもの!」

 江ノ川(ごうのかわ)くんの言葉に対して、当の出来吉くんではなく、なぜか志津江(しづえ)ちゃんが誇らしげな態度だった。

 彼女は別に、出来吉くんの恋人でもなければ親戚でもない。「幼馴染だから、出来吉くんが褒められると私も嬉しいの」というのが志津江ちゃんの言い(ぶん)だけれど、それを言うならば僕や江ノ川くんも同じ。

 いや、志津江ちゃんと出来吉くんは幼稚園以来だから、もっと小さい頃から遊んでいる僕たちの方が、出来吉くん以上の幼馴染ではないか。


「これくらいの算数なら、普通に勉強していれば簡単なはずだけど……」

 出来吉くんは謙遜のつもりかもしれないが、少し嫌味にも聞こえる。僕もきちんと普通に勉強しているのに、それでも毎回ひどい点数ばかりなのだから。

「……最近は、ちょっとズルしている気分もあってね。なんだか恥ずかしいよ」

 照れ臭そうに頭をかく出来吉くん。

 そんな彼に寄り添って、志津江ちゃんは何気ない顔で尋ねた。

「あら、どうして? 出来吉くんの100点、日頃の勉強の成果でしょう?」

「うん、僕としてはそのつもりなんだけど……」

 ここで彼は声を小さくして、体も少し(かが)めて、いかにも内緒話という雰囲気を作る。

「……僕が答えを書くより早く、解答欄にそれが見えてくるんだ。これじゃカンニングと同じじゃないかな、って心配でね」


 見えてくる答えというのは一応、出来吉くんが書き込むつもりで思い浮かべる答えと、全く同じものらしい。

「あら、それじゃカンニングにはならないわ」

「だけど、結果的にそれで100点になるということは、その見えてくる答えが、全て正解だったわけだからね……」

「でもその正解こそが、あなたが書くつもりだった答えだったのでしょう? だったら問題ないし、気にする必要なんてないわ」

 出来吉くんを慰める志津江ちゃん。

 それよりも僕は気になる点があるのだけれど、江ノ川くんも同じだったらしく、それを口にしていた。

「だいたい、なんでそんな不思議なことが起こるんだ? きっかけみたいなもの、何かあったのか?」

「うん。原因は僕の眼鏡でね……」

   

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