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-02-


いつもの様に宿屋を出てすぐにギルドに顔を出す。冒険者のルーティンだ。


「ショウさん、おはようございます。ギルド長がお待ちです。」


僕が入ってきたのに気付くと、にこやかに挨拶をする受付の女性にいつもと違う事を言われる。まあ、たまにある事だ。

魔人種は高濃度の魔素でも問題なく活動できる為、僕にしか出来ない依頼が入った時にギルド長から直々に説明があるのだ。今回もその類なのだろう。


一つ頷き、案内をかってでた受付の1人の後を追う。何度も通った事のある所だけど、仕事を取るのは辞めろとギルド長に言われているし。


「シュウさんをご案内して参りました。」


ノック音の後に続けて職員が告げる。


「入ってくれ。」


部屋の中から少し緊張気味のギルド長の声がした。

いつも案内されるギルド長室ではない、部屋に案内されているのと相まって面倒事が来た事が窺える。


中に入るとやはり少し緊張気味のギルド長とどっからどう見ても身なりの良い貴族風の男とその護衛の様な男。


「……面倒事みたいだね。」


思わず溢れてしまった言葉に、貴族風の男は苦笑いして護衛の男を止めている。


「掛けてくれ。」


貴族風の男の言葉に従い、ギルド長の隣に座る。貴族風の男はなんととも和かに微笑んでいる。


「私はシャルバラン。国王陛下より君への依頼を届けに来た者だ。」


シャルバラン・エル・ストーミィ・アルベージュ。

この国の王位継承第1位の王子だ。

偽名で名乗るなんて事を、許されない名だ。つまり第1王子がここにいる。


「国からの依頼はB級には荷が重いかと。」


「分かっているだろう。一国のみの依頼ではない、世界各国からの依頼になる物をただのB級に依頼しない事は。」


つまり魔王が現れた事を確信している国全てから、ストーミィ王国が代表として僕に依頼をしてきたのだ。この依頼は断る事が許されない、強制される物だ。僕を殺す事は人間には出来ないのに、強制出来ると思っているのだろうか?

まあ受けるけども。


「魔王が現れた事は君からもたらされた情報だ、魔人のシュウ。」


「今この国にいる魔人種は僕だけだからね。」


王族に対する態度じゃないのは承知だけど、僕よりギルド長が死にそうな顔してる。僕に国の地位は関係ないし、魔人種は隠匿されている存在だから表ざって話せない。

正式な場所では出来ない話をしたくて来ているんだろう。


「勇者召喚が成功したのは知っているかな?」


「分かるよ、一ヶ月前だね。」


勇者の召喚が成功した事はまだ発表されていない。発表すると旅を出発させるまでが早まるからだろう。異世界の住人からしたら、この世界の常識なんて何も分からないのに放り出せないのだろう。

ギルド長は依頼内容から勇者召喚が成功したのは推察していたのか、驚いている様子はない。


「彼には今この世界の常識を覚えてもらいつつ、剣術等の戦闘技術を学んでもらっている。」


思っていた通り、お勉強真っ只中の様だ。


「教会の聖女と共に、王宮である程度の知識と戦闘技術を得つつある。」


ん?教会の聖女?


教会、女神信仰のマレーア教会。

そのマレーア教会は聖なる力を宿した人を聖人又は聖女として、女神の奇跡を人々に齎している。聖なる力、神術と呼ばれる術は傷や病を癒す効果を持つ。

最上位の聖人又は聖女は、女神からの信託を受ける事もあると言う。


「教会は魔王討伐の為、現在最も聖なる力を宿した聖女、フィオネーラを勇者の旅に同行させると、聖女をこの国へ連れて来ている。」


まあ教会側からしても魔王討伐に出来る手助けしないと、滅ぶ可能性あるしな。


「勇者と聖女は2人とも旅の知識も戦闘経験もない。そこで、冒険者ギルドから旅慣れた、戦闘経験豊富な者に同行を依頼したい。」


なるほど、ここで冒険者ギルドが出てくるのか。これは表向きの理由だろう。一般市民向けと言った方がいいか。


「ギルド内で、戦闘経験をさせつつ守れる実力者はそう多くない。何よりパーティーを瓦解させかねない。」


ギルド長がソロである僕を選んだ理由を告げる。言い方は悪くなるが、実力不足の世間知らずを抱えるのは精神力が必要だろうしね。


「何より魔人的にも魔王は放っておかない存在の筈だ。」


その通りだ。

魔王は存在しているだけで、この魔素の循環を滞らせる。僕達魔人種は魔素に適応した種族、魔素が滞る事が世界に齎す悪影響を誰よりも理解している。

魔素の循環が滞ってしまったのを正す事ができるのは魔人種どけだ。


「なるほど、勇者の旅に同行しつつ魔素の循環を正すのが依頼か。」


笑顔の頷きが返って来た。

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