近未来の介護は変わっちゃうかも?
20××年
少子高齢化は加速に伴い、日本の年金制度は崩壊し、かつてあった会社の定年制は、消失した。認知症に対する治療薬の開発もその流れの加速を一層強固なものになった。
働けるものは何歳までも働き続け、介護施設に入るものの審査は変わり、施設の経営は形態が全く違うものになってきた。
とある介護施設、かつては90人の受け入れ人数に対して、高齢者の順番待ちという時代もあったが、いまや違う経営手段が変わって戸惑っていた。
そんな中で開かれた理事会。理事たちは頭を悩ませていた。
「昔だったら入居者だった人がスタッフとして働いている。何せ、90歳の正社員が元気に働いているのだから…」
「かと思えば、40歳で入居者という人もいるこの矛盾をどうするか?
以前に高齢の正社員を入居者と届けた不正を行った施設が取り潰されたケースもあるからな。いまやマイナンバーで全てが明らかになるからやりにくい。
今、うちで一番若い社員は何歳ですか?」
「70歳です。一昔前なら定年と言われた年齢を過ぎてます。
若い奴らは、スマホで仕事できると思ってますからね。
おかげで、若い奴らの方が早々と脳の劣化が進んで、施設に入ることになんてこともざらにあるご時世です。」
「我々、理事もみんな80歳以上だ。
国もなんとか手を打とうとしてるが、その国家議員も若くて75歳だからなぁ。
まあ、先進国と言われる国は、どこもかしこも似たようなものだそうだ。」
理事会は同じ議論を繰り返し堂々巡りを繰り返していた。
このような施設の嘆きだけでなく、国会でも若い人がいないことが問題となるのは、いつものことであった。
「総理、総理はおいくつになられました?」
「83歳ですが?」
「我々、議員は皆、いわゆる高齢者です。
若い人の声を吸い上げるといっても若い人は政治に全く無関心です。というより関心が持てない状況です。
議員特権はすでに、先先代の総理のご英断で返上しましたが、既に時遅く、世襲議員ですら成り手がいません。
ここは与野党の枠を超えて若手の議員をいかにして誕生させるか?考えないと。」
当の若者たち。スマホを片手に話していた。
「なんかおっさんやおばさん達が、オレらのことをなんとかしないといけないって言っているらしいけど」
「余計なお世話だよな。オレらだって、しっかりと働いているよな。
よし、株が上がった、そろそろ売りだな。」
「本当だよ。しっかりと働いて誰にも迷惑かけず生きているのにな!
よし、買いだ。」
一人の高齢者がその姿を眺めていた。
『スマホ脳と言われ初めてから、彼らの脳はどんどんと萎縮して行った。
いわゆる若年性認知症と言われる奴だ。
この国は、若者の認知症で危機的になってしまった。
あの株式ゲームも私達が用意したものだ。
全く非現実的なものだ。
認知症治療薬も幼い頃からスマホを使っている若者には全く効果はないとは皮肉なものだ。
後は、あの薬だな。我々は何歳まで働くのか?』
認知症治療薬の後、数十年後に不老不死ではないが、長生きの薬が出来て健康寿命が伸びて以来、高齢者は長生きし、若者はスマホの使い過ぎによる弊害で若年性痴呆症を発症し、国の未来は出口が見えなかった。