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第2話

 

 自分の前世は、仲の良い両親と一人の姉の4人家族の家庭だった。

 家族構成だけ見れば、どこにでもいる家族だが、一つだけ違っていたのは、父を筆頭に海の熟練者と言える家族だったということだ。


 父の口癖は、

「六分儀等の天測器具を使う等、真の船乗りならば恥とすべきだ。真の船乗りは、ポリネシアの船乗りのように天測器具無くして、天測航法ができて当然だ」

 というものだった。

 実際、かつてのポリネシアの船乗りは、天測器具無くして天測航法を行い、例えば、タヒチとハワイの間を帆船(航海カヌー)で往復していたそうである。


 幾ら何でも無茶苦茶だ、と息子の自分でさえ考えていたが。

 実際に天測器具無くして、ヨットで世界周航を父が果たしては、周囲の多くの者が沈黙するしかない。

 もっとも父にしても、かなり無茶を言っていると自覚していたのだろう。

 息子の自分や妻や娘(自分から見れば姉)が、天測器具を使うのを父は黙認していた。

 ともかく、そんなことから、自分は天測器具が使いこなせるようになった小学校高学年の頃には、天測航法を実地で行えるようになっていた。


 そうはいっても、実際の自分たち家族の生活はどうだったかというと。

 父の冒険航海の手記や天測航法に関する出版物の印税を主な生活の糧としつつ、生活費の補助として沖合漁業(といっても、私達家族の主な漁場は、それこそ陸地が全く見えずで天測航法に基づいて赴く漁場が主なことから、必然的に家族全員が天測航法に慣熟してしまう有様だった。勿論、昨今のことだからGPSを使えば楽なのだが、父の存在からGPS等、自分達家族には使えなかったのだ)による収入で何とか自活生活を送っていた。


 そういった生活を送って、自分は高校まで卒業した後、とある関東地方の大学に合格して、ヨット部に入部した。

 そのヨット部では、自分は極めて重宝された。

 何しろ自分程、天測航法に長けている部員は、これまでいなかったと言っても過言ではなかったのだ。

 更に海に慣れていたことから、海上天候の急変等もかなりの確度で、直感的に自分は感知することができ、そうしたことからも重宝されたのだ。


 そして、父の名(地元にいる頃は自分は知らなかったが、大学に入って周囲から、父が天測器具無くして天測航法によるヨットでの世界周航を果たしたことで、ヨットの世界では、世界レベルの著名人であることを教えられることになった)と、実際に自分がヨットの名人であることが知られたことから。

 ヨット製造を主な事業としている、それなりの企業に自分は就職して、更にヨット等に関する知識を増していたところで、何らかの原因で急死してしまったのだ。

(何故に自分が前世で亡くなって、この世に転生してきたのか、自分はどうにも思い出せない)


 ともかく、こうした前世知識から、自分はヨットをできれば建造して、更には日本国外に逃亡することを考えるようになった。

 本来からすれば、少しでも自分の味方を増やして、母の北条政子や叔父の北条義時に勝って、自分が生き延びることを目指すべきなのかもしれないが。


 相手が余りにも悪すぎる。

 史実では、実家の北条家の為だから、と冷酷にも息子二人を死に追いやり、更に男性の孫全員も殺したのが北条政子なのだ。

 そうはいっても、流石に孫全員は殺せないとして、竹御所を政子は生かしたが、弟の義時は北条家の禍根を完全に断つ必要があるとして、竹御所まで殺し、最終的に姉の孫全員を殺戮したのだ。

 更には承久の乱で平然と朝廷に刃を向け、三上皇配流という暴挙を冷酷に行った姉弟だ。

 こんな冷酷な母と叔父を相手に、自分が勝とうとする等、無理ゲーにも程がある話だ、と自分は考えて逃げることにした。 

 話の中の描写が史実と違っています、というツッコミの嵐が起きそうですが。

 主人公が細かい歴史を知らないために誤解しているということで、平にお願いします。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >更には承久の乱で平然と朝廷に刃を向け、三上皇配流という暴挙を冷酷に行った姉弟だ。 [一言] 暴挙かなあ。殴られて殴り返して配流ならまあ穏便じゃないかねえ。
[気になる点]  もしも頼家さんが歴史上で大暴れしてた〈大叔父さん鎮西八郎為朝や叔父さん判官九郎義経〉並みの武勇を語られていたならガチで自分の天下を考えたんだろーなー(こーして見ると源家って頼朝の政治…
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