佐伯さんに好きな人を聞かれる
俺、秋山 修の隣の席に座る佐伯さんはとても可愛い。それはもうこの席をくじ引きで引き当てたときは俺の高校生活は終わってもいいと思ったほどに。
だけど、一つ不思議なことがあって、それは……
「秋山君! 秋山君!」
「どうしたの? 佐伯さん」
「好きな人を教えてください!」
何故かやたらと佐伯さんが俺の好きな人気にしてくるということだ。
「前の授業の時間にも言ったけどいないよ」
「嘘はよくないですよ、秋山君」
佐伯さんは俺に体を寄せると人差し指を突き出して「めっ!」と言った。その姿がとても可愛いことと佐伯さんのいい匂いが漂ってきたことで俺は顔を赤らめた。
ち、近い。
「もう、いい加減教えてくれたっていいじゃないですか!」
そう言って腕を組んで頬を膨らませた。
すねた佐伯さんも当然ながら可愛い。
「ほんとだよ」
嘘だけど。
「というか、どうしてそんなに俺の好きな人が気になるの?」
「それは当然……」
「当然?」
そこまで言いかけた佐伯さんの顔はみるみるうちにリンゴのように真っ赤になった。そしてその後綺麗な亜麻色の髪をくるくるといじりながら何かごにょごにょと言った。
「ん? 何て言ったの?」
「何でもないです! と、とりあえず教えてください!」
「えー、どうしようかなぁ」
焦らす俺に佐伯さんは「むぅ」と不満の様子だ。
「じゃあ、佐伯さんが先に教えてくれたら言うよ」
予想もしてなかったであろう俺の返答に「わ、私ですか!?」と驚いた後、あわあわと可愛らしい効果音とともに慌てだした。
「ひ、卑怯ですよ、秋山君!」
「卑怯ってなにが?」
可愛いなぁなんてことを考えながらニヤニヤしていると再び「むぅぅぅぅ」と頬を膨らましてすねてしまった。しかも、よく見たら涙目になっている。
そんなに悔しいのか、佐伯さん。
「あはははっ、ごめんごめん」
「秋山君は意地悪です」
「ごめんね、佐伯さんが可愛すぎてついからかっちゃった」
「か、可愛いっ……!?」
あ、固まった。
「おーい?」
「可愛い……」
可愛いという単語を顔を真っ赤にして何度も連呼している。そんな姿も可愛いななんてことも考えてしまう。ていうか、何してても可愛いんだけど。
「佐伯さん、俺の好きな人聞かなくていいの?」
「はっ!? そうでした。教えてください」
「それは……」
「うぅぅ……」
いざ俺が好きな人を言おうとすると今にも泣きだしそうになる小柄な美少女。
「えっと……」
「……ひっぐ、ぐすん」
涙があふれ出そうになるのを必死にこらえて「他の人の名前が出ても我慢です」とつぶやいている。
他の人の名前何て出てくるはずないのに。
そう、この少女俺の口から佐伯さん以外の人の名前が出てくるはずがないのに本気で違う人の名前が出るかもしれないと思っているのだ。
さらに、これだけの好意を向けてきながらもこの子だけは自分の好きな人を隠せていると思っている。
そんなところも可愛いんだけれども。
「待ってください、もう心が持ちそうにないです」
「聞かなくていいの?」
「聞きたいですけど……違う人の名前が出た時に立ち直れる気がしません」
「そっかぁ、立ち直れる気が……」
って、もうほとんど言っちゃってるよ! 佐伯さん!
「そうです、立ち直れる気が……」
そこまで言いかけた佐伯さんは自分の失態に気が付いたのかフリーズしてしまった。
「そ、その、えっと、これは……」
「うんうん」
佐伯さんの顔がだんだんと赤く染まってゆく。
「ち、違います! 別に秋山君のことが好きとかそんなんじゃあ……」
必死に取り繕う少女。今更ごまかしてももう遅いとおもうけど、佐伯さんが可愛いからわざと騙される。
「そうだよね、わかってるから大丈夫だよ」
「え、そ、そうですか……」
選択肢を間違えてしまったようだ。佐伯さんはしゅんと落ち込んでしまった。
「でもやっぱり佐伯さんが俺のこと好きだったら嬉しいな」
「え、それはどういう……」
「だって俺、佐伯さんのことが……」
「だ、だめです!! それ以上言わないでください~~!!」
じたばたと暴れながら恥ずかしがる少女。相変わらず、表情の変化が豊かだななんてことを思いながら、微笑んだ。
今日もまた、佐伯さんに好きな人を聞かれたのに告白することができなかった。
のんびりと書いていこうと思います。感想をいただけたら嬉しなって喜びます。
こういう作品面白いよというのも教えていただけると嬉しいです。
皆様にもラブコメのような出会いがあること願っています!
あと、本作のヒロイン佐伯さんに「がんばれ」と応援してあげてください(笑)
佐伯さん「リルもちさん!? は、恥ずかしいのでやめてください!」