マッチョ売りの少女
これは、あたしの身の回りで起こった、本当の出来事です。
あたしの友達にN崎君(仮)という男の子がいました。このN崎君は、いつの頃からか、身体を熱心に鍛えるようになり、徐々にマッチョになっていったのです。
思春期にはよくある事ですよね。青春の幻影です。皆さんの周囲にも二、三人はいたのじゃないでうしょか? マッチョになる同級生。
その頃、巷では『マッチョ売りの少女』という都市伝説が流れていました。暗い街中の裏通りで、マッチョを売り歩く少女が出るというのです。二つ穴の開いた袋を被せられたマッチョが、鎖に繋がれ、少女に引かれ、売られている。
そんな話があったものですから、あたしはN崎君に、ほんの軽い気持ちで、こんな事を言ってみたのです。
「そんなに身体を鍛えてたら、『マッチョ売りの少女』に売られちゃうわよー」
……もちろん、単なる冗談のつもりでした。
しかし、それから数日後です。N崎君は行方不明になってしまったのです。持っているはずの携帯電話に連絡してみても、出ない。
ただ、実は、皆には秘密にしてあるのですが、一度だけ、N崎君から電話がかかって来た事があったのです。ですが、それがとても信じられない内容で、あたしはそれを誰にも話せなかったのです。N崎君は電話をかけてきはしたものの、一言も喋らないで、あたしが幾ら問い掛けても何も返してはくれませんでした。そして、耳をすますと、向こう側からは、鎖の擦れる音と、「マッチョは、マッチョは、いりませんか?」という少女の声が。
もしも、行方不明になったマッチョが、あなたの近くにいたのなら『マッチョ売りの少女』に売られているかもしれません。
なかやま●●●君 とか、売られてそうですね。