終話 愛する弟へ
最終話です
(2話更新しています。ご注意ください)
親愛なるレイナルド
この手紙が貴方に届くかどうか……恐らくは、届かないことでしょう。それでも私が筆を取ってしまうのは、こうして手紙を通じて貴方と語り合う時間があまりにも長かったからかもしれません。
お父様が捕らえられました。お兄様も身柄を拘束されていると聞いております。
もうユベール家は終わりです。私達一族は叛逆の罪人として扱われることでしょう。
お父様のなさったことは決して正しいことではなかった。この裁決にユベールの一人である私は受け入れるべきであると思っております。
けれどレイナルド。貴方だけが心配です。
幼い貴方にまで罪の手が伸びてしまうことだけが、私にとって心掛かりでしかなりません。
それでも、貴方が一族に冷遇されていた事実は世間にも知られております。そのことがせめてもの温情に繋がることを祈るばかりです。
……貴方には辛い思いばかりさせてきました。
それでも、この先貴方がユベールに囚われることがない未来は、私にとって少しばかり慰めになっているの。
レイナルドは覚えているかしら。
初めてユベールに来た日のことよ。
私はずっと覚えている。
まだ四歳だった貴方が連れてこられた日。貴方は小さいというのに泣かないで黙ってお父様達のことを見つめていたわ。
人攫いにあったように連れてこられた貴方だったけれど、今考えてみれば全てを理解していたのでしょうね……
当時の私は分かりませんでした。
ただ、ずっと欲しいと思っていた弟が現れたことに喜んでいたの。可愛らしい天使のようなレイナルド。
私が撫でたらやっと貴方が泣いて私を抱き締めてくれた時。
私は生まれて初めて家族を持てたのだと思ったわ。
レイナルド。私の愛する弟。
私は貴方に謝らなければならない。
ずっと家族の愛情に飢えていた私は貴方に依存していたのだと……今になってそう思うの。
貴方を守るつもりで、守られていたのは私の方。
辛いことがあっても分かち合ってくれる貴方の存在が、私という人間を維持させてくれていたの。
だからなのでしょう。
ディレシアスの城に来てから私は生きる喜びを感じられなかった。
貴方とこうして手紙を贈りあう日々だけが唯一の支えであり、グレイ様の御心を引き止めるどころか諦めていました。
私がもっと……グレイ様と信頼関係を築いていたのなら、お父様にもっと提言申し上げれば……きっとこんなことにはならなかったかもしれません。
ですがもう、過ぎたことを今さら悔いても変わることはありません。
せめてこの先、未来が続くのであれば私は後悔するようなことはしたくないと……死を目前にした今はそう思います。
レイナルド。
私は恐らく生き残ることはできないでしょう。
この騒動に終止符を打つための悪役として選ばれてしまった私を、ダンゼス家が生き長らえさせるとは到底思えないのです。
レイナルド。
きっと辛い思いをさせてしまう。どうか許して。
貴方を置いて先に天へと向かう姉を許して。貴方を置いていくことだけが心残りでありながらも。
私は解放されることを望んでいます。
もう、疲れたのです。
この城の者は誰一人だって私を愛してくれませんでした。
貴方と出会う前を思い出して、とても辛いです。
貴方との日々が、どれほど私にとって幸せに満ちていたか分かるかしら。
貴方と出会ってから今までずっと……私は幸せでした。
十分すぎるほどに幸せでした。
お礼を言わせて、レイナルド。
本当にありがとう。
こんな私を、愛していると言ってくれてありがとう……
もし奇跡がおきて、もう一度会える時がくるのなら今度はきっと間違えないわ。
貴方を愛し、愛される。
そんな幸せな日を築きましょう。
親愛なるレイナルドへ愛を込めて。
ローズマリー・ユベール
完結です。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
少し時間を置いたら番外編としてその後のお話を書ければと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




