From a Planet 300 million light-years away
10月31日午後5時00分、陣堂優作は警視庁刑事局長室の扉をノックした。
警視庁に入庁してから20年が経つが、刑事局長に呼び出されるのは初めてだった。
「捜査一課の陣堂です!」
陣堂が声を張り上げると、室内から低い声が響いた。
「入れ」
「はっ!失礼いたします!」
陣堂が入室すると、刑事局長の中神が重厚な一枚板で作られた局長席にかけていた。
「突然すまんな。渋谷の件は聞いているな」
渋谷で複数犯によるテロ事件が発生したという一報が捜査一課にも入っていた。
「大量無差別テロ事件ですね」
陣堂の返事に、一瞬、中神の顔が曇った。
「表向きにはな…」
「表向き…?どういうことですか?」
「いいか、これから話すことは極秘事項だ。誰にも口外するな」
銀縁メガネの奥で、中神の目が光った。陣堂は思わず動揺したが、固唾を飲んで頷いた。それを確認した中神は語り出した。
「渋谷の件は、表向きには国際テロ組織の仕業と公表しているが、実際は地球外生命体の仕業だ」
地球外生命体?ふざけているのか?余りに突拍子がない話のため、思わず陣堂は疑った。
「百聞は一見に如かずだ。まずはこの映像を見てみろ」
中神はそう言うと、局長室のテレビをつけた。
「なんですか、これは…!?」
テレビ画面には、赤、白、黒色の二足歩行のザリガニのような生命体が次々とコスプレ姿の通行人を捕食している様子が映されている。
「ルンダン星人だ。こいつらは、地球から3億光年離れた惑星を根城しているが、食料を探して銀河を放浪している種族だ」
「ルンダン星人…?ちょっと待ってくださいよ、局長!一体何を話されてるんですか!?」
百戦錬磨の陣堂も情報を処理しきれなかった。いきなりSF映画のような話をされても、おれは20年間、現実の社会を守るために殺人犯を追い回したり、ヤクザとやり合ったりしてきたんだ。
「お前が後継者に選ばれたんだ。今夜7時にこの人物に接触してくれ」
そう言うと、中神は一枚の写真を陣堂に手渡した。写真には、男にも女にも見える人物が写っていた。
「何者ですか?」
「式波総一郎…。我々警察の協力者だ。私が話せるのはここまでだ。後は、式波から聞いてくれ」
局長室を後にした陣堂には、膨大な疑問だけが残された。三体のルンダン星人は実在するのか?おれは誰の後継者に選ばれたんだ?そしてこの式波という男は一体何者なんだ?
しかし、とにかく指定された場所へ向かうしかない。そこにいる式波が鍵を握っているはずだ。
陣堂はそのまま捜査一課には戻らず、警視庁前でタクシーを拾って目的地へと向かった。