The Begining of Tag
無機質な取調室で向き合う陣堂と式波。
陣堂は改めて式波の顔を眺めて思う。不思議な顔だ。角度によっては女のようにも、男のようにも見える。また、泣いてるようにも笑っているようにも見える。厄介なのは、何を考えているのか全くわからないことだった。そして、式波が静かに口を開いた。
「さて、と。1日目から話すね。あれは、ハロウィンの日だった。僕が新宿で水タバコを吸っていると、急に携帯が鳴ったんだ。タバコを吸いながら、携帯に出ると、奴らが渋谷に出現したって連絡だった。まさかと思ったよ。だって、僕らの予測よりも3年早く現れたんだから。それに、出現ポイントも予測から大きく外れていた。原因はハロウィンのカオスだったんだと思う。あの日の渋谷は特別だった」
式波は淡々と語る。陣堂は式波の様子をつぶさに観察しているが、挙動不審な様子はなく、供述内容も警察が入手している情報と乖離はない。
「それで、電話を受けてからどうしたんだ?」
「電話の途中で、奴らが渋谷から離れたって報告を受けたから、開発途中だった奴ら専用の探知機を作動させたんだ。あんたら警察も知っていると思うけど、奴らは頸部から放射線を排出している。探知機は正確に作動し、移動後の奴らの居場所を突き止めた。北緯27度、東経148度…太平洋上だった。それから、僕らと奴らの鬼ごっこが始まった」